売れ行きの悪さをひた隠しにする売主の意図

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

売れ行きが良いと、その品は良いものと思いこむ人間心理があると言います。

行列ができるラーメン店には「きっとおいしい」と思いこみ、次々に並ぶという状態を作り出すこともよく知られています。

マンションも同じで、モデルルームが「押すな・押すな」の盛況にあれば、売り手が説得を特に意識しなくても顧客は短時間に買うという結論に達してしまいます。

平日の比較的来訪者が少ないときに見学に行った人も、壁に掲示された大きな価格表に「申込」や「登録」のシールが張られ、価格が見えている部屋が僅かしかない状況を見れば、「あっ、もうこんなに売れている」と慌てることでしょう。

抽選方式の物件なら、価格表の各住戸に3とか5とかの数字のシールが貼られているのを見せられると、「すごい人気だ」と感じざるを得ないはずです。

新築マンションの売り手は、この顧客心理を利用しようと図ります。

一方、売れ行きのぱっとしない物件には、「売れないのは何か良くない所があるに違いない。慎重に考えなければ」という買い手心理が働きます。そこで、売れ行きが良さそうに錯覚させる戦術を講じる売り手が登場します。

中には戦術というより、ウソの演出で顧客の決意を誘う業者もあるのです。実際にあった話ですが、「50戸余のマンションで、あと10戸と聞いていたが、入居してみると10戸しか売れていないではないか。騙された」と一部の買い手が騒いだ事件があったのです。

●第6期販売と第3期3次販売は似ているが・・・

ウソはいけませんから、売り手は別の手を使います。分割販売(期分け分譲とも言います)という戦術です。

100戸のマンションをいきなり全部売り出さず、「第1期50戸・新発売」、日を置いて「第2期20戸・新発売」などと小出しにして行く方法です。

*プラウド新宿中落合 第3期
*シティテラス大森西 第4期 
*オーベル横浜白幡 第5期 
*プラウド日吉 第4期2次 
*プラウド国分寺 第2期5次 
*プラウドシティ志木本町 第6期3次 
*オハナ北習志野 第4期4次

これは住宅情報誌SUUMOの2016年9月20日号から分割回数の多い物件のみピックアップした事例ですが、第3期とか4期、5期というのは、単純に3回目・4回目・5回目の売り出しであることが分かりますが、第4期2次とか第6期3次というのは一体何回目の売り出しなのか分かりません。

いずれにせよ、売り出し回数が多いのは全体戸数が多いからという事情もありますが、売れ行きが良くないので、1回当たりの売り出し戸数を少なくせざるを得ず、結果的に売り出し回数が増えてしまったのです。

1回あたりの売り出し戸数を何故少なくするのでしょうか? 50戸売り出して10戸しか売れなかったら、売れないマンションという烙印を押されてしまうからです。反対に、10戸だけ売り出して10戸売れれば「完売」とアピールできるとともに「好調」のイメージを植え付けることができるので、後者を選択するのです。

そんな小手先の戦術も、しばらくすると「本当は売れていないのだ」と買い手の知るところとなるのですが、販売初期は有効なので採用を続けているのです。

蛇足ですが、回数が多いほど売れ行きの悪さを自ら白状してしまうことになるので、第6期よりは第3期3次などとする、つまり数字が大きくならないように考えたのが、●期●次方式なのでしょう。

●売れ残りは買い手の値引き圧力にさらされる

売れ行きを隠す理由はもう一つあります。それは、買い手が値引きを要求して来る確率が高まるからです。

筆者へのご相談メールにも、買い手の気持ちが出ている例が多数あります。

未だに3割超程度の在庫を抱えており、特に最近の成約ペースはスローダウンしているらしく、これだけ見ると値引きのチャンスもありそうだと思うのですが、営業さんは「値引きは絶対ない」と断言しています。この「値引きは絶対ない」というのは本当でしょうか?
 
これなどは代表的な質問例です。

「売り出してから随分時間が経つみたいだ。沢山の売れ残りを抱えているようだから、値引き要求に応じるはずだ」――こんなふうに買い手が考え始めると厄介だなと現場の営業マンは戦々恐々とします。

彼らは、その要求をかわす術を知ってはいますが、要求が来た段階で不快に思うらしく、そんな時期を迎えずに完売してしまいたいというのが本心です。

しかし、会社の方針は完成から何か月経とうが、値引きは一切受け付けるなという。値引きなしで短期完売へ。その目標(例えば竣工時完売)に向かって、現場の販売員たちは様々な戦略・戦術、あるいはセールスの技巧を凝らして日夜奮闘しているのです。

●売れ残りが隠せない状態になったときの言い訳

建物が竣工し、引き渡しが進むと夜は灯りが付かない部屋の数などから極端なウソはバレバレになってしまいます。

竣工直前の段階で、多数の売れ残りを抱え込むことになったマンション。なぜ売れないのか、疑問に感じた買い手は「良いマンションだと思うのですが、売れ行きが良くないのは何故ですか」と営業マンに尋ねました。

営業マンの回答は、「売り出してからの時間が短かったので」とか、「低層マンションなので、工期が短く、売り出してからあっという間に竣工を迎えたもので、本格的な販売はこれからです」、「台風が週末ごとに来たので客足が伸びなかったのが原因です」、「何しろ戸数が500戸もあるので、販売期間はどうしても長期に渡るものなんですよ」等。

これらの言い訳は、半分が本当で半分はウソです。「価格が高くて、客は来るが買ってくれない」が真相であるもの、「競合物件との差別化が不十分であったために客を奪われた」というもの、「客は来るが、現地を見て落胆し帰ってしまう物件」等。

●増える売れ残り・隠れ在庫に注目

最近数年間の価格上昇は、買い手の高値警戒感を生み、大型物件に限らず在庫を増やし続けているようです。

在庫とは売り出したが売れなかった戸数のことですが、未発売の隠れ在庫も相当数抱えるようになったようです。

分割販売を数回繰り出して、100戸のうち累計70戸を発売したが、そのうち契約に至ったのは60戸。従って、在庫は10戸となります。未発売が30戸あるので、真実の在庫は40戸なのです。

未発売在庫は隠れ在庫とも言われますが、その中には「目玉」となる住戸もあるものです。

買い手心理として、売れ残りは良くない物という先入観が働くので、売り手は買い手にそう思わせないための価値ある在庫(角部屋など)を僅かながら残しているものだからです。

何処が残っているのか、隠れ在庫も併せてチェックすることをお勧めします。売れ残りマンションの中から意外な掘り出し物をゲットできるかもしれません。ついでに、値引き要求をお忘れなく。

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