81年マンションの微妙な関係

このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
~~~~最近は更新回数を増やしていいます~~~

読者の皆さんはよくご存知のことと思いますが、1981年を境にマンションは「旧、耐震基準」と「新、耐震基準」とに分かれます。

言うまでもないことですが、前年に建築基準法が改正されて「耐震基準」が強化され、1981年6月から施行されたのです。1978年(昭和53年)に発生した宮城県沖地震が甚大な被害をもたらしたことを受けて改正されたのです。

1995年に起こった「阪神淡路大震災」では、旧・耐震基準で建てられた古いマンション(当時で築後30年前後)が多数倒壊しました。関西以外の国民の多くが、テレビで怖い映像を何度も見た記憶があるのではないかと思います。

2016年に熊本で発生した「熊本地震」でも、古いマンションの倒壊寸前の姿をテレビ報道でご覧になったことと思います。

●1981年以前のマンションは全て危険なのか?

旧・耐震基準のマンションは全て危険なのでしょうか?必ずしも危険とは言えません。作り手が、安全のために耐震性を高めに設計した可能性があるからです。

耐震性を高めるには、鉄筋の量を増やしたり鉄骨を入れたりするのが一般的です。耐震性を高めるにはコストも高くなります。民間の分譲マンションから経済性という物差しを排除することはできないので、法基準のギリギリのところで建てられたと考えるのが自然です。

しかし、マンションデベロッパー(建築主)は設計を社外の設計事務所に依頼しますが、そのときに「耐震性は余裕を持たせるな」などと指示を出すことはなかったと思います。少なくとも筆者が在籍したデベロッパーでは、その種の発言を耳にしたことはありません。

筆者が企画開発の責任者であったときも、また販売部門のリーダーであったときも、「高くなると売れないから、コストダウンを徹底してほしい」などと関係部門に要請したことも記憶にありません。

結局、丈夫なマンションができたかどうかは、設計事務所の担当建築士の良心に委ねられていたのかもしれません。

時代は移って2005年、「耐震偽装事件」が発覚しました。あるべき鉄筋の数が少ない危険なマンションやビルが全国で多数発見され、その事件の首謀者が逮捕されました。事件の中心となったマンションデベロッパーが発注した設計事務所も特定され、事件の背景があぶり出されました。

建築士Aさんは、なぜ事件を起こしたかを問われると、「仕事が継続的に欲しかった、発注者のデベロッパーが喜ぶ顔が見たかった」と答えています。その建築士には「良心のかけらもなかった」ということになりますが、他方では当該デベロッパーだけでなく、業界がいかにコストダウンに腐心していたかの一端を見せた事件でもあったのです。

話を元に戻します。耐震性が法基準を守って建てられたものではあっても、構造計算を行う設計事務所の考え方で余裕のある建物になったり、基準ギリギリの建物であったりするのです。
その結果、同じ年数が経過した建物であっても、一方は大破し、一方は軽い被害に留まったりするのでしょう。

旧・耐震基準の時代に建てられたマンションは、東京都だけで約1万1千棟、戸数で約43万戸もあるそうです。(東京カンテイ社2011年10月調査)

古いマンションの中で、新基準を超えるレベルのマンションは果たしてどのくらいあるのでしょうか?これは誰にも分かりません。

●行政は耐震診断を勧めているが・・・

政府は、平成25年に耐震診断を行いやすくする法律の改正を行いました。区分所有建築物については、耐震改修の必要性の認定を受けた建築物について、大規模な耐震改修を行おうとする場合の決議要件を緩和したのです(区分所有法における決議要件が3/4以上から1/2超に)。

病院や学校など、不特定かつ多数の方や避難弱者が利用する大規模な建築物等の所有者には、耐震診断と補強工事を義務付けることも決まっていますが、マンションの場合はそこまでに至っていないのが現状です。

管理組合の決議要件緩和は一歩前進に違いないのですが、診断を受ける義務は課していないのです。耐震診断を受けていない旧・耐震基準のマンションは、国土交通省の平成25年マンション総合調査(対管理組合アンケート)によれば、、依然として58%もあると公表しています。

なぜ、こんなに多いのでしょうか?答えは簡単です。診断の結果、「耐震補強工事を急ぐ」とでも通知されるのが怖いからです。通知結果を無視できない法改正も他方で行われています。すなわち、2006年に宅地建物取引業法の一部改正が行われ、耐震診断を行ったかどうかを「有無」の形で重要事項説明書に記載しなければならなくなったのですが、これが影響しているとも分析できます。
「無し」と記載されたら我が家が売りにくくなるのではないか、資産価値が下がるのではないかといった疑心暗鬼が壁となって、診断を依頼する手前で停止してしまうのです。

ついでに補足すると、「有り」の記載の場合は、「添付の耐震診断結果報告書を参照ください」と付記されることになっています。

●81年マンションの微妙な関係とは

1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認を受けた建物であるか否かの判断はどのように行われるのでしょうか?

国土交通省の指針によれば、
a.確認済書、検査済証に記載する確認済証交付年月日の日付
b.建物表題登記による判断(aの書類がない場合)

とあります。

これを逆に見ると、1981年竣工のマンションは旧・耐震基準である可能性が高いことになります。

中古マンションの紹介サイトや宣伝チラシなどを見ると、建物竣工日は「築年月:2014年1月 築(平成26年1月)」などと、書いてあっても、建築確認年月日は記載されることは殆んどありません(新築は例外なく記載されていますが)。

この記述は、閲覧者が「古い」とか、「まだ新しい」といった程度の受け止め方に留まります。
比較的古いマンションを狙っている買い手は、注意深く、旧・耐震基準のマンションかどうかをチェックすることでしょう。

それでも、分岐点の1981年(昭和56年)の前か後かを見る程度のはずです。

マンションは、着工してから「階数+3か月程度(タワーマンションを除く)」の施工期間が必要です。10階建てなら13か月前後、5階建てなら8か月程度を要します。

従って1982年3月竣工の10階建てマンションなら、間違いなく旧・耐震基準の建築許可に該当することになります。

14階建てならどうでしょうか? 82年5月竣工でも、着工は17か月前の81年1月以前のはずなので、旧耐震マンションと推定できます。

82年3月竣工の5階建てマンションならどうでしょうか?前年の8月頃に着工したことになります。これは、新耐震基準による建築確認であることは間違いないでしょう。

1981年竣工なら、ほぼ旧耐震のマンションと見る人が多いことと思いますが、1982年竣工と聞いて単純に新耐震だと勘違いしてしまう人も多いはずです。

筆者にご相談いただく物件の割合は新築が多いのですが、この1年くらいを振り返ると中古物件のご依頼もずいぶん増えました。その中には、築40年を超えるものも少なくない現状で、1982年竣工(築34年)という微妙な時期の物件も目立つのです。

もうお分かりと思いますが、1982年竣工でも旧耐震マンションはあるということです。

旧耐震か新耐震かの確認は、どのように行えばいいでしょうか?仲介業者の担当者に聞くだけでも虚偽がない限り問題はありませんが、心配な人は、先に述べたように「検査済み証」または「登記簿」を見せてもらうことですね。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

★三井健太のマンション相談室は、マンション購入のお悩み・疑問にお答えするサイトです。

★「無料の未公開情報(※全74タイトル:最近の人気タイトル「NO.18新築マンションの値切り方」)や「マンションWEB講座(※最新版NO.94)」など、お役立ち情報も多数掲載されています。

★★★三井健太の「名作間取り選」~毎日更新~はこちら
https://mituimadori.blogspot.com

★★★「三井健太の住みたいマンション」~毎日更新~はこちら
https://sumitaimansion.blogspot.com

完成内覧会の立会サービスを「格安」で。ただいま予約受付中!!
詳細はホームページのトップにある「メニュー」内の「内覧会立会いサービス」をクリックするとご覧になれます。こちら・・・http://www.syuppanservice.com