第764回 「人口減少時代のマンション選び」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

足元のコロナ禍で、マンション選びも変わりつつあるとの報道もありますが、中長期的に見て、今後のマンション選びはどうあるべきなのでしょうか?  

 

目先の事情や都合で買い物をしてしまうことになりがちです。理解はできますが、一生に3度も4度も買い替えることができるわけではないマンションのこと、中長期的な展望を念頭に置きながら選ぶことが重要です。

 

  日本の人口が減少時代に入ったことを知らない人はいないでしょうが、そのトレンドが続くという前提を置くと、マンションの地域選択、物件選択も変わらざるを得ないようです。 

 

明日から人口が半減してしまうわけではないものの、10年ほど後に転売するかもしれないという前提を置くと、買おうとしているマンションの10年先の値段が気になってしまうのです。  

今日は、10年以上先の長期的な展望を念頭に置いてマンション選びするときの肝腎のポイントについて述べることにします。  

●少子化は進み、世帯数は増える

晩婚化、離婚の増加、高齢者の増加、これらは1人、2人だけの世帯数が増えることを意味します。マンション購入者だけに限ると、この世帯比率は30%以上という調査データもあるほどです。  

 

人口が減っても、世帯数は減らないというデータもあります。単独世帯が増えているからで、職場からの距離が遠い親の家から出て、ひとり住まいする子供世帯が増えていることを示すデータなのでしょう。 

 

無論、地方都市から東京圏に移住して来た人が多いためでもあります。  

 

マンションを買いたい独身者も随分増えているようです。いわゆるコンパクトマンションの購入ニーズです。 とはいえ、結婚し、子供ができて賃貸マンション住まいが手狭になるため、広い住まいを求める人の方が多いのは確かです。  

広い賃貸マンションを探すと、その賃料の高さに驚き、同時に買った方が資金的には得だと気づいて購入の方向に転じるようです。そのとき、多くの買い手が家族の増加を想定して、3人家族でも「70㎡・3LDK」を希望します。

 

  一方、子供を作らない夫婦、作っても1人と決めている夫婦も多いようです。そのためか、2LDK・60㎡でも良いとするニーズも多いのです。  

 

日本の人口減少の要因は、批判をおそれず言えば、子づくりを放棄してしまった夫婦関係にあり、その背景には共働きしなければならない社会構造にあるとも言えます。  

 

ともあれ、子どものいない家庭を主体に考えると、購入するマンションの姿も変わります。3LDKでなくても足りるというニーズです。 広いに越したことはないとはいえ、購入価格が高過ぎる東京圏では予算と価格のミスマッチが起きやすく、考えた末に「60㎡・2LDKでもいい」となるカップルも多いのです。

 

  欧米に比べると、かつては「ウサギ小屋」と揶揄されるほど狭い住宅が普通の日本でしたが、今も大きさは大きく変わっていないのです。とりわけ東京圏は。  

 

一戸建てを郊外で求める人などは、大きめの家を選択していますが、東京近郊では大きくても100㎡程度の建売住宅がメーンです。マンションになると、利便性と引き換えに高々70㎡を選択するのが普通です。  

●3LDKから2LDK・1LDK中心の時代に

広いマンションが買えたらいいが、価格が高過ぎて手が届かない。 届いても、夫婦合算の所得を前提にローンを組むほかないという買い手も少なくないようです。

 

このため、熟慮して3LDKを断念し、2LDKにしたという人もあります。

 

  一生独身と決めているわけではないが、当座は1LDKでいいと割り切って40㎡・50㎡のコンパクトマンションを買う人も随分増えた実感があります。

 

繰り返しになりますが、70㎡・3LDKの時代は60㎡・2LDKの時代になりつつあるのかもしれません。  

 

他方、コロナ禍が影響してか、直近では郊外でもいい、バス便でもいいというニーズの変化を生んでいるようで、広めのマンションを遠くの立地で選択しようとしている人たちも少なくないようです。

 

  しかし、家族の少ない人、将来も増える見込みがない(増やさない計画の)人は、都心に近いエリアで、郊外でも駅に近い利便性の高い立地でと考えているはずです。   つまり、広さを我慢して利便性重視の選択に落ち着くのです。

 

4㎡、50㎡といった狭い社宅や賃貸マンション住まいをしてきた人は、一気に80㎡や90㎡を望まないのです。   バス便マンションは安いが、安いマンションを買ってしまうと将来それを売るとき高くは売れないということを知るのでしょう。

 

やはり、利便性の高い物件を選ぶべきだと思い直し、交通便の悪いマンションは選ばないようです。その傾向は、単身者やDINKS世帯ほど強いのです。  

●コロナ禍が市場の変化を生み出したが・・・

報道によれば、郊外マンションがよく売れているとありますが、同時に「物件による」ともあります。

 

足元では、週2日の出勤だからバス便でもいいとか、郊外でも構わないという声も増えていると聞きますが、これが長く続いていくでしょうか?  

 

今はまだ長期の見通しを語るのは難しいと語る識者が多くはありません。筆者は郊外居住のトレンドに懐疑的です。二極化するとも思えませんし、つまるところ、減り続けていた郊外マンション需要が少し戻る程度と見るべきではないかと考えます。

 

  ITの活用で出社しなくても仕事はできるとする意見も強くなっていますが、対面の利点も捨てることはできないでしょうし、業種・職種でも異なるでしょう。また、共働き家庭が多い現在、夫婦のうちどちらか一方が毎日の通勤を必要とするケースも少なくないはずです。

 

  こんなことをルル考えてみると、マンション選びは都心に近いこと、郊外でも駅に近いことなど従来の選択条件が大きく変わることはないという結論に落ち着くのです。  

●需給バランスという視点

ところで、首都圏のマンション市場の規模はどのくらいあるのでしょうか?

これを推定する指標は、どのくらいの売買が成立しているかに求めることができます。  

 

2011年からの10年間を見ると、新築マンションの発売戸数は年平均40,000戸でした。直近の5年に限ると、33,454戸なのです。

 

この数字は何を意味するのでしょうか?発売戸数に過ぎないので、売れた戸数はもっと少ないのですが、それでも年間の需要量とは大差ないと考えられます。  

 

潜在需要はもっとあると言われます。にもかかわらず、売出し(供給)戸数が少ないのは、売れそうな数に絞り込んで売り出すためです。

 

 売れない理由や背景は別として、筆者の推計では年間5万、少なくとも4万の需要は首都圏にあるのです。

  従って、この10年間を見る限り、年平均1万戸、直近では15000戸余の供給不足ということになります。

 

  買わなかった人は何処へ行ったのでしょうか。中古マンションに流れたのでしょうか?それもひとつですが、新築の不足分を中古が埋めたという根拠は見当たりません。中古マンションの成約戸数は伸びているものの、10年で新築の減少分を埋める10万戸、年平均1万戸も中古の成約数が増えているという証拠データはないのです。

 

  ちなみに、首都圏の中古マンションの成約件数は、この10年間に限ると、前半5年が3万3千戸、直近5年は3万7000戸なので、年平均4000戸の伸びですが、新築の年平均の減少分1万戸の40%を補っている計算になります。  

 

年平均の需要が5万か4万と推定した新築の需要は、顕在化したものだけに限れば3万戸程度に減っていることになります。この差、1万か2万は潜在化し、買い時を待っているということになるのかもしれません。   潜在化してたままの理由・原因は価格が高過ぎて手が出ないためと、景気の先行きが不透明で踏み出せない人が増えているためなと考えられます。  

●供給が減った要因

価格以外に、新築マンションの供給不足はどこに原因があるのでしょうか?

最大の要因は用地不足です。適地不足と言い換えた方がよいのですが、駅に近く、マンション建設にふさわしい広さの売地が減ってしまったことに最大の原因があります。

 

  売地は無数にあると聞きますが、駅から徒歩圏にあって、一定規模以上の広さがあるものという条件を満足させる建設用地に限ると非常に少ないのです。

 

  駅から遠すぎるか、環境が悪い、坂が急すぎるといった土地、狭い土地は絶え間なく情報が舞い込むものの、価値あるマンションが建設可能な土地となると、それこそ千件の情報のうち3件あるかなしというのが実態なのです。

 

  この話は、随分昔から耳にして来たものですが、最近は一段と傾向が強まったのかもしれません。

 

少し戻って、バブル経済崩壊後の1990年代以降、マンション建設にふさわしい「大型で交通便のよい土地」が所有者(大半が法人)から大量に放出されたときがありました。しかも、買い手マンション業者にとっては垂涎の土地ばかりでした。  

 

社宅や寮、交遊会館、グラウンドといった法人施設が放出されたのです。マンション業者はこぞってこれらを買い占め、マンション開発に勤しみました。

 

バブル期、あまりの高値に開発を断念せざるを得なかった各社は、土地を次々に仕入れ、チャンス到来とばかりにマンション開発を進めたのです。   そして、2000年頃から2007年頃にかけて、未曽有の大量供給時代が訪れました。この間の新規発売戸数は年平均85,000戸にもなったのです。

 

それでも売れ行きは好調で、即日完売となる例も多数ありました。   供給ができなかった時代に我慢を続けていた買い手が一斉に買い出動したからです。そして、価格は再び上昇、さすがに購買力とのギャップが生まれ、売れ行きは再び低迷し始めました。  

 

その後の発売戸数は2006年以降、7万戸台、6万戸台、4万戸台と減少、最近5年は既述の通り3万3千戸と、再び供給戸数・低迷の時代へと戻ってしまったのです。  

●再再度の用地難時代?

用地がないから供給ができないのか、用地はあるが高値になったために仕入れできないのか、この疑問に答えるのは難しいのですが、どちらも要因なのでしょう。

 

  2大原価の一方の建築費の高騰も新築マンションの供給不足の要因です。つまり、高値の土地ばかり、建築費も高いため、分譲価格は高くなってしまうのです。

 

  建築費高騰の歴史は2011年に発生した東日本大震災の復旧・復興工事と軌を一にします。大量の建設要員が東北地方に集められたことによって建築費が高騰したのです。

 

その工事が終わりかけに、熊本地震をはじめ、西日本豪雨など、各地で自然災害が、直近では熱海市のがけ崩れなどの豪雨災害が続きました。  

 

建築費が下がるためには、各地の自然災害の復興工事がなくなること、東京都心の再開発工事が止まることなど、業界の繁忙が落ち着き、建築資材が値下がりすることが条件になります。

  ときどき、建築資材(鋼材など)がいくらか値下がりしているという報道に触れることもありますが、建築費の50%は労務費(人件費)と言われるだけに、建築費が大きく下がる材料とはなりにくいのです。

足元では値上がりしている資材もあるようです。   労務費の上昇が一服したという声もありますが、人手不足が解消されていないために、建築費が値下がりに転じることにはならないようです。  

 

何より、マンション建設にふさわしい条件を具備した用地が少ないことが大きいと言えそうです。 筆者の短期観測では、交通便の悪い土地でも、今なら売れると踏んだ業者が取得し、建設する動きを活発化させるかもしれません。  

●価格高騰期にマンションの機能はどう変わる?

最近の新築マンションを眺めて気付く、残念な設計企画について今日の最後に振れておきたいと思います。

 

  主に郊外マンション、東京都内でも相場の低いエリアでのことですが、間取りが単純化し、設備レベル低いマンションが目立ちます。  

 

具体的には、アルコーブのない平板な玄関、二重床でない構造、外観デザインの単純化、設備の一部カットなどです。  

設備の詳細はこちらを参考になさって下さい➡資料NO.82/新築マンションの定番設備一覧(写真集) http://www.syuppanservice.com/mikoukai-siryou.html  

 

高付加価値のマンションを知ってしまった人は、2歩も3歩も後退したマンションを買うとは思えませんが、高付加価値のマンションを知らない買い手もいるためでしょうか、1歩か2歩程度の後退なら許してもらえると考えるマンション業者もいるようで、残念な設備・仕様の新築マンションが増えているのです。

 

  設備仕様のグレードを下げても、コストカット効果は低いはずですが、チリも積もればなんとやらで、工事請負業者とのネゴシエーションの最後の段階でカットしてしまうようです。  

 

コストダウンの効果が高いのは構造です。シンプルな形にするのが効果的で、玄関のアルコーブを取りやめたり、出窓を止めてしまったりすることによる効果は大きいのです。それで、残念なマンションも増えているのは事実です。

 

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