第580回 バス便マンションの需要は少ない

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バス便立地のマンションは避けた方がよいという記事をだいぶ前に書いたことがありますが、最近ふたたびバス便マンション向かう人が増えて来たように思うので、改めて「バス便マンション」を検討するときの注意点についてお話します。

●「バス便マンションは広くて安い」だけでないものもあるが・・・

どのような条件で探していくとしても、理想的な物件に巡り合うことはありません。どこかを妥協して選択することになるものです。
立地条件を優先すれば、広さが足りないことになりましょうし、広さと価格の安さを優先すれば立地の良い物件を手にすることはできないので、この葛藤に悩むことも多いはずです。

しかし、立地条件だけは妥協しない方がいいと考えます。なかんずく、バス便はできたら避けたい条件です。 中古物件として売却するとき、それが分かります。 
同時期に分譲された新築マンションの駅前物件とバス便物件の10年後を比較したとき、その売却価格の変動率で明らかな差異が表われるからです。

駅前マンション5000万円が10年後も5000万円と値下がりせずに売れたが、バス便マンションは2割安の4000万円で分譲されたものの、10年後は3500万円にしかならなかったといった差が出るのです。

少し前の調査ですが、「価格維持率」という指標を用いると、駅前マンションは100%でバス便マンションは87%くらいだったのです。これは、東京カンテイ社が2014年に公表したデータで明らかにされました。
2003年に分譲された新築マンションが10年後の2013年にいくらで取引されたかという膨大な調査データの分析結果が証明しているのです。

さて、バス便マンションは例外なく駅近マンションよりかなり安く分譲されます。大雑把に言えば20%くらいは安いのです。  駅近マンションが5000万円のとき、バス便マンションは同じ広さで4000万円です。
(2016年から発売され、2017年秋も販売中の某マンション。駅近マンションより20%くらい安い)

しかも、バス便マンションには駅近マンションより優れた長所を備えているものです。自然環境に恵まれており、大型開発である場合が多いことから、敷地内にも緑地ゾーンやプレイロットなどが大きく確保され、子育て世帯にとって魅力たっぷりの企画になっているからです。
共用施設も豊富に用意されていて、駅近の中小規模物件に比べたら圧倒的な差ができているものです。

マンション選びの希望条件には、言うまでもなく個人差があります。 利便性は劣っても自然環境の良さを優先したい人もあるでしょうし、予算が限られる中で広さを妥協できず結果的にバス便となる人もあることでしょう。
 
その上に上述のようなプラスの魅力があると、大いに購買意欲が増して決断に至るのも理解できます。しかし、それでも可能ならバス便は避けたいものです。

●バス便マンションは何故値下がりしてしまうのか?

駅近マンションより安く分譲されたバス便マンションは、中古になったときも安いのは当然として、購入時が安いのだから売却時の価格も極端に下がらないのではないかと、つまり、同じ経過年数なら同じだけ値下がりするということではないのかと考える人もいます。

ところが、そう単純ではないわけです。 価格維持率で比較すれば、駅近マンションが100であるとき、バス便マンションは80とか85とかと低いのが実態です。
駅近マンションは何故100、すなわち値下がりがないでしょうか? それは経過期間中に新築相場が上がってしまい、例えば10年前の100から120とかになっているからです。

つまり、その時の築10年の中古は分譲時と変わらない100でも、10年後の時点で販売中の新築に比べれば20%ほど安いので、十分バランスしています。

バス便マンションでも10年前の100から、10年後は新築なら110とか120とかになっているはずです。建築費や地価が無縁というわけではないのですから。
そうであれば、バス便の中古も90くらいには留まるのではないのでしょうか?何故、80とか85まで下がってしまうのでしょうか?

答は簡単です。バス便マンションに対する需要の絶対量が駅近マンションに比べて圧倒的に少ないからです。中古価格は、需要と供給のバランスで決まります。需要が多ければ売り出されたマンションは買い手が直ぐに決まります。売り出し価格が強気でも、言い値で買い手が決まることもあります。

反対に、需要の少ない場合は売り出してから長い時間をかけても買い手は現われず、価格を下げざるを得ません。

●バス便マンション。実は割高

それでも、安く買っておけば、売却価格が安くなっても、損失はないのでは?
そう思う人もあるでしょう。しかし、先述のように、そもそも新築時の価格は安くないのです。

バス便マンションは一見安いようで、新築時の価値より高く分譲されたことを意味するのです。筆者の研究では、バス便マンションは駅近マンションの70~75%くらいの価格が妥当と思われる場合が多いのです。それを10%も高く買ってしまうから、売却額が下がってしまうというわけです。

マンションデベロッパーは、実はこのことを知っています。しかし、現実問題として、そこまで安くは造ることができないのです。

新築マンションの原価構成は、土地代+建築費ですが、建築費はどこで建てても大体同じなので、違いは土地代です。簡単に言えば土地代の差が100対80の差となるわけで、70までは下がらないのです。

バス便マンションで70まで下がっている例もないわけではありません。ただ、建物品質は標準以下、付加価値は何もなし、おまけにバス停から徒歩10分も歩くような場所で、かつ自然環境も良いとは言えない、そんな物件です。

●バス便マンションは値引き交渉がカギ

結局、付加価値もあって品質も標準以上といった優良なバス便マンションでも80の価格は後年の売却時が特別な相場高騰時でない限り、「割高」ということになるのです。

バス便マンションの大半は新築時の大規模キャンペーンを展開しても完売まで長い時間を要しています。完売まで2年もかかってしまうようなことが多数あります。

苦戦マンションは、最終的には大幅な値下げ販売を断行します。そこを狙って安く買うのが秘訣です。5%~10%くらいの値引き提示が行われるケースもあります。しかし、その値下げ幅は適正とは言えない物件もあります。バス便マンションは強気に交渉をしましょう。

要求した金額を拒否されても諦めず、時間をおいて再度、再再度チャレンジしましょう。バス便マンションは、何しろ価格がポイントになるので、十分に気を付けなければなりません。

●中古のバス便マンションは適正価格

新築のバス便マンションは、その多くが割高と判定されます。しかし、中古マンションは別です。適正な価格まで下がっていることが多いからです。

新築マンションは、大々的なキャンペーンを展開し、圧倒的な展示法・販売ツール等によって販売を行いますから、その販売・広告戦略によって買い手は一定期間に集中的、かつ大量に動員されます。

その方法によって売り手は買い手の購買意欲を高め、一気に売買契約へと誘導します。当然ながら、初期の段階では定価販売です。すなわち高値販売です。

これに対し、中古マンションはネット検索による反響を待つ、つまりは成り行き任せといった消極的・受動的な販売(仲介)活動になっていますし、価格交渉によって売り出し価格から5~10%は下がります。成約実績は、次の売り物件の指標となります。

その結果、中古のバス便マンションは妥当な価格で購入できることになるのです。購入価格が妥当であれば、価格維持率も標準的なレベルとなるはずです。

妥当な価格で購入しておけば、何年先か後に売却するときの価格は、「バス便だから安い」とは言えても、「値下り率はバス便だから低い」とはなりません。

筆者がバス便を論外とするのは、新築マンションを購入する人向けの警句なのです。 適正価格まで十分に下がった中古マンションには当てはまりません。

とはいえ、価格維持率が駅近マンションと変わらないと断定できるわけではありません。何故なら、既述の通り需要量において元々差があるためです。利便性を求める人の方が、「バス便でもいいから広くて安い」を希望する人を圧倒しているからです。

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