マンション ブランド力と品質の関係

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

「品質は高いが価格は高くない」商品がある一方で、「品質は高いが価格も高い」ものもある、それが経済の実態というものです。

「品質の割には価格が安い」ことで売れ行きを伸ばし、企業として大発展を遂げたのがユニクロブランドを展開するファーストリテイリング社ですが、その反対の「高価格だが、裏切らない品質。英国王室の御用達としても知られる」ブランドバッグとか、「世界中のセレブに愛される」宝飾の最高級ブランド、中古でも高いブランド時計といったものが世界には少なからず存在します。

 高級ブランド品はブランド戦略と言われる企業の商品戦略、広告戦略によって高いブランド価値が作られ保たれています。

決してディスカウントセールはしない。その厳格なポリシーを守るために、直営店でしか販売しないというブランド商品も少なくありません。

分譲マンションにもブランド戦略は存在します。

●マンションの品質と立地条件がもたらすブランド価値

マンションは、建物品質だけで価値判断をすることができない特殊な商品です。高い品質の建物を作っても、立地条件の良し悪しによって評価が変わるからです。場所が良くないと市場が判断するマンションの場合、建物品質を高くしたところで、価格を低く設定できなければ販売は難しいのです。

消費財との大きな差がここにあります。

立地条件の価値を押し上げる要素、例えば地域ぐるみの開発・再開発などが伴わければ、建物だけを高品質にしても価格の高さに市場は理解を示さないのが実態です。

逆に、新設の鉄道路線、新設の駅、その前に大型SCなどとともに建設されるようなとき、そのマンションの建物品質を上級にし、価格もそれなりの高さに定めても市場は評価するというケースがあります。

このような特別な場合を除けば、立地条件の劣るマンションは建物品質も価格抑制のために中級以下にするしかないのです。

一方、別格とされる高級住宅地や駅に直結しているような立地条件では、土地の取得費も高いため、分譲価格が高くなるのは必定です。加えて、高額商品の買い手を満足させるための建物品質が必須となります。良い場所には良い建物というのが定石なのです。結果的に分譲価格はそれなりに高くなります。

高級マンションは、モデルルームを見ると、設備も建具・ドアハンドルも、また床や壁、天井の仕上げ材もハイグレードですが、それだけではありません。

共用玄関やロビー、廊下の床や壁、規模の大きい物件であればラウンジやゲストルームなどの共用施設の仕様も含めて中級以下のマンションとは明確な差別化が図られます。

場所が良いというだけで建物は中級マンションと大差ないという商品もないわけではありませんが、高級マンションと言われる物件は、建物品質はも高く、価格も飛び抜けて高いものです。

そして、そのような高級マンションの多くが、年月を経て資産価値を維持し、やがて「ヴィンテージマンション」と呼ばれるようになるのです。

工場生産品と異なり、マンションは手作りの一品生産品です。しかも、高級住宅地では限定生産品(稀少価値がある)だけに、資金調達が可能な買い手にとっては比べるものもなく、3億円と言われれば3億円を、5億円というなら5億円をそのまま受け入れて購入契約を結ぶことになります。

高級住宅地と言われる街として知られる千代田区の三番町や港区の麻布・青山・三田綱町・白金、渋谷では広尾、・代官山といったアドレスのマンションでは、2億円から5億円もする高額住戸が複数用意されます。

●マンションメーカーのブランド戦略

数億円の部屋も含まれる高級住宅地のマンションを商品化できるマンションメーカー(デベロッパー)は多くありません。ご存知のように財閥系の大手業者と、それに続く大手業者、全部で5社か6社を数える程度です。

高級マンションには、ふさわしいブランドネームを用意し、同じ業者が販売する他のエリアの中級マンションのブランドと区別するのが普通です。買い手の優越感を満足させることが必須と考えるためです。

三井不動産レジデンシャルを例に引くと、最高級ブランドは「パークマンション」ですが、中級マンションは「パークホームズ」で、これが販売商品の大半を占めます。

タワー型を「パークシティ」というブランドにしていますが、「パークコート〇〇タワー」という高級タワーマンション」もあります。

明確なブランド戦略が見て取れます。

●ブランド名より企業名

しかし、マンションメーカーの場合、ブランド名より売主の知名度を優先しているように感じます。複数のブランドを持っている三井不動産レジデンシャルても、広告では「三井に住んでいます」というのがメインコピーです。

パークホームズだけのPRもたまに見たような気がしますが、印象に残るのは「三井に住んでいます」の方です。

三井は、最高級ブランドであろうと中級ブランドだろうと、また、都心・郊外を問わずに確かな品質のマンションを供給していますとアピールしているようです。

三菱地所レジデンスも、「三菱地所を見に行こう」のキャッチコピーが有名です。こちらは、親会社の三菱地所のビジネスまでを包括的にPRしていると感じます。

東急不動産は「ブランズ」を、野村不動産は「プラウド」を、東京建物は「ブリリア」をCMでアピールしていますが、こちらは複数ブランドを持たない企業なので単純です。それでも、広告ではブランドと企業名を同時に謳っています。

(注)野村不動産は、3年くらい前に「オハナ」という新ブランドを郊外の大型マンションを廉価で展開していますが、「プラウド」のブランド価値が低下することを恐れたためでしょうか、物件広告以外では一切登場して来ません。

ユニクロがCMで企業名のファーストリテイリングを同時にアピールすることはありません。そのせいかどうか、ユニクロを展開している企業がファーストリテイリング社であることを知らない人が多いのも事実です。

マンション業界は対称的です。マンションのブランド戦略は、ブランド名より売主名を意識したものなのかもしれません。

郊外の普通の住宅地には高級マンションは建てないものですし、数少ない高級住宅地の高級マンションのブランドを浸透させたところで、その商品開発が簡単でなく滅多に販売できない以上、あまり意味はないのです。

かといって、数が多い中級品のブランドばかりPRしても、そのイメージが定着すれば困るわけで、結局のところ、高額マンションであろうとなかろうと、「わが社のマンションの品質は確か」、または「どこで開発したマンションでも高級品」というイメージ作りをして行かざるを得ないのです。

「プラウド」という野村不動産のマンション名に対するイメージを何人かの人に尋ねたところ、「高級な感じがする」という答えが返って来ました。東急不動産の「ブランズ」も、最近1~2年の集中的なCM投下が効いてか、「何となく高級な感じがする」と言います。

野村も東急も、立地条件を問わず、すべての販売商品に高級なイメージが浸透したらCMは成功と言えるわけです。

そして、買い手がイメージ通りのマンションと感じて満足できれば、それはそれで結構なことです。

●同じブランドでも品質は違う

しかし、現実はどうなのでしょう。「ブランド名」は同じでも、品質(グレード)には差があるのも事実です。先述のように、立地条件によって変えざるを得ないからです。

ところで、マンションメーカー各社は、自社の品質基準・設計基準のようなものを持っています。 

廊下幅やパイプシャフトの寸法から、設備のグレードなどについて、細部に渡って内部基準を設けているのです。

しかし、基準を順守しているか疑わしい物件もあります。

基準が緩いのか、基準に一定の幅があるのか、内部に通じているわけではないので確証はないのですが、間取りや設備などの資料を見ているだけでも、一定ではないように感じるケースによく遭遇します。

建物が完成し内覧会に立会いさせてもらうと、その感は一層強くなります。

ともあれ、同じブランドなのに「先月見た物件はディスポーザー付きなのに、こちらは付いていないのですね」といった声や、「ミストサウナが欲しいのに、今度の物件は付いていない」といった声を聞きます。

ディスポーザーは多額のコストを要するので、設計基準書の中では採否が柔軟に扱われているのでしょう。

これらは目に見える部分の差異ですが、見えにくい点では「二重床と直床が混在したブランド」があります。

同様に、住戸の玄関に「アルコーブがあったり、なかったり」も最近はよく見かけます。

設計基準は事実上、形骸化してしまったのか、そんなことも感じます。とまれ、買い手の立場で考えてみると、ブランドに騙されないことが大事です。

得難い高級住宅地や駅直結マンションなど、差別化が明白はっきりした物件であれば、価格が高くても売れるはずと売主は強気です。そのような物件は、「さすがは〇〇社の〇〇ブランド」と、買い手を喜ばせる標準以上のスペックで設計されているものです。

ところが例外もあることを知っておかなければなりません。 都心の高級住宅地に建てられた大手A社の内覧会で実物を見たとき、大きく下がった天井がやたら目立ち、閉塞感のような違和感を覚えたことがあります。

大梁が下がり天井となっているほか、排気ダクトがキッチンからバルコニー方向へ走っているのですが、その両方の下がりが天井に凸凹状態を作り出し、大きな抵抗感をもたらしていたのです。早い話が、「高級マンションの割には随分天井が低いなあ」と思わせるものだったのです。

こうした例は挙げればキリがありません。モデルルームは欠点が少ないタイプを展示しているので、気付かない買い手も少なくありません。契約完了後に気づいて失望するのです。

購入するタイプがモデルルームでない場合は気を付けなければなりません。しかし、平面図だけ見ていても、頭の中で3D化することは難しいものです。

そこで、ひとつだけコツをお伝えすると「下がり天井=2150とか、同=2050などといった表示と、その範囲を表す点線に注目します。

下がり天井の範囲が分ったら、そこにマーカーか色鉛筆で着色します。これだけでも、天井面にスッキリ感があるかどうか、圧迫感がないかどうかの見当をつけることができます。

それでもピンと来ない場合は、当該住戸の断面図を売主に要求することをお勧めしたいと思います。

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