第581回 マンションの売れ行きは「二極化」から「都心・郊外拮抗型」へ

(10月5日の投稿2件目です)

「パワーカップル」という時事用語。その階層が選択するマンションは、DINKSだけでなく、子供がある人ほど都心に向かっています。

パワーカップルとは、フルタイムで働く共稼ぎ族のことで、その購買力の高さから「パワー」を冠したものです。いわゆる世帯年収の高さから購入できるマンションの予算も8000万円に迫る階層なのです。

筆者の知る範囲では、下は7千万円弱から上は1億2千万円くらいまでの幅があるのですが、中央値は8千万円くらいです。

以前はパワーカップルが少なかったので、都心マンションは会社経営者や自由業などの特殊階層だけで占められていましたが、2010年あたりからでしょうか、パワーカップルが台頭して来たのです。

折りしも、2013年からの価格急騰期にパワーカップルの台頭期が重なり、都心の高額マンションも大きく売れ行きを落とすことなく推移したのです。

一方、郊外マンションの売れ行きは不振です。マンション価格の高騰は都心だけのことではなく、都心ほどではないものの、郊外でも短期間に大きく値上がりしました。しかし、郊外マンションにパワーカップルは存在せず、購買力が価格高騰についていけない状態となりました。

昔は、都心の値上がりが需要を郊外に押し出したものです。価格高騰が極に達したバブル期には、通勤時間90分~120分もいとわず、価格の安い郊外マンションへ若い子育て世帯は向かったのですが、今は誰も行かないのです。遠方では、仕事も子育てもできないからです。

従って、郊外マンションを購入する中心層は、もともと郊外に住む人たちです。しかし、昨今その需要層も、購買力を超えるマンション価格を嫌い、購入を見送っています。パワーカップルの購買力に余裕があって、マンション価格の上昇についていける状態にあるのとは対照的です。

このように書くと誤解を招きかねないので補足しますが、都心のマンションが好調なので、郊外の開発をせずに都区内の物件ばかりを扱おうとするデベロッパーのベクトルが用地の争奪戦を激化させたのでしょう。価格高騰は、3.11地震以降の建築費高騰にあるとばかり思っていたら、地価の上昇を引き起こしてしまいました。

その結果、購買力に余裕があるはずのパワーカップルでもここまで価格が上がると、さすがに予算オーバーになる人も増えました。売れ行きは「都心好調・郊外不振」という二極化構図も崩れて来たと感じます。

そのことを如実に表すのが新規発売(供給)戸数の低迷です。首都圏全体の供給戸数は2016年が35,772戸で、前年の40,449戸から12%も減りました。一方、東京23区の供給戸数は2015年が18,472戸、2016年は14,764戸で、20%も減少したのです。

23区のシェアは2015年が46%でしたが、2016年は41%に下げています。絶対戸数では23区以外の供給戸数が2015年の21,977戸(40,449-18,472)から2016年は21,008戸(35,772-14,764)と前年レベルを僅かに下回っただけでした。

パワーカップルでも、都区部のマンションは高過ぎて手が出ない状況になって来たと言えそうです。個別の物件をつぶさに見て行くと、その様子がよく分かります。

新聞などマスコミでは「大本営発表」のようなコメントが語られている例もありますが、仔細に分析すると苦戦を余儀なくされている物件は実に多く、筆者の目には「高過ぎて売れないマンション」、「一見安そうだが、条件が粗悪な住戸の売れ残り」が溢れています。

かといって、パワーカップルは郊外には行けないので、数少ない新築の中でも、比較的価格を抑えた都心物件に集まる傾向を見せています。今後は、どのようなことになるでしょうか? 選びたくても物件がない、あっても手が出ない、中古も見たが魅力的な中古は新築並みに高い。こんな嘆き節も届きます。

しかし、待って得策とも言えません。良い物件に巡り会えたら、とにかく値引き交渉を頑張ることです。新築でも、完成間近、若しくは完成していたら値引きに応じてくれます。中古なら間違いなく値は下げてくれるはずです。目標は10%、妥協点は5%。こんな目安になりましょう。

完成マンション・中古マンションの方が2年先完成のマンションと違って金利上昇のリスクもないのです。

今後どうなるかの問題では、デベロッパーの動きにも着目しなければなりませんが、新築は大きく値を下げることはありません。もともと大きな利幅が取れるビジネスではないので、下げ余地は低いからです。とはいえ、背に腹は代えられないので、僅かな下落は期待しても良いかもしれませんが、人気の優良物件で価格を抑えて来るケースは稀です。

ターゲットは中古です。中古は個人所有であり、かつ「安い時期に買った」と目される物件の値上がり幅は大きいので、下げ余地も大きく、交渉次第では大きな果実が得られるかもしれません。筆者の関係した事例を見る限り、5%は当たり前ですが、10%もありましたし、7%8%なら難しくないと感じています。

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