築2年で手放す人が続出のマンション

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

購入を予定している中古マンションの評価を依頼され調べて行くと、同エリアの取引事例で同一マンションらしいものが一定期間(1年)に多数並んでいることに気づきます

その築年数は、何と僅か2年か3年なのです。

これは、転売益を狙って購入した人が時機よしと見て売りに出したということなのでしょう。
短期間で多額のキャピタルゲインを得たらしいことも推測できます。

このようなケースにときどき遭遇します。2年前まではなかった現象です。購入した人も、2~3年で利益を上げられると予想していたかどうかは別として、価値ある物件と見て「買っておこう」と群がったのでしょう。

最近のご相談者から、「友人のマンションですが、10年前の新築時と現在の売却価格が同じらしいです。また、築2年程の友人マンションは新築売り出し時よりも価格がかなり上がっています。なぜこのようなことが起こるのでしょうか」と質問されました。

お分かりのことと思いますが、マンション価格は新築も中古もこの2~3年に急上昇したためです。

●我が家が値上がりしても喜ぶのは早い

このブログでも何回か紹介して来ましたが、首都圏の新築マンションは過去3年で20%(坪単価)も値上がりしました。

わが家の値段が上がったと聞いて、嬉しくない人は少ないと思います。しかし、キャピタルゲインを狙って購入したわけではなく、あくまで自己使用のために購入し、実際今日も住んでいるのだとしたら、値上がりしても何の得もありません。

ただ、値上がりしたまま、あるいは一段と値上がりして数年ないし10年くらいを経過したら話は別ですね。つまり、数年先に買い替えのために自宅を売却しようとしたとき、高値で売れそうだと聞けば、瞬間的には喜ばしいことと思えるからです。

瞬間的と断った理由は後述するとして、買って2年もしないうちに10%も20%も値上がりしたという情報を得た人は、数年先の自宅の価値はさらに上がると錯覚してしまう、もしくは期待してしまうかもしれません。

しかし、中には「一時的なものだ」と冷静に受け止める人もあるかもしれません。そうです。これは一時的な現象なのです。

価格が同じ勢いで一直線に上がり続けることはなく、反対の値下がりもあり得るのです。問題は、売却を計画したときにいくらになっているかです。一時的に値上がりを喜べても、先では値下がり情報に触れて落胆するかもしれない。そう思うべきなのです。

●「中古は安い」が基本

千年も経過した骨董品や美術品の中で価値ありとされるのは、それが〇〇作の銘が残る芸術作品であるとか、稀少価値が高いことなどによります。 マンションでも30年以上を経過してなお、価値を維持し続けるヴィンテージと呼ばれるものがあります。

しかし、それは例外的なものであり、多くのマンションは建物の経年劣化によって、その価値を下げてしまうものです。 

事実、中古マンションは古くなればなるほど安い価格で取引されています。

見た目がよろしくないとか、室内のリフォーム代に何百万円もかかりそうだとか、リフォームの範囲が壁紙の張り替え等で済ませられる物件であっても、設備はひと昔前の型なので最新スペックと比べると見劣りします。

安くて当然です。ただし、マンションの価値は立地によって大きく異なるものです。都心のA駅から徒歩5分の築20年のマンションが、郊外のB駅から徒歩10分の築5年のマンションより高いといったケースはいくらでもあります。

ともあれ、同じエリア、同じような立地条件の中で比較した場合は、築20年マンションが築5年マンションより安いものです。

●中古になっても値下がりしないのは何故?

中古マンションは、新築価格との対比によって取引価格が決まる一面があります。その説明をしましょう。

同じような立地に同じようなマンションが建っています。一方は新築、他方は中古です。

新築が5000万円であるとき、中古は4000万円というふうに決まって来ます。

新築が2階で眺望が良くない、一方の中古は年数が浅くて14階で眺望がすばらしいといった差異があるとしたら、新築の5000万円に対し、当該中古は5500万円などと逆転する場合もあります。

上の例で、新築の14階は6000万円かもしれないので、眺望価値が並べば、やはり新築より中古は安いことになります。

同じ駅の徒歩10分圏内に、60㎡2LDKの新築が5000万円(坪単価@275万円)で分譲されているとします。

その新築マンションに70㎡の3LDKは存在しません。近所に築10年の中古の3LDK70㎡が売り出されました。何と価格は6000万円(坪単価282万円)です。

これも逆転の例です。物件の立地は、東京都下のM市で「「住みたい街ランキング」の上位によく入る駅が最寄りです。新築の供給は1年に1件あるかなしかの少なさで、たまに売り出される新築の間取りは広くても2LDKで殆どコンパクトタイプばかりです。M市に住みたい人は、中古を探すしかありません。

このような事情から、3LDKの中古は稀少価値が高く、新築並みの単価で取引されます。

話を戻しましょう。

新築より高い中古といえども、購入額がどのくらいだったかは不明です。元々が高値だったかもしれません。としたら、高値としても購入価格に上積みされた金額であったとは断定できないのです。

ここまでに述べた個別要因はさておき、エリア全体で購入時の価格から値上がりする中古が続出するというときがあります。値上がりする理由は、結論を言ってしまうと、新築相場が急騰したからです。

この3年(2013年~2016年上半期)、東京は平均で約20%(坪単価)も上昇しました。

2012年に5000万円であった新築相場は、今年は6000万円出さないと買えないということになってしまいました。

2012年に5000万円で新築マンションを契約した人が2013年に入居しました。それから3年の今年、同じマンションの同じ間取り・面積の家が売りに出されていることを知ったとします。

価格は、何と5500万円です。「階は違うが、こんなに高く売れるんだ」と驚くともに、「我が家も今売り出せば儲かっちゃいそう」などと、取らぬ狸の皮算用をして思わずほくそ笑んでしまいます。

実は、これでも近くの新築マンションより安いのです。築3年の中古だから500万円安いというわけです。新築が上がれば中古も上がる。この構図はデータで立証されています。

最近のような短期間に大きな価格上昇が起こると、その恩恵を受ける人が増えます。2010年~2012年頃に購入した人は、みなさんそうかもしれません。

●手放すと住む家がなくなってしまう?

短期間の値上がりを喜ぶとともに、利益確定のために売却したとしたら、投資家はともかく、住んでいた人は売却後どこへ行くのでしょう?

わが家がいくら値上がりしても何も得はないと述べましたが、売却すれば話は別です。

転勤命令が出た。さあ家の処分はどうする?貸すか売るかで悩むことになります。折角気にって買った家だし、転勤から戻ったら、またここに住みたい。その間は賃貸すればいいが、でも何年で戻れるか分からないしなあ。反対に、売ってしまうと、戻ったときに同じ予算で買えるかどうか分からないし、住宅ローンも年数が違って来る、などと。

それでも、あっさりと売却を決める人もあります。5000万円のマンションを頭金1000万円で買ったAさんは、3年後に5800万円で手放しました。ローン残債は大きく変わらない3900万円でした。さらに仲介料・約180万円を支払ったので、手にした金額は1720万円でした。

頭金1000万円が1720万円に化けた格好です。その他の費用・税金など厳密な計算をすると、もう少し減りますが、ざっくりと言えば3年で1.5倍くらいに増えるという利殖に成功したことになるのです。Aさんの場合、転勤先では会社が社宅を用意してくれるので、住む家に困ることはないのかもしれません。

そう言えば、筆者へのご相談者の中にこんな方もありました。東京都心のタワーマンションを買い、1年もしないうちに高値売却。今は千葉県の某駅の中層マンションに住んでいます。何でも、通勤には問題なのだとか。

購入予算は3000万円も少なく済んだと喜んでいます。物件価格の差と、売却によって得た利益のダブル効果の買い替え劇を演じたようです。1年ほど前(2015年秋)の話です。

売却を思い立ったきっかけは、投げ込まれたチラシだったそうです。チラシには「当マンションを買いたい人が外国人を含めて多数あり。できるだけ上階を望みます」と書き込んであったのだとか。

もう一例。日本橋のマンション2LDKを買った独身のOLさんのケース。今売るべきか、もう少し待って高値で売るべきか。それとも売らずに持ち続けた方がいいかというご相談でした。

筆者の回答レポートを読んで悩んだ挙句、OLさんは入居後1年少しで売却を決断しました。1年半くらい前(2015年初頭)のことです。元の狭い賃貸ワンルーム生活に戻るというのです。荷物の多くが実家に預かってもらうのだとか。

利益確定によって、OLさんは預貯金を大幅に増やしたことでしょう。それにしても随分思い切った決断をしたものです。単身だから身軽?そのような次元の話ではないと思いますが、本当にすごいと感心したものです。

次の購入タイミングを見計らいながら、今度はどこにどのような物件を購入なさるのか、何年か先のお便りが楽しみです。

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