第582回 「2022年の生産緑地の宅地化でマンション用地は増えるか?」

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生産緑地として指定され、固定資産税などの優遇措置を受けている都市農地が、2022年に期限切れを迎えると、一斉に売却に動く地主が現れ、地価は暴落する。こんな論調の週刊誌やインターネットの記事が出ているためか、「どう思いますか」という質問をときどき受けるようになったので、今日は生産緑地の宅地化とマンション価格の関係について述べようと思います。

●生産緑地とは?

1974年に公布された生産緑地法では、市街化区域内の宅地化を促す目的で大都市圏の一部自治体では農地の「宅地並み課税」が行われ、これにより都市近郊の農地は宅地化が進むことになりました。

その後、1992年の生産緑地法改正により市街化区域内の農地は、保全する「生産緑地」と、宅地などに転用される農地に区分されました。

自治体が指定した土地については、固定資産税は農地なみに軽減され、また相続税の納税猶予が受けられる「生産緑地制度」が適用されたのです。生産緑地とは、生産緑地法に基づき、市街化区域内の土地のうち、一定の要件を満たす土地の指定制度(生産緑地地区制度)に沿って、管轄自治体より指定された土地ことです。言い換えると、生産緑地とは、都市計画で保全することを決定した大都市圏における市街化区域内の農地のことです。

生産緑地はもともと三大都市圏の市街化区域を念頭に定められた規定のため、「都市農地」と表されることもあります。指定地区数、面積とも東京都が最も多く、国土交通省がまとめた資料によれば、全国合計のうち地区数の約5分の1、面積の約4分の1が東京都にあるのだそうです。また、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府の6都府県で全体のおよそ8割を占めるようです。

東京の場合、大半は市部にあります。23区は約13%、千代田区や中央区のような「生産緑地」が全くない区もあります。比較的多いのは、江戸川区、練馬区、世田谷区の3区です。

生産緑地に指定されるには、次のような要件を満たすことが必須です。
①農林漁業などの生産活動が営まれていること、または公園など公共施設の用地に適していること。
⓶面積が 500㎡以上であること
③農林漁業の継続が可能であること(日照等の条件が営農に適している等)。

生産緑地の指定を受けると、農地としての維持管理を求められ、建築物を建てるなどの営農以外の行為が制限され、また農地以外としての転売はできなくなります。一方、それ以外の農地は、宅地並みの固定資産税を課せられることになったのです。

宅地並みの課税をされた農地は、売却へ動くことになり、地価の高い区域では農地が次第に減少し、住宅・マンション等の建設が進みましたが、営農を決断した農家は「生産緑地」として今日も耕作を続けているというわけです。

●生産緑地の指定解除

法は、「以下のいずれかに該当する場合に市区町村の農業委員会に買取り申し出を行い、市区町村が買収せず、農業経営者への買取りあっせんを経て生産緑地として買収する者がいない場合には生産緑地の指定が解除される」と定めています。

①生産緑地の指定後30年経過。②土地所有者または主たる従事者の疾病・障害等により農業等の継続が困難な場合。③土地所有者の死亡により相続した者が農業等を営まない場合。

このうち、報道が過熱しているのが、「生産緑地の指定から30年経過したとき」です。

所有者が死亡または農業従事できなくなった場合に、所有者は市町村に対し買い取りの申出を行うことができ、市町村は特別な事情がない限り、時価で買い取らなければならないのです。

しかし、財政負担が難しいという事情から、これまでに申出を受けて市町村が買い取るケースはほとんど無かったと言います。市町村が買い取らない場合、及び市町村の斡旋によっても生産緑地として買う者がいない場合は、この生産緑地指定が解除されます。

1992年に最初の指定を受けて30年が経過する2022年以降、一斉に買い取りの申出が行われたても、大部分が買い取られず、その結果、生産緑地の指定が解除されて宅地化が進む、その可能性が非常に高いと見込まれています。

これまで、相続が発生したとき相続人が農業を継続しないことから生産緑地が解除されると、固定資産税が一気に跳ね上がる為に相続人は維持できず、売却や有効活用を選択してきました。

有効活用とはアパート建築が典型的な策でした。アパートを建てれば、固定資産税は農地ほどではないものの、大きく軽減されるからです。

●2022年問題に乗じるアパート建設業者

今、建設会社が2022年問題というセミナーを各地で盛んに催しているようです。

建設会社は生産緑地指定解除を絶好の商機として賃貸住宅の販売先として生産緑地所有者を虎視眈々と狙っているのです。

生産緑地にマンションやアパートが建設されれば、建設戸数は飛躍的に増加します。賃貸住宅の建設戸数が大幅に増えるとどうなるのでしょうか?

空き家が社会問題として大きくクローズアップされている昨今、建設業者の提案にやすやすと乗せられる農家が大量発生するとも思えません。

生産緑地の大半が「一気に」放出され、そのぶん空き家が大量発生するという論調も多く見受けられますが、必ずしもそうはならないはずです。

●営農継続か売却かの選択

 これまで、相続が発生したときに「生産緑地」の継続を選択したケースはどのくらいあったか知りませんが、多くはなかったことは間違いありません。

生産緑地とすることによって、相続税評価額も非常に低廉になり、納税猶予制度の適用を受けることが出来ますし、固定資産税も今まで通り少ないままで良いというメリットがある反面、デメリットとしては、生産緑地を相続したら終身営農が義務付けられ、万が一途中で農業をやめてしまうと、相続当時の相続税納税額を3.6%の利息を付けて払わなければなりません。

そのことを懸念して、売却という選択をした場合でも、これまでは一斉に相続が発生するわけではないので、大量に売り出されたこともなく、売り出される都度、建売業者などが競い合うように購入して行きました。

しかし、2022年には相続の発生とは無関係に生産緑地の解除によって一斉に大量の土地が市場に出まわることになるかもしれません。その土地を買うのは、建売業者と考えられます。しかし、住宅立地としてふさわしくない農地も多いので、買い手がつかずに、叩き売りになる事も考えられます。

●マンション用地に限定して考えてみる

1992年以降、減り続けて来た農地ですが、売却に回った農地は、駅に至近の価格の高いものが中心でした。早い段階で換金されていたのです。今、残っている生産緑地は駅から徒歩10分以上、遠い地域ではバスでも15分かかる場所ばかりと言われます。

従って、マンション用地として提供される可能性は低いと思います。世田谷区には何故か徒歩10分圏内で小型マンション建設に丁度いいと思える生産緑地が散在していますが、無数にあるわけではありません。

駅から徒歩10分を超えると、人気の高い世田谷区でもマンション販売はとたんに厳しくなるので、手を出すデベロッパーは多くないと見ます。また、大型マンション建設が可能な広い生産緑地は殆どないと思います。

駅に遠い、規模も小さいとなれば、購入するのは建売業者やアパート建設業者が中心になるでしょう。

しかし、既にアパートは供給過多と言われていることから、建売業者が安く買い叩いて事業用地にするケースが多くなるのではないかと思います。その結果、地価動向に影響を与える(下落する)のは必至と考えるのが自然です。

そのおかげで、マンション用地も下落して買いやすくなればマンションデベロッパーは喜ぶでしょうが、そもそも適地が少ないので、結局は競いあって地価を吊り上げてしまうのではないか。筆者は、そんな予想を立てています。

飛躍しますが、1住宅当たりの敷;地が広くて価格が安い建売住宅が増えれば、マンション市場にも影響を与える可能性は出て来るかもしれません。しかし、マンションを求める階層は駅から遠い建売住宅と競合する確率は低いとも思います

つまり、マンションユーザーにとって、「2022年問題」は期待もできないし、危惧もない問題かなと考えているところです

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

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