耐震等級1は3より劣る
- 2011.10.02
- マンション設計
ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
「住宅の品質確保の促進に関する法律(品確法)」の成立(2000年)以来、マンションの品質表示を積極的に行なう事業者が増え、今ではすっかり定着しました。
品質表示は第三者機関によって審査(住宅性能評価)が行なわれ、1、2、3の等級で表わされます。
審査(評価)項目は、耐震性、劣化対策、維持管理対策、省エネ性、高齢者等配慮対策などとなっています。
等級は項目によって、1と2しかないものと5まであるものに分かれます。例えば耐風等級は2まで、耐震等級は3、省エネ等級は4、高齢者対策等級は5までとなっています。
この表示はうっかりすると勘違いしやすいのですが、1が1番上級なのではなく、数字が大きいほど上なのです。耐震性能では次のように区分されています。
<耐震等級1>:数百年に1度程度発生する地震(震度6強~7程度)の力に対して倒壊、崩壊しないレベル(=建築基準法レベル)
<耐震等級2>:数百年に1度程度発生する地震(震度6強~7程度)の力の1.25倍に対して倒壊、崩壊しないレベル(=災害時の避難場所に指定される学校や官公庁に相当)
<耐震等級3>:数百年に1度程度発生する地震(震度6強~7程度)の力の1.5倍に対して倒壊、崩壊しないレベル
●見ただけでは分からないものを「見える化」するのが性能表示制度
マンションの性能は、外から眺めているだけでは分からない部分がたくさんあります。耐震性や劣化対策などは、素人には図面を見ても分かりませんし、仮に図面で分かっても完成した建物が果たして図面通りに出来上がっているかになるとプロでも分かりません。
果物を外から見て甘さを知ることができないようなものです。つまり、完成したマンションの性能を目視で診断することは困難です。人工的に地震を起こして試してみるというわけにもいきません。
これを「見える化」するのが性能表示制度である、と考えれば理解しやすいのではないかと思います。
第三者機関が図面を見て評価し、工事中の建物を何回か検査して評価する。この方法で「あなたの買ったマンションの性能(建物価値)は、最上級ですよとか平均的なグレードですよ」と証明書(評価書)を出してくれるわけです。
平たく言えば、宝石の鑑定書のようなものがマンションにも付くようになったというわけです。これは法律上の義務ではなく売主の任意なのですが、付かないマンションは投資用ワンルーム以外に見当たらないようになった昨今です。
●耐震等級“2”以上のマンションは極めて稀少
見えない「安全品質」にコストを払うユーザーが確実に増えていると言われます。3.11大地震以来、それに拍車がかかったようです。
「安全品質」とは、地盤の強度や耐震強度ということになりますが、地盤に関しては立地によって様々ですが、軟弱地盤の上に建設されるのは珍しいことではありません。しかし、地盤調査の後、最適な杭の長さや構造、工法を選択してマンション建設は計画されて行きます。
ただ、耐震強度のレベルは建築基準法で定められた最低ラインに留まることが多いと言わざるを得ません。最低ラインとは、「震度6強~7の地震にも倒壊・破壊しないもの」です。住宅性能表示では、上述の通りこれを「等級1」としています。
2と3は既述のとおりですが、今のところ「耐震等級2」以上のマンションは極めて少ないのが実態です。
100年に一度あるかないかの大地震でも倒壊しないレベルなのだから、等級1でも十分ではないかという声もありますが、業界のホンネは別のところにあります。
お気づきのとおり、コストが嵩むからです。それをあえて実行しているデベロッパーも存在しますが、難しい問題です。耐震等級が2以上になると、販売広告では例外なくアピールしますから気を付けてウォッチングして行きましょう。
ともあれ、「免震構造で行くか、それとも一般の耐震構造で行くか、耐震等級は2を目指そうか」。こんな会話がデベロッパー内部で日常的に交わされるようになっているのは事実で、購入者からすれば歓迎すべきことです。
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