第774回 「人口減少地域のマンション価格」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

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郊外マンションのご相談では、その大半が「将来価格の予測」とのセットです。買おうとしているマンション、もしくは買ったマンションの将来価値を心配してのご依頼です。

 

*長く住むつもりだが、先のことは分からないので、いざというとき売却がスムーズにできるのかどうか、何より大損することはないかといった点に関するご相談。これが最近は急増してしています。

 

●買ったマンションの将来価格を左右する要素は?

マンションの価値は、立地条件、建物の規模、グレード感、住戸面積、間取りなどによって変わりますが、この中で、その評価を大きく左右するのは立地条件です。

 

*買ったマンションの将来価値、言い換えれば、いざ売却というとき、良い値が付くかどうか、首尾よく売れるかどうかについて無関心な人はいないはずです。

 

*昔は、そんな先にことは考えずに買った人が多かったようですが、最近は関心が高まっています。転勤の可能性があるから遠くない将来の売却を想定して買いたいと考える人だけではないのです。

 

●将来の価格はどのように想定できるのか?

日本人は「新しいものを好む」傾向があるようで、欧米とは真逆の思想だと聞きます。欧州では、古いものを大切にして何百年も使い続けるような文化があるのだと、視察旅行先で聞いたことがありますし、テレビの番組などでも耳にします。。

 

*これに対し、日本は長く木の文化に親しんで来たから、壊しては建て、建てては壊すことに抵抗がないのだとか。 江戸は何度も大火に見舞われ、そのたびに新築を繰り返してきた歴史があるため、新築を望むのが一般化しているのだという説明も何度か聞きました。 つまり、日本人は新築志向が根強く、中古は人気薄なのだとも。

 

*マンションは簡単にスクラップ&ビルドするというわけには行きませんし、共有財産ですから、所有者全員の合意がなければ建て替えることもできません。とはいえ、マンションの耐用年数は短いものでも50年以上、最近のものは100年以上と言われます。中古マンションを買っても、将来の建て替えを心配しなくてよいと言っても過言ではありません。

 

*区分所有建物であるマンションは1戸単位の売却ができますから、古くなって住み心地が悪くなったとか、広さが足りないといった不都合が生じたときは売却することができます。市場も整備されています。 言い換えると、中古マンションは市場に並べれば買手を探すことはできるのです。

 

*問題は売却価格です。 新築志向の強い日本では中古マンションの人気は高くないため、高値で売ることができるかには疑問が残るものが多いのです。 それでも新築並みの高値で売れるような人気マンションもないわけではありません。

 

*中古マンションの価格はどのように決まるのでしょうか。 イメージ的に説明すれば、オークションです。もっとも、競り上がることはなく、売り出した価格で買手がつくかどうかがカギです。平均的には、10%ダウンくらいでしょうか、相場を調べて「売れそうな価格」を定めて5%程度プラスした価格で売り出すのが普通なので、希望通りの価格で買手が決まったという声もよく聞きます。

 

*中には、専門企業(仲介店)の査定額に10%余も乗せて売り出す欲張りな売り手もありますが、査定額(仲介会社の見込み)と大きな乖離がない額で売り出し、そして買手が決まるのが普通です。

 

*査定額が低いか高いかの判断基準は直近の売買実績によります。隣のマンションは最近●●万円で売れました。これとの比較で貴方のマンションは、●●万円前後で売れるはずですと、その査定根拠を業者は示してくれます。つまり、中古マンションの価格は、近隣マンションとの「取引事例比較法」により査定されるのです。

 

*人気マンションは高くなり、不人気マンションは安くなります。 「古くても高値になる」、もしくは「古い割には高値のマンション」、すなわち人気物件を買っておけば、将来の売却で手元に現金を何百万円と残すことができます。

 

*反対に、不人気マンションを買ってしまうと、売却時に住宅ローンの残債を清算もできず、手元預金を取り崩さなければならない事態もあり得ることになります。 最近は住宅ローンの金利が低いので、毎月の住宅ローン償還によって借り入れ元本が急速に減るものの、35年の長期ローン利用者の場合、買ってから10年後あたりの残債は75%前後もあります。 したがって、購入価格から25%以上も値下がりしてしまうと、売却代金だけでは清算できないことになってしまうのです。

 

*この後で、買ったマンションの将来価格を占う話題に移りますが、将来価格はどのレベルになるのか、その点を踏まえて購入マンションを選択するなら、その判断に役立つでしょう。

 

●人口が減ればマンション需要も減る

モノの価値は需要と供給の関係で決まります。中古マンションの価格も同様で、需要、つまり買いたい人の多い人気エリアと人気マンションは高値が付くのです。

 

*人口が少ないエリア、人口が多くても一戸建て需要が大半を占めるエリアでは、マンションの需要は少なく、そのために価格は安くなってしまうものです。 現在は人口も多いし、マンション需要も少なくないと思われるエリアであっても、10年後、20年後にはマンション需要が激減すると予測されている街もあるのです。

 

*郊外の都市ほど、その懸念は強く、売却時に買手がなかなか現れないとか、ようやく現れたものの、価格は希望額から大幅ダウンになったなどの事態も起こりえるのです。 都市全体としては、一見して変わらないように見えていても、よく調べてみると人口は減り、若年層の少ない衰退都市の道を「走り始めていたりします。

 

*既に衰退の道を走っている郊外都市があって、その都市の中古マンションの価格は格安レベルになっています。 今、あなたが検討している街の将来がどうなりそうか、それを占うことが重要です。 ちなみに、人口減少の推移を、過去10年まで遡って調べてみることをお勧めします。

 

●東京とその他の都市の違い

郊外都市と東京都心を比較した場合、郊外のほうが将来の懸念は大きいと考えられますが、東京都内にも将来が心配される街があります。

 

*大雑把に言えば、都心と準都心の人気エリアは大丈夫でも、それ以外に心配される区や街がありますし、横浜のような東京に次ぐ大都市ですら、人口減が心配されるエリアがあるのです。

 

*駅からの距離の差でマンションの評価は異なりますし、鉄道の路線でも異なります。人口減の傾向が見られない人気エリアの中でも、鉄道の路線で差がありますし、最寄り駅によっても人気度、評価は変わります。

 

*人気薄のエリアが10年先に人気を盛り返す可能性がゼロではないものの、期待できない時代になったのです。日本の人口減は当分、止められないようですし、経済発展によってオフィス建設が飛躍的に増えるといったトレンドも見られません。

 

*そんな中でも安心なのは東京都心・準都心、都外でも中核都市と言われる、わずかな地域に限られます。

 

●そもそも年間のマンション需要は世帯数の0.5%以下

首都圏のマンション需要は、新築と中古の合計で年間に総世帯数1,700万の0.35%程度、6万戸しかないことをご存じでしょうか? 新築マンションに限ると、過去10年の平均で3万戸程度なのです。

 

*ちなみに、東京23区の合計で、発売戸数は1万3千戸余(2021年の集計)でした。これは、東京都以外の3県合計が2万戸余なので、23区に集中していることを示しています。

 

*かつて、価格の高騰で都区内の需給が激減したときもありましたが、現在は価格高騰期にありながらも、需要の大幅な減少トレンドは見られないと言えます。 その要因は共働き世帯が増え、世帯単位の購買力が高まっているためと考えられます。価格高騰が売れ行きの悪化を招いている側面はあるものの、都心・準都心居住を断念して郊外に移動するというトレンドが起こっているわけではないのです。

 

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●マンション需要と戸建て需要

最近、一戸建て市場が活況だと耳にします。成長している建売会社も少なくないようです。具体の社名はあげませんが、駅頭でチラシ配布している某企業の商品を覘いてみると、敷地面積100㎡ほどのミニ戸建てばかり、建物グレードも高いとは言えないようです。

 

*それもそのはずで、ミニ戸建ての敷地はマンション用地と異なり、高値になっていないことに加え、鉄筋コンクリートほど高くなっていない建築費、さらには住宅ローン金利が低いことなどが相まって、買いやすい商品となっているため、若年層の人気につながっているのです。

 

*ミニ戸建てと、その買手さんを批判する気はありませんが、将来の売却は考えないのかと訝しく(いぶかしく)思います。

 

*少し前に3階建ての戸建てに住む人から売却についてのご相談を受けたことがありました。 なんでも、人生設計になかった沖縄移住を決断したことに伴って自宅を売ろうとしたが、査定額を聞いて、その安値にびっくりした。 何とかならないかという内容でした。 買った金額と売れそうな価格とのギャップが大きく困り果てていたのです。都区内でも、中古の戸建て住宅は激安なのだということを教えられた一件でした。

 

*マンションにせよ、一戸建てにせよ、そこに住み続ける限りは価格がいくらであろうと金銭的には何も問題がないのかもしれません。しかし、換金処分することになったときは別です。その価値について無関心な人はいないはずです。 ところが、建売住宅を買う人の多くは、その点をあまり考えないらしく、マンション購入者とは隔たりが大きいように思います。

 

*一戸建ての中古売買が不活発とは言えませんが、高値で転売できて大儲けしたという話は聞いたことがありません。マンションも選ぶものを間違えれば安値になることはありますが、それでも東京圏では、やはりマンションが市場の中心というべきか、市場規模も圧倒的なのです。

 

●コロナ禍のもたらす影響についてひとこと

最後に、連日ニュースになっているコロナ問題とマンション市場の影響について一言だけ添えておきましょう。

 

*コロナ禍が在宅勤務を常態化させていますが、1年前だったでしょうか、売れ残っていたバス便マンションが一気に完売した例もあって、今後は安値の郊外マンションが主流になるのかと問われたこともありました。

 

*筆者は、コロナ問題は人間の英知によって、いずれは解決するはずだ、歴史が証明していると。そう信じています。

 

*平時の姿に戻ったとき、マンション需要も元に戻るはずです。つまり、通勤に便利で日常生活に便利な街が好まれるはずです。 交通便の良いとは言えない街のマンション人気は下落、したがって価格も下方へ向かうに違いありません。

 

*いっときの事情や空気で条件の劣る安値のマンションを選択することに筆者は賛同できないのです。

 

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