第590回 自宅マンションは投資目的ではないが儲かるものだ

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筆者にご相談下さる人の多くが、「売却するときがあるかもしれない」ことを理由に「将来の資産価値を心配しています」というお便りを付記して来られます。

具体的には、「残債割れしないだろうか」や「買い替えはうまくできるか」「損はしないか」といったご心配の多いことに鑑み、今日は飛躍するかもしれませんが、「自宅マンションは儲けられるもの」というお話をしようと思います。

●当てが外れたケース

マンションを安い時期に買って高くなったら売って儲ける。こんなふうに考えている人は少なくありません。世の中そう都合よく行くものではないのですが、人間には欲があるので、どうせ買うなら値上がりしそうなマンションを買っておきたいと考えるのですね。

地域再開発がらみのマンションなどは、街が発展したら我が家の価値も上がることは必至と信じて、そのマンションを選択します。駅直結マンションなども典型的な値上がり期待の物件です。

こうした物件は、高い人気を博し、抽選で購入者を選ぶような状態になります。

モデルルーム(マンションギャラリー)は熱気を帯び、買いたい人の前のめりの姿勢が周囲に強く伝わって来ます。その状況を見て、これだけの人々が買いに来ているのだから間違いなく良いマンションだと確信を持つに至り、価格の割高感に疑いなど微塵もない状況に置かれます。もう十分に高いのに、まだ上がると大きな期待を抱いてしまうのです。

その街では、再開発によって作りだされた空き地に次々と新たなマンションが建設され、販売されます。すると、最初の物件の価格は100でも、2棟目の物件で110となり、3棟目では120と高くなって行きます。 再開発地域の外側にも、ブームにあやかって建設された普通のマンションも多数現われ、高値で売りだされます。

やがて、そのエリアは全体に相場が吊り上がって行きます。新築が高くなれば中古も連動して上昇します。街並みがすっかり変わり、生活利便施設も充実します。人口が増え、ショップが増え、公園が整備され、歩道も広く街路樹が美しいので、住みたい街のランキングで上位にアップし、つまり、ますます人気が高くなって行きます。その結果、マンション価格はさらに上がるという好循環を創り出します。

その上昇過程で買ったマンションは、上昇期間中に売ってしまうなら、間違いなく儲かるでしょう。 しかし、開発余地がなくなってしまうと新築マンションの販売はストップしてしまいます。受け皿がない以上、人口も増えません。外から入って来る人はありません。さらに呼びたければ、買い物や観劇やスポーツ観戦などの訪問者に期待するしかありません。

訪問者の中に、ここに住みたいと感じる人もあるでしょうし、先住者の友人から話を聞いて自分も住みたいと考える人もあるに違いありません。しかし、待っても新築マンションが中々出て来ないので中古の売り物を探すことになります。

中古マンションも人気の街は需要が多いので価格は下がらず、最後の新築物件と変わらない値段で右から左に売れてしまいます。中古を売った人は何かの事情で街を離れて行くか、新築に移り住むのでしょう。

街にあるショップはリニューアルしたり、増築したりしながら集客のイベントを繰り返します。レストランはメニューを変え、買い物施設はテナントを入れ替えた結果、爆発的に来客数が増えたりすることもあります。古いビルが解体され、新たなコンセプトのもとに、新業態の店が誕生し、内外から集客します。

こうして、街は新陳代謝を繰り返しながら人気を維持しようとします。その結果、中古マンションは相変わらずの高値で取引が行われることとなります。

魅力的な街なので、他の街に行ってしまう事情があっても自宅は売りたくない、当分は賃貸するという人も多いものです。従って、売り物はあっても、需要に見合うほどはないという状況も生まれます。そのために、中古相場は高いままを維持し続けます。

最後の新築を購入した人はどうなったでしょうか?値上がりの連続の中、おそらくは最高値で買ったのです。

中古相場が高いと言いましたが、やはり格差はできます。最後の新築と変わらない高値の10年中古もある一方で、2割くらい下の10年中古もあります。築5年と新しいのに、1割下の売り値の物件も当然あります。最後の新築物件を仮に築3年の段階で売りに出したら、10%の値下がりとなるケースもあります。

最後の最高値の新築は、築10年中古の最も高い人気を誇る物件と同じくらい高い評価(人気)を集めるマンションであったとしても、そもそも購入額が大きく異なるので、売却益という観点では、築10年中古は1000万円も儲けられ、最高値で買った最後の新築物件は利益ゼロとなるかもしれません。

●タイミングが悪い買い物

今は買い時でないという考え方も随分広まった感じがします。しかし、そんな時期に買いたい動機が発生してくる人も多いものです。高い買い物をしても、それが人気物件となれば、値は下がらないということがありますが、購入額より低くなる可能性が高いものです。建物は劣化するのですから、当然と言えば当然です。

しかし、中古マンションは新築価格に連動します。新築価格が例えば20年前に100であったときに買ったマンションが、20年を経て新築相場が200になったら、20年前の新築は20年中古になって新築の7掛け評価の優良マンションなら価格は140に、つまり40%も値上がりするのです。

しかし、条件の良くないマンションを買ってしまったために、7掛け評価でなく5掛け評価になるかもしれません。としたら、100でしか売れません。それでも100で買ったのですから、損得はゼロです。

このように、普通のマンションでも相場が上がれば損なく売却が可能になりますし、散々な評価の物件でも、相場が上がれば底上げされて恩恵にあずかれるのです。

殆ど同じ立地条件で、建物品質もブランド価値も同じような物件だったら、20年経ても新築相場に対して5掛けでなく7掛けということはありますし、年数にかかわらず地域一番の物件だったら、新築の110%評価になるかもしれません。

しかし、それは特殊な物件,別格の物件というべきかもしれません。大半が20年も経ったら新築の半値くらいになるのが普通です。簡単に言えば、そのくらいでないと購買意欲が湧いて来ないと市場は見ているのです。

しかし、普通のマンションでも、地域によっては底上げが強く働くケースがあります。新築供給が極めて少ないエリア、もしくは供給があっても人気のあるエリアでは需要をカバーできないほど売り物が少数の場合は中古の相場は上昇します。

このように地域格差・物件格差は大きいのですが、購入時が高いときだったために期待したほど高く売れなかったというケース、高い時に買ったが売却時の相場が再び高い時期だったので思いがけず高く売れたというように、「不動産売買の損得はタイミング」が実は最も大きな要因になっているのです。

●値上がりしなくても儲かる?

値上がりを期待したのに、全くの思惑外れであったという人、値上がりするかしないかなど何も考えずに買ったが10年経って売却をすることになり、仲介業者に査定をお願いしたら、購入額と同じだったと喜んだ人、購入額から30%も下がってしまい落胆した人など、地域・物件格差によって、また購入時期と売却時期のタイミングによって、損得には大きな差ができる。これが現実です。

しかし、値下がりしたとしても直ちに損とは言えないのです。その理由はいくつかあるのですが、今日はそのひとつをご説明しましょう。

売却時までのキャッシュフローを計算してみると分かります。

①購入時に支払った頭金や各種費用(中古なら仲介手数料、新築なら修繕積立一時金、共通分として登記料など)と、②所有期間中に支払った住宅ローン元利合計、管理費等、年払いの固定資産税、③そして売却時に支払う仲介手数料やハウスクリーニング代、と住宅ローン残債の合計金額・・・(A)支払総額

これに対して入金額は、いうまでもなく売却代金です・・・(B)

(A)-(B)は、よほど大きな値上がりがなければ、大抵マイナス(支払い超過)になります。例を挙げてみましょう。

頭金1000+諸費用300+管理費等10年分300+固定資産税10年分150+不動産取得税10+ローン返済1800(金利300+元金1500)+ローン残債4300+仲介手数料200=8060万円が総支出なので、売却代金6200万円の収入から引くと1860万円の支払い超過となります。

この例は、頭金1000万円;35年ローン5800万円で6800万円の物件(3LDK70㎡)を購入し、10年後に6200万円で売れたと仮定した場合の試算です。

1860万円の支払い超過を、どのように見るかという問題もありますが、例えば10年間(120か月)で割ると15万5千円になるので、これを賃料だったと考えると、物件・地域によっては格安に住んでいられたことになるのです。

上記キャッシュフローの数字に再度ご注目ください。ローン残債は4300万円です。売却金額6200万円の中からこれを銀行に返済し、かつ仲介手数料200万円も支払うので、手取り金額は1700万円ということになります。6800万円の買い物が10年後に6200万円になった(=9%の値下がりだった)としても、手にしたキャッシュは1700万円にもなるのです。10年間、格安の賃料で快適なマイホームで暮らしたほかに、退室時には当初の頭金も諸費用も利息が付いて戻って来たと考えることはできないでしょうか?

この試算の変数は、金利と売却価格です。金利が高ければキャッシュフローは悪化します。しかし、どこから借りても10年分の支払い金利は今なら200万円くらいですみます。
大きな変数は売却価格です。上記サンプルは売却代金が6200万円でしたが、仮に5500万円だったら、手取り金額も700万円減って1000万円になってしまいます。
反対に値下がりなく売ることができれば、600万円増えて2300万円のキャッシュを手にできるのです。

カギは購入したマンションの売却価格がいくらになるかにあります。これをいかにして読むか、ここが重要です。「将来価格の予測に関するご相談」は、10年後のオーダーが多いので、10年のキャッシュフローをご紹介しましたが、15年後ならどうなのか、20年後だったら、まだ物件Aと物件Bでは同じ購入額でも、売却価格はどう違ってくるのか、こうした変動要因を学習しつつ、一定の覚悟のようなもの(腹積もり)として数字を持っておくことは、ライフプランとして意味があると思います。

物件選択を誤らなければ、値上がりしなくても「儲かる」ケースが多いとお伝えしたいと思います。

最後に、ポイントとして以下の3点を覚えておくといいかもしれません。

①先ず、今の低金利の下では、35年ローンも10年後には約25%減っています。
②頭金0で購入しても、10年後の値下がり幅が25%以内なら、持ち出しすることなくローンの清算が可能になります。
③頭金を20%入れようが30%入れようが、同じこと。値下がり率が25%以内なら、頭金部分がそっくり残るというわけです。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。