第578回 新築マンション。価格の下落は「プランの退歩」とともに

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数年前から、東京五輪後にマンション価格は下がるとたくさんの識者やブロガー諸氏が発言していました。根拠は、五輪効果が消えて景気は減速するとか悪化するというもののようです。

しかし、コトはそう短絡的ではありません。 現状でもマンション価格は上がり過ぎて購買力との間にギャップができてしまいました。 言い換えると手の届く買い手が減って、新築マンションの販売は一昨年後半から不調が続いているのです。

売れないので、発売戸数も減らすほかなく、年間の供給戸数(発売)戸数も停滞しています。

しかし、販売価格は相変わらず強含みが続き、2017年も1~8月のデータを追ってみると前年比プラス(値上がり)の傾向が続いています。
(8/20 第571回 の記事「相変わらず高いマンション価格」1~7月の動向で詳しく解説しました)

マンション業界は、この危機をどのように乗り切るのでしょうか?方法はひとつしかありません。それは価格を下げることです。

しかし、価格の引き下げは利益の減少につながるわけですから、それを食い止める策も同時に打ち出すに違いありません。策とは、建築費の下げ交渉を強化することですし、プランの見直しを図ることです。

プランの見直しとは、間取りの単純化や設備のレベルダウン、仕上げ材のグレードダウンなどですが、これらは既に限界に達していると筆者は思っています。しかし、背に腹は代えられないと限界を超えて断行するのでしょうか? あり得ない話でもないなあとも思います。

ただし、目の肥えた買い手も少なくない今日、断行するとしたら「初めての購入者(一次取得者)」向けの物件、なかんずく低額物件が対象になるのだろうと予想します。

建物が完成すると「購入者を呼んで内覧会」が挙行されますが、ときどき同行業務で筆者もお邪魔します。

そのとき。品質低下に驚かされることが増えています。買い手の多くは、間もなく始まる新居での生活に心ウキウキ状態なので気付かないのか、そもそも「こんなものだ」と思っているか、本当のところは分からないのですが、「ここまでやる?」と筆者はしばしば売主の姿勢にがっかりします。

ここで具体的には述べませんが、ご興味のある方は今年1月に書いた記事「ここまでやる?賃貸マンション仕様の新築マンション」
http://mituikenta.blog.so-net.ne.jp/archive/20170120 をご高覧いただくとして、デベロッパーの多くは、乾いた雑巾を絞るがごとく、コストダウンに腐心しています。

品質を下げずにコストダウンしているなら拍手を贈りたいですが、そうではなく明らかな品質の低下や退歩によるものなので、残念な想いに襲われてしまうのです。

ある業界人は言いました。「これでも十分に喜んでくれるお客さんがいる。高級品を提供するだけが我々の責務ではない」と。また、「ユニクロのような規格品を大量に供給して市場の信頼を得ている製品もある」とも。

しかし、筆者には言い訳にしか聞こえません。ともあれ、今後は億ションや億に近い高額・高級マンションを除いて、品質の低下が一段と広まるのかもしれません。

ただ、これ以上のコストダウンを図っても焼け石に水のレベルだろうとも思っています。過去4年間は年平均で6%強の値上がりが続いてきたのです。それが需要の後退・減少となっているのですから、少なくとも2年前の水準まで価格を下げないと購買力とのギャップは埋まらない気がします。この間にマイナス金利の導入で購買力を下支えしてくれた側面もあるので、ざっと8%くらいは下がらないと市況が良くなるとは思えないのです。

市場全体で平均8%も価格を下げるのは至難の業です。建築費を10%下げても販売価格は5%程度しか下げることはできないからです。そもそも建築費の10%下げは現状では不可能に近く、最後はデベロッパー(売主)の利益を削るしかありませんが、それでも5%の引き下げが限度ではないかと考えています。

5000万円のマンションが4750万円になるというレベルなので、大きな市況好転の効果にはつながらないはずですが、個別に見て行けば、好調販売の成果を残す物件も現れるかもしれません。

新聞によれば、規格型マンションで格安請負に強みを持つ長谷工コーポレーションにさえ値下げ圧力がかかり出したのだとか。

「長谷工さん。あなたのところは随分利益も出ているようだが、こちらは大幅に利益を削っている現状にある。共存共栄のために今度は御社にも身を削っていただきたい」と言ったか言わないか、知る由もありませんが、マンション施工が70%を占める長谷工コーポレーションだけに、マンションデベロッパーの大半と取引していることは確かで、その中の大口顧客から強く要求されれば、いずれは呑まざるを得なくなるはずです。

当事者間のせめぎあいは激しくなることでしょう。

現在、長谷工コーポレーションとの取引がないマンションデベロッパーを探す方が早いと感じるほど、大半のデベロッパーが同社に工事を発注しています。その中で発注量が多いのは、野村不動産、住友不動産、三井不動産、積水ハウス、大成有楽不動産、名鉄不動産などですが、大手では三菱地所レジデンスや東急不動産、大京、東京建物なども取引をしています。

最近数年で大幅に増えたコストカットマンションは、筆者流の表現を許していただければ「田の字型」間取りの味がないマンションばかりで、「時代に逆行している」、「進化でなく退化したマンション」ばかりです。

室内の設備は、オプションを付けたり、古くなってリフォームするときに好みでグレードアップすれば満足度が上がるでしょうし、床も壁紙もこだわって選んだらいいのかもしれません。

しかし、床暖房を後付けするのは大きな予算が必要になりますし、ディスポーザーは後付けが不可能です。アルコーブのない平板な顔を彫の深い表情豊かな顔に変えたくても、それは全くできない相談です。玄関の横にエアコンの室外機が花台の下に納めることなく剥き出しのまま置くのが気に入らないと言っても、隠しようがありません。

間仕切りの変更まで手を入れるリフォームは大掛かりで、お金もかかります。10年やそこらで踏み切るのは勇気がいることです。仮に思い切ってやろうとしても、直床構造だったら間仕切りは不可能と思った方がいいのです。

コストカットのためにエレベーターの数を減らされたら、出勤時に5分も待たされるといった弊害が起こるでしょう。ホテルライクな内廊下と謳っていても、完成して壁を見たら安物の白い壁紙が貼ってあるだけで、センスも高級感もないことに失望させられても、もはやどうしようもないのです。

エントランスホールの床仕上げも天然石貼りが普通になった昨今、昔のタイル貼りという物件も見かけるようになりました。外壁の仕上げがタイル張りでない(タワーは大体そうですが)とか、張った面積が3分の1しかないないのに、「タイル張り(一部吹き付け)と表示しているマンション、共用施設が集会室兼キッズルームだけしかない大規模マンション、植栽が殆どないマンション、飾りも何もない最も安価なエレベーター。

こうした例を挙げればコストカット箇所は限りなく出て来ます。

このような退化マンションの増加がトレンドにならないことを祈りつつ本稿を締めたいと思いますが、こんな時期にマンションを買う必要がある買い手が進むべき道は、「古くても優れたマンション」を探すこと、若しくは「予算を上げて満足できる新築マンションを探す」しかありません。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

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