第630回 「価格はまだ決まっていません」と言われたとき

※今日1本目の投稿です。もう1本あります。

 

ある人が次期販売予定住戸の管理費等(修繕積立金・修繕積立一時金)を尋ねたら、まだ決まっていないという答えが返ってきたとそうです。

 

第2期以降で、そんなことはあり得ないとお答えしました。理由を説明しましょう。

 

第1期の管理費と修繕積立金等が、第2期になったら変わることはありません。従って、検討したい住戸タイプの専有面積が分かるなら、平米単価をかければ自動的に算出することが可能です。

 

聞かれた担当者は、次期販売予定住戸に関しては「未定」なのだから「未定」と答えなさいと上司から言われていたらしく、杓子定規に管理費等まで「決まっていない」と言ってしまったらしいことが分かったようです。

 

一番知りたい価格を、中々教えてくれないとこぼす人も少なくありません。

価格についての「未定」はあり得ますが、本当は決まっているものです。

第1期販売の価格を公表しているケースは、マンション全体の販売価格について社内決裁を受けているはずで、全体の売り上げと利益計画に基づいて価格表も同時に決裁文書に添付するのが一般的です。

 

1期の住戸だけの価格だけを審議するということはありません。あるとしても、全体の売り上げ・利益計画がセットになっています。切り離すということはないのです。

 

しかし、それにも関わらず「未定」というのはなぜでしょうか?二つの理由があります。

 

ひとつは、値上げするかもしれないから。もうひとつは、顧客(見込み客)との接触の回数を増やす、若しくは決断を急がせるという営業上の理由です。

 

値上げは実際行われています。同じ間取りの縦列は、1階上がるごとに30万円ずつ加算される値付けと推測できる列において、理由もなく5階上を300万円も上げた例、条件が良く面積も広い部屋では第1期で8000万円だった部屋の3階上の住戸が8800万円になっていたなどという例があるからです。

 

価格をいくらにするか、それを決めるのは売主の勝手だと言わんばかりの横暴さがそこにあると思いませんか?

大きな価格の変動には合理的な理由が必要です。20階までは目の前のビルが眺望を遮るが、21階からは抜けるので「素晴らしい景観をお楽しみいただけるから」といった説明によって納得が得られるものですが、そんなことはお構いなしに高くしてしまう売主も存在します。

 

「未定です」ならまだしも、「次期から値上げする予定です」と、当然のように告げる営業マン。

その狙いは、言うまでもなく買い手の決断を煽るためです。

 

しかし、このような売主は少数です。一般的に「未定」とするのは、次のような理由によります。

 

「未定」という中には、大きく変わることはないが、若干の微調整をする可能性があるためです。第1期で北向きが不調だったので、次期では少し調整をした。つまり、1階上がるごとの加算ピッチを小さくして上階もあまり高くならないようにする、逆に人気の高い列のタイプは少しずつ値上げして全体の利益は減らないようにするといった小細工をすることがあります。

 

このため、あとで数字が僅かでも変わって買い手からクレームが来ることを恐れる売主は、「未定」または「000万円台」という表現を使います。4900万円台と言えば、4900~4999万円の中で変更できるからです。「予告広告」の段階で営業マンに尋ねて得た答えと、正式の価格との差異は最大でも99万円以内ということになります。

 

もし「未定」の一点張りの答えのときはどうすればいいでしょうか?そのときは、既に契約済みになった住戸の価格を聞いてみることです。そこから類推することができるからです。

8階が4900万円で9階が4950万円なら10階は5000万円になるのだろうと。

もちろん、9階以下より10階が眺望価値で群を抜くような住戸なら50万円ではなく、200万円のプラスかもしれません。