第642回 10年後に買い替え。その不思議な動機

このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

買い替えの動機に首をかしげる人にときどき遭遇します。

 

よく聞いて見ると、住宅ローン控除が終わるからだというのです。本末転倒のような気もするのですが、節税のための買い替えはあってもおかしくはありません。

 

ご存知のように、住宅ローン控除は毎年12月末のローン残高の1%相当額を10年間に渡って所得税から控除して還付してくれるという、買い手にとってはまことにありがたい税制です。年間40万円以上の税金を納めている人でも40万円が上限ですが、仮に借入額が毎年4000万円以上あれば、40万円×10年で400万円が戻るのです。

 

控除期間も控除額も年々大きくなって、当初は景気浮揚策として誕生した「時限立法」でしたが、更新の連続で実質的には恒久減税のようになりました。

 

最大40万円ですが、共働きの夫婦が別々に4000万円ずつ借りて8000万円以上の買い物をしても、最大80万円の還付金があるので、ちょっとしたボーナスをもらうようなものです。確かに魅力的な制度です。

 

購入してから10年経つと、この特例がなくなります。このため、比較的若い世帯の中には、新たに住宅ローンを組んで、つまり買い替えをして宅ローン控除を10年延長させようと目論むという人があります。

 

会話を進めて行くと、10年近く住んだので「飽きた」ことに本当の動機があるらしい人もありました。別の人は、買ったマンションが高く売れるらしいと知り、「今売れば儲かるから」という確定利益狙いの人もありました。

 

●ローンを払っている間はずっと控除を受けたい

30歳で買った人が40歳になって新たなローンを組んでも定年(将来は70歳定年に伸びる?)までに完済しようとすれば、30年ローンが限度になりますが、そのうちの10年間(通算20年)は800万円の節税ができることになります。残りの20年は控除がないので、今度は30年ローンではなく、10年ローンにしたいという人もありました。

 

毎月の返済額が大きくないのですかと質問すると、そのときは15年くらいにすると言います。それでも大きくないですかと突っ込むと、妻の所得があるので大丈夫と答えが返って来ました。

 

●確定利益を得ても買い替え先も高い

自宅が高く売れそうだから買い替えをしたいという人も、買い替え先の物件がステップアップ(ランクアップ)していないことに違和感を覚ることがあります。ダウンサイジングという買い替えもあるのだから不思議なことでもないのですが、会話をしてみると、新たに買う物件に満足していないようでした。

 

自宅と買い替え先は同じ区内でした。しかし、沿線が全く異なります。沿線人気で言えば、買い替え先は劣るのです。広さはあまり変わらず、駅に近いことも同じで、違いは価格でした。65㎡の自宅を4500万円で売って70㎡の5500万円の物件を購入する計画でしたが、売却によって得るキャッシュは購入物件の資金には回さないようでした。

 

一般的な「手狭になったから」という買い替えなら、予算は増えるものです。例えば、10年前に4000万円で買ったが、今度は6000万円になるのが普通です。増やさないためには、都落ち覚悟の場所に妥協することが必須です。

 

高く売却できるときは、購入する物件も高いのが当然です。それでも買い替えが実現できるのは、売却で手にする資金が大きいこと、10年の間に貯金ができていること、所得が増えて借入可能額が大きくなっていること、つまり、金利が安くなって借りる気になれば大きな金額を借りることができる時期にあるからにほかなりません。

 

この買い替え構図が成り立つ人も結構多いのですが、確定利益狙い派は「貯金なし・所得の伸びも少ない」人で、買ってから5年経過の若い人です。つまり、ここ5年の急騰相場に運よく便乗できそうなことから買い替えの計画を思い立ったのです。

 

●10年という節目の年が買い時に当たるとは限らない

さて、買い替え動機が「ローン控除継続」と「確定利益追求」ではなく、一般的な場合、つまり「手狭になったから」と「便利な所に住みたい」、「子供の学校の関係」などは、最初のマンションから10年くらい経って発生するものです。

 

筆者も最初の買い替えの時期は8年目に来ましたが「待ったなし」でした。相場の高いときで自宅は信じられないほど高く売れましたが、次に買ったマンションも恐ろしく高い値段でした。

 

家は買いたい時、買わなければならない時に、都合よく安値である確率は低いのかもしれません。ライフステージと購入時期とは無関係ではありません。結婚、子育て、転勤、定年、子供の独立などとマイホームの購入や売却は密接に関わっています。

 

高度成長期に社会に出た人、バブル期に就職した人、バブル後のデフレ時代に少年期にあった人、高金利時代にマイホームを買った人、バブル時代に郊外で買うしかなかった人、低金利のローンでマイホームを買えた人、バブル後に都区内でマンションを買えた人、今回の急騰相場が始まる直前の2012年に替えた人など、例を挙げればキリはないですが、それぞれの人生は経済や社会構造の変化など、時代背景によって良くも悪くも影響を受けるのです。

 

人生のイベントの中でマイホーム購入は重みのあるものですが、タイミングが悪いとしても、それを不運と嘆いたり恨んだりしても仕方ないことです。つまり、5年前に買っていたらなどと考えても、死んだ子の年を数えるようなものなのです。

 

過去には、高値で買ってしまったために売るに売れず苦しんだ人もあったでしょう。売れた場合も、その損失額が半端なものではなかったという人もあるはずです。

しかし、経済的には損失だったとしても、そこに住んでいた時間の幸福は、大きな「精神的利益」を得て余りあったはずです。

 

幸福はお金で買えるものばかりではありません。また、幸福をお金に換算することはできないと思います。そこに住んで得られる幸福感や、住まいの満足感を「使用価値」としましょう。「使用価値」は、個人の価値観や家族の事情などによって幅があるもの、その大きさは他人には測り知れないものがあります。

 

つまり、場所を含め、快適な暮らしができそうなマンションであるなら、他人が何と言おうが、また、どんなに高額であっても、値下がりして経済的な損失を被っても、その決断は間違いでないことが多いのです。

 

●買いたい時が買いどきに当たったら幸運

買いたいと思ったとき、買い替えしたいと思ったときがどのような時期に当たっているか、これは人それぞれです。バブル期に誕生した人、就職氷河期に大学を卒業した人、ゆとり教育と言われた時代に小中学校生だった人、一人っ子世代と言われ大切に育てられた人、女性活躍時代にキャリアを積んだ女子等々、自分では選択できない中に人は生きています。

 

マンション市場も変遷はありますが、買いたい時が買い時ではないこともあるのです。買いたいと思ったときに相場の安定しているとき、若しくは相場の低いときであったら、それこそ幸運、いい時代に生まれて来て良かったと思うのと同じではないでしょうか?

 

「価格が高いから購入は先延ばししよう」という選択はできないこともありませんが、先延ばししたら「価格は安くなるのでしょうか?」、そして「それはいつですか」、このように考えると確信は誰にもできません。ネット上では「オリンピック後マンション価格は暴落する」かのような発言もあるそうですが、筆者は「暴落することない」、「下がっても僅か」と考えています。

 

どちらが正しいかは神のみぞ知るということかもしれません。こんなときは、「買い時はいつか」を考えない方が良いのかもしれません。買い時は貴方にとって常に“今”だからです。見学したとき、この場所、このマンションに住みたいと感じた、その気分を大事にすることですね。

 

「買いたい」そう思ったときが買い時というわけです。そう考えれば後悔せずに済むことでしょう。

 

「こんな家に住みたい」、「もっと便利な家に住み替えたい」、「広い家に買い替えたい」と思うことが動機でなく、「ローン控除を使うと得だから」という動機であっても、「住みたい家があれば、それもまたよし」ではあるのですが、本末転倒にならないよう、物件の選択には慎重を期したいものです。

つまり、その次も売却することがあるので、有利に売れる物件の選択(=資産価値の視点)を軽視しないようにしなければなりません。

 

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