第714回「新築は安心だが中古は怖い」の買い手心理に思う

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。

怖いという言葉には「分からない」のニュアンスがあります。

この購入者心理を念頭に置きながら、中古マンションを様々な角度から考えてみたいと思います。

 

●新築が安心。その心理は?

少し前、あるご相談者から「中古マンションは考えられない」という発言を聞きました。

中古は怖いというのです。発言の根拠は「どこに故障が隠れているか見えないから」というものでした。

 

筆者は、思わず「新築の方が危ない」と言いかけて思いとどまったのですが、新築なら売主は大企業であったりもしますから、安心感を買い手に与えているのでしょう。

 

企業規模はさておいても、新築は設備保証も建物保証も付いています。その期間は構造部分で10年、その他の部分では1~5年です。これに対し、中古マンションには殆ど何も保証がないと言って過言ではありません。

こう聞くと「やっぱり新築は安心」と思うかもしれません。

 

●構造部分の品質保証は築後10年まで

しかし、新築マンションでも引き渡しから長くても2年を超えたら設備類に関しての保証はないのです。

5年または10年と長くなっている部位もありますが、それは躯体構造に関する重要部分だけです。殆ど問題が起こりそうにない部分が対象です。

 

品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)に基づき、売主企業は引渡しの日から最低10年間にわたり瑕疵担保責任を負わなければならないことになっています。従って、買主は住宅に隠れた瑕疵(欠陥や不具合など)があったとき、この期間中であれば売主または請負人に対して無償修繕や損害賠償の請求をすることができます。

 

しかし、10年間のうちに売主等が倒産などすればその責任が果たされないことになりかねません。そこで、2010年10月に施行された「住宅瑕疵担保履行法」では、新築住宅の売主や請負人に、保険または供託による資力確保措置を義務付けました。これによって万一の場合でも、買主や注文者が保護される仕組みとなっています。万一、売主が経営破綻したとしても心配いらない仕組みができたのです。

 

ただし、これらの法律が対象としている瑕疵は「構造耐力上主要な部分(基礎、柱、外壁、屋根など)」および「雨水の浸入を防止する部分」に限られます。重大な欠陥や故障が起きた場合、一定期間は所有者個人の負担なしで修復されることになります。

その他の箇所における瑕疵については、宅地建物取引業法の規定で引渡しの日から最低2年間は責任を負うとだけ定められています。

 

そこで、財団法人不動産協会などは、「アフターサービス規準」を別途定め、買主に一定期間の保証をすることにしています。以下は不動産協会ホームページより抜粋した部位ごとの保証期間です。

 

 ※設 備 ・ 機 器・・・抜粋

部位・設備

現象例

期間

備考

照明器具(管球を除く)

住宅情報盤

インターホン

情報通信設備

取付不良・機能不良

2年

但し、機器本体は保証書の期間による。

配線(電気)

破損・結線不良

5年

 

給水管・排水管

漏水・破損

5年

 

 

※建築/ 専有部分等・・・・・抜粋

部位・設備

現象例

期間

備考

防水床(浴室)

漏水

10年

 

板張・寄木張・Pタイル張

ジュータン敷き・畳敷

破損

2年

 

<破損>浮き、へこみ、はがれ

但し、傷及び日焼けは引渡時の確認のみとします。

タイル張・石張

亀裂・破損

2年

<破損>はがれ、割れ

内部扉・襖・障子

変形・破損・作動不良・取付不良

2年

<破損>襖紙、障子紙は引渡時の確認のみとします。

建具金物・カーテンレール

変形・破損

作動不良・取付不良

2年

 

 

※構造耐力上主要な部分および雨水の浸入を防止する部分・・・抜粋

部位・設備

現象例

期間

備考

基礎・柱・梁・耐力壁

・内部床 ・屋上・屋根

コンクリート躯体の

亀裂・破損

 

10年

構造耐力上影響のあるもの(鉄筋のさび汁を伴った亀

裂・破損およびこれに準じるものとし、毛細亀裂および

軽微な破損は除く)に限ります。

 

外階段の床

はね出し式のバルコニー、外廊下の床

コンクリート躯体の

亀裂・破損

 

10年

上記と同様とします。尚、はね出し式のバルコニー、外廊

下の床については、先端部の亀裂・破損や短辺方向(主

筋に平行方向)の亀裂は構造耐力上の影響が少ないの

で原則として除きます。

 

屋上・屋根・ルーフバルコニー

雨漏り

10年

屋内への雨水の浸入

外壁

雨漏り

10年

屋内への雨水の浸入

屋上・屋根・外壁の開口部に設ける戸、枠その他の建具

雨漏り

10年

屋内への雨水の浸入

外部貫通(雨水排水)管

屋内への漏水

10年

 

 

上記の保証は新築マンションに限られます。中古マンションにはないのです。そう聞くと、「だから新築は安心で中古は危険」と思ってしまいそうです。しかし、そんなことは全くないのです。

 

むしろ、新築マンションの方が心配だという声もあります。中古でも10年未満の築浅マンションは危ないという声さえあるのです。

 

先へ進めます。中古でも築3年、5年といった比較的新しい方がいいという声をよく耳にします。聞いてみると、「新築に近いほどきれいだから」が理由です。日本人には強い新築志向があって、中古を嫌う傾向があるのです。

また、現実問題として新築か新築に近いほどきれいな中古なら、購入代金以外にリフォーム代などの負担が少なくてすむからです。

 

築浅中古は新築並みにきれいだし、10年、20年を経過した中古に比べたら購買意欲もわくことでしょう。その代わり、価格も新築並みに高いはずです。まあ、新築よりは安いかもしれませんが、決して割安とは言えないかもしれません。

 

●新築マンションと中古マンション「比較項目23」

ここで、新築と中古マンションの違いを整理してみましょう。

1)価格 

*新築・・・高いのが普通です。安ければどこかに欠点・弱点があるものです。

*中古・・・安いのは築年数が長いものに限られます。築浅の物件は新築並み思った方がよいでしょう。築20年を超えた物件の中に、新築時から住み続けた人が一度もリフォームしないまま売り出しているケースもあり、そのようなものは購入後のリフォーム代を計算するとお買い得とは言えないので、「安いから」だけで探しても当てが外れると思った方が良さそうです。

 

2)価格交渉

*新築・・・売れ残り物件以外は受け付けてもらえないことが多い

*中古・・・買主が指値をするのは普通のことで、売主も当然と受け止めるものと考えてよいでしょう。売り出し価格を決める際には、「値引分」を5%程度は乗せていると思って間違いありません。

 

3)物件代金以外の諸費用(登記料・ローン保証料など)

*新築・・・修繕積立基金(一時金)が必要。

*中古・・・仲介手数料がかかる。リフォーム費用がかかる物も多い。中古の方がトータルでは高くなると思って間違いありません。

 

4)固定資産税(土地+建物)

*新築・・・新築マンションの場合、建物部分の課税は5年間に限り半分に軽減されます。尚、建物は完成後に課税されるので引き渡しの翌年からの納税となります。

*中古・・・築年数によるが、新築より安いことが多い。

 

5)修繕積立金

*新築・・・初年度の設定は安く、5年か10年ごとに増額される計画になっている例が多い。

*中古・・・築年数が長いほど高額に設定されているのが普通。

 

6)住宅ローン

*新築・・・低利で物件価格の100%まで利用可能。金利は融資実行時になるので、完成時期が1年後、1年半後などと長いケースは金利上昇のリスクを負う。尚、基本的に優良な建物(長期優良住宅など)は金利も安くなるものです。

*中古・・・物件価格の100%まで可能な場合も多いが、あくまで銀行の査定による。引き渡しまでの時間が短い場合が多いので、金利上昇によって生活設計を大きく狂わされる心配は少ない。

 

7)住宅ローン減税

*新築・・・期間10年以上の住宅ローン利用者は、年末借入残高の1%以内で最高40万円を、10年間、合計で400万円を最高額として所得税・住民税から控除される。優良マンションは50万円・500万円となる例も。

*中古・・・売主が個人(消費税非課税)の場合の年末ローン残高の2000万円まで。また、期間は築後25年までの建物という規定がある。ただし、省エネ改修工事やバリアフリー改修工事を施したリノベーション物件は年数制限が外れ、年額20~25万円を限度に所得税から控除される場合がある。

変更になる場合があります。詳細は税務署等でご確認ください

 

8)建物外観・共用部のきれい度/管理状態

*新築・・・建物の美観は優る。モデルルームの演出も感動的。一気に購買意欲が掻き立てられる。 管理状態に関しては、言うまでもなく、売れ残りマンション以外、確認することはできない。

*中古・・・外観やエントランス、廊下等が古ぼけていたり、室内も汚かったりというケースが多く、感動が薄い。ただし、室内からの眺望が感動的という場合はある。また、建物は古くても敷地内の植栽が大きく育ち、緑豊かな空間が感動を呼ぶ例もある。

 

※レトロ好きな人もあるのでしょうが、日本人の多くは古い物より新しい物を好む傾向が強いとされます。新しいものは良いものという先入観もあるのでしょうか、一目で古いと分かると購買意欲は落ちるものです。こうしたものを先に見てしまうと、部屋に到着する前に気持ちが萎えてしまいます。

 

室内の見学前に必ず目にするのが外観であり、エントランスやロビー、エレベーター、共用廊下です。定期的に清掃や改修を実施していても、新築と同じようには決してなりません。

 

管理状態に関しては、実際の管理状態を目視で確認できるほか、修繕履歴や修繕積立金の残高、管理費等の滞納状況などを知ることもできます。

 

尚、新築マンションでは「長期修繕計画」を立案してから販売に当たりますが、中古では計画自体が存在しない例も20%くらいはあると言われます。

 

9)室内のきれい度

*新築・・・実際以上に綺麗・素敵に見えてしまいます。家具・調度品、インテリア備品で飾り立てて見学者(買い手)を迎えるからです。

*中古・・・壁が黄ばみ、浴槽に湯あか、ガスコンロは油まみれであったりします。こうした光景を目にすると、見学者の購買意欲が高まることはないでしょう。

 

これらを補って余りあるもの、例えばバルコニーから見える景色が感動的であったようなときは印象が薄らぐはずですが、そのような幸運には滅多に出会えないと思った方がよいかもしれません。

 

ただし、中古マンションでもリフォームやリノベーションを施すことによって新築マンションに劣らない感動を呼ぶ例が最近は増えています。

 

10)設備

*新築・・・便利で省エネ効果の高い最新設備が期待できます。共用部も防災関連の設備などが定番に。ディスポーザーは新築でも付かないものは少なくないですが、食器洗浄乾燥機や浄水器は大半のマンションで装備されています。

*中古・・・後付けできないディスポーザーなど、新築に比べると見劣りする物件が多い。浴槽のまたぎ高は、新築マンションなら450ミリ前後が定番ですが、中古マンションは600ミリタイプが多いことに加えて、浴室内のデザインも「お洒落感」から遠いものが多いのです。

 

※テレビモニター付きのインターホンが100%近くに普及したマンションですが、モニターの画像がカラーか白黒かというと、築30年クラスは殆んど白黒です。

 

また、結露ができにくいことで知られる断熱効果の高い複層ガラスのサッシは、築15年未満の比較的新しいものを除くと中古マンションには少ないものです。

 

11)間取り

*新築・・・平凡な田の字型が多い昨今ですが、工事の進捗状況によっては無料の変更プランを選択できる。カラーやキッチンの高さを選択できるケースも。

*中古・・・最近少ない優れた間取りにお目にかかることも少なくないのが魅力です。バルコニーの出幅は最近の定番である2mはなく、中には1000~1200ミリという狭い物件も多い。

 

12)天井高・サッシ高

*新築・・・リビングルームや寝室の天井高は2500ミリ以上が普通。ただし、部分的にできてしまう「下がり天井」の圧迫感が想像できず、完成内覧会で落胆させられることも多い。リビングルームのサッシは、2000ミリ、2200ミリ高が一般的になっており、開放感の大きい物件が増えています。

*中古・・・古いマンションは2400ミリ以下が普通。リビングルームのサッシ高も1800ミリしかないというケースもあると思った方がいいようです。

 

13)バリアフリー

*新築・・・室内の床段差は殆どないので、つまずいて転倒などという事故は起こらないのが今は当たり前になっている。

*中古・・・築20年以上のマンションでは、廊下から洗面所に入る所で100ミリ~200ミリの段差があるケースが多数見られます。

 

14)耐震性

*新築・・・建築基準法の耐震基準は、震度6強の巨大地震に襲われても倒壊・破壊せず、人命が守られる強度を指定しています。従って、ほぼすべての新築マンションは心配ないことになります。より優れる耐震性を誇る「免震構造」や「制振構造」もタワー型を中心に増えています。

*中古・・・1981年以前に建築確認(許可)を受けた古いマンションは、旧・耐震基準で建設されたため、耐震性能が十分ではないと考えた方がいいのですが、1981年以降の基準の建築確認マンションは新築と変わらないと思っていいのです。

 

※1981年以前の古い中古を検討するときは、専門家の診断を受け、「耐震性合格」となっているかどうかの確認が必須です。

尚、リノベーション物件には、旧耐震基準の時代に建てられた物件が多いので、見た目の綺麗さに目を奪われない冷静さも大事です。

 

15)耐久性

*新築・・・適切なメンテナンスをしながら住めば、コンクリートの寿命は60年以上とされますが、最近は100年コンクリ―トが誕生し、施工上の工夫もあって、より長寿命のマンションが増えています。住宅性能評価を受けている物件では、「劣化対策等級」の項目で最高ランクの「3」を取得しているマンションも珍しくありません。

*中古・・・築20年以上の古いものを検討する人が抱くのは、「あと何年ここに住めるのだろうか」という不安です。マンションの耐久性はコンクリートの寿命だけで論じることはできません。 給排水管やエレベーター等の設備の寿命は短いからです。そこで、何十年か経てば交換工事は不可欠です。その計画が、費用、積立金とともに適切に計画立案されているかを確認することが重要になります。

 

16)遮音性

*新築・・・寝室の隣にトイレや浴室がある場合、使用のたびに目が覚めるなどということがないよう、遮音性を高める設計になっているのが普通です。

*中古・・・築30年以上の古いマンションには遮音性の低いものが存在します。排水音の防音対策が不十分なためです。しかし、そのレベルを内覧時に確認することも、詳細な図面を見ることも困難なものです。そこで、2回目の内覧のときには思い切って水を流すなどして確認させてもらいたいですね。

また、一般に水回り部分が接している壁の隣戸は、同じく水周りに接しているものです。つまり背中合わせになっているのですが、稀に寝室の壁の向こうがお隣の水回りという例があります。このような関係にある住まいはリスクが大きいと思った方がよいでしょう。

 

17)見学範囲と建物の確認  

*新築・・・モデルルームと建設地の外回りのみ。実物を見られるのは完成してからも販売中という売れ残り物件になるわけで、市況にもよりますが、どちらかと言えば例外的です。 多くは、図面から完成形態を想像して購入することになるわけです。 

そのため、完成後に「あれっ?」という違和感に繋がっています。聞いていた説明、あるいは勝手に思い込んでいた姿との相違を発見するためです。担当者の説明不足や過失・故意がトラブルに発展することもよくある話です。

*中古・・・中古取引は「現状有姿(ゆうし)」が原則となっています。後で知らなかったと言っても手遅れなので、目視ですべてを確認することが不可欠です。室内も共用部も、可能な限り時間をかけて検査しましょう。

 

18)取引の安全性(アフターサービス・瑕疵担保責任)

*新築・・・売主が一定期間のアフターサービスを行う。半年・1年・2年といった定期的な点検を実施するのも定着しています。

躯体・構造に関する重大な瑕疵(雨漏りなど)については、10年間の瑕疵担保負担に応じてくれます。

10年間の瑕疵担保責任は、2000年の法律制定により、売主に義務付けられました。売主が倒産したようなときには、瑕疵担保履行保険がカバーすることにもなっています。

 

*中古・・・個人の売主が圧倒的に多く、瑕疵担保責任は免責されます。見たまま(現状有姿)の取引が原則ですが、ガスコンロや電気設備等に関しては、3~6か月程度の短期間ですが、売主または大手仲介業者が負担に応じるのが一般化しています。

なお、築10年未満の物件でも、分譲主の「躯体・構造に関する重大な瑕疵の10年責任」は最初の購入者までが対象であり、転売先までは責任が及ばないとするのが原則です。

 

19)検討スピード      

*新築・・・発売の数か月前から予告広告を開始するので、余裕を持って検討できることが多いのですが、売れ残り物件の「先着順受付中」のタイミングにあれば検討時間は少なくあります。

*中古・・・内覧の順に商談の優先権が与えられますが、内覧前の段階では先着順なので、たちまち「売り切れ御免」になってしまうことも。 広告を見て興味を覚えたら、直ぐにでも内覧希望を仲介業者に申し入れるといったスピードが要求されます。

 

20)物件の詳細な内容の把握

*新築・・・担当物件に精通した専任営業マンが詳細な資料を携えて物件の情報と関連知識を提供してくれるのが普通です。模型や映像の販売ツールも用意され、安心感を与えてくれます。

*中古・・・古い物件ほど資料が散逸していたり、最低限度のものしか残っていなかったりするので担当者も詳細を知らないことが多いのが普通です。とりわけ、見えない部分の品質が分からないことも多いので不安が残るものです。

 

21)流通物件数

*新築・・・中古に比べると圧倒的に少ないのが実態です。ただし、1物件内での選択肢は広い(階・間取り・方位など)

*中古・・・物件数は新築より断然多いものの、同一マンションから一定期間に何戸も売り出されることは少ないのが普通です。売り出される数が比較的多いのは何百戸もある大型物件で、優良だが小規模なものは5年に1戸しか売りが出ないことも。

 

22)住み心地

*新築・・・何もかも新しいので快適に過ごせる部分が多いものの、未完成の段階で出来上がりを想像しながら購入することになるので、気づかないまま引き渡しを受け、期待していた入居後の快適さが落胆に変わることもある。

*中古・・・管理状態から、眺望・日当たり・環境・上下階と両隣の騒音の有無などを確認して購入するので、新築に劣らない快適な暮らしを送れる可能性が高いとも言えます。

 

23)近所付き合い

*新築・・・全員同時スタートの同級生気分でお付き合いがしやすい

*中古・・・転校生気分なので、しばらくの間は疎外感を味わうことになるかもしれないのが欠点と言えます。

 

・・・・・以上、新築と中古の違いを整理してみました。

 

●築浅中古はみな高い。狙い目は10年越えだ!!

狙い目は10年越えだという意味は、第706回で「中古なら築15年物件が狙い目です」と書きましたので詳細はそちらをご覧いただくとして、ここでは要点だけ述べることにしましょう

 

「20年中古だって、余命は50年も60年もあるのです」と言ってみても、綺麗なマンションに住みたいという買い手の希望や考えを否定することはできません。買い手の多くは、中古を検討するときでも「築浅(ちくあさ)」物件に向かおうとします。

 

そのため、築浅中古は買い手が多く、時間のない中で買うか見送るかの結論を求められることになります。そして、「中古はじっくり検討できない」「しかも、新築並みに高い」という定評ともなっているのです。

 

そこで、「築年数の少し長い中古に目を向けたらどうか?」と筆者は提案します。「古くても人気のある好物件はたくさんありますよ。築年数でターゲットを絞ることはやめた方がいいでしょう」・・・筆者はこう言うことにしています。

 

とはいえ、「古いマンションは品質的に問題があるのではないか」そう考える人も少なくありません。

マンションの品質に関して厳しく問われることになったのは、ここ20年くらいのことなので、その意味では20年未満の中古が良いと言えるでしょうし、物件によって差があるとはいえ、古いマンションの中には15年程度でも疑問に思う物件もあり、逆に築30年を超えていても何も問題がなさそうなマンションもあるので、線を引くのは簡単ではありません。

 

ゆえに、筆者は「例外もありますが、大枠として20年以内の物件に絞って探してみましょう」と提案することにしています。

 

●15年程度の中古には優良物件が多い?

2020年時点で築15年ということは、竣工が2005年、分譲販売が2004年前後ということになります。遡ると、バブル期の1980年代末期から90年代初期は恐ろしく価格が急騰して誰も買えない時期でしたが、その後は大きく下落して2003年頃が底でした

 

底這いは2006年まで4年間続きましたが、2007年から再び上昇トレンドへ。この上昇局面でも、売れ行きの悪化を心配したデベロッパー各社は、コストダウンに取り組みました。ただ、その策も現在ほどでなく、まずまずの品質が確保されたマンションが建てられました。 建物品質にこだわるなら、2002年から2008年頃の分譲、すなわち築12年から18年物が良いと言えるのです。 

 

最近(2013年以降)のマンションは品質の低下が著しく、コストダウンもまさかの「乾いた雑巾を絞り切ってしまった」という印象すらあります。

 

2011年の東日本大震災によって生まれた復旧・復興工事のために人手不足が生じ、そのために人件費が上がりましたが、その後も熊本地震、西日本豪雨被害、北海道地震、北大阪地震など、次々に襲われた天災によって建設会社は慢性的に人手不足に苦しむ状況となりました。

マンション建築の原価に占める人件費の割合は50%近いと言われているので、建築コストの上昇は避けようがなかったのです。

 

アベノミクスが打ち出されて以降は地価の上昇傾向が強まり、建築費の高騰と相まって新築マンションの価格は極限に近いところまで上がってしまいました。

 

その余波で中古マンションの価格も高騰しました。特に築浅の中古マンションは新築マンションを超えるほど、そんな例も増えたのです。築浅の中古は無論、築年数が比較的長いものでも、優良な人気中古は価格は新築並みとなりました。

 

一方、築年数の長い中古は築浅中古ほどの人気がないので、うまく動けばキャッチできる可能性は高いのです。築浅中古ばかり探して慌てるより、少しだけ検討時間に余裕を持てる15年前後の中古を狙うのがコツ。短時間に判断を求められて難しいと感じたら筆者にご相談ください。ここ3年くらい、そう言い続けて来ました。

 

一方、日本人は「新しもの好き」の性癖があるためか、同じ中古マンションでも築10年未満の築浅に向かう傾向が強いようです。そこで、逆張りの発想で10年超の物件に注目するのも一考です。そうお話しすることが増えました。

 

●新型コロナ流行の影響で中古マンションは値下がり?

この1か月ほど、コロナ騒ぎの中、筆者はいくつか具体の中古マンションに人気が殺到する現象に遭遇しました。その物件はいずれも「割安」なものでした。

 

どうやら売主さんはコロナ騒ぎの中、多少安くなっても早く売ってしまおうと考えたようでした。今後しばらくは市場が停滞するはずなので、短期勝負に出たというわけです。

 

中古マンションの検索サイトに価格を引き下げて掲載する例も増えていると聞きました。しばらく様子をみようと、サイト掲載をやめてしまった売り手さんも増えているとも聞きます。

 

売り物が減って狙っていた物件が消えてしまったら諦めるほかありませんが、出たらすぐ購入申し込みするべきかかもしれません。

仲介業者とも相談しなければなりませんが、もし意中の物件なら指値は小さく、2番手の物件なら大きめの金額を申し入れしましょう。

値引き率は今なら5%程度でも、3か月先には10%に拡大するかもしれませんが、「待てばもっと良い物件に出会うとも限らない」のです。良い出会いと思ったら価格にはこだわらなくてもいいのです。

 

●新築は思い切って値引き交渉を!!

新築マンションは価格高騰のため、2016年初頭から売れ行き不振が長く続いていましたから、売主・デベロッパーにとって「コロナ騒ぎ」は「青菜に塩」か「泣きっ面に蜂」のようなものです。

 

販売促進策は「値引き」か「オプションサービス」しかありません。しかしながら、表立って(大々的な宣伝活動の意味)の値引きは表明できない苦しさが売主にあります。

値引きなしで買った既契約者から激しく抗議される恐れを抱くからです。値引きするなら、値引き前の契約済み顧客にも同率で価格下げを通知しなければならないかもしれないと考えるためです。

 

値引き(値下げ)販売に踏み切れば、間違いなく売れることは分かっています。しかし、それを広告等で大々的にアピールできない「もどかしさ」が売り手デベロッパーにあります。

 

そこで買い手の皆さんに提案したいと思います。・・・・言いにくいでしょうが、「15%引きにしてくれれば買います」などと購入意思を表してみましょう。

冷やかしはご法度ですが、本気で「買いたい」旨を伝えれば「上司と相談してみます」との言葉が返って来るか、もしくは「15%は無理ですが、多少なら」などと言葉を濁すか、いずれにせよ脈ありの反応があるはずです。

 

販売不振が続いて来たところに加わった景況悪化で危機感を抱いている売主デベロッパーの多くは、おそらく限度ギリギリまでの「値引き・値下げ」の腹を固めているものと推察しています。

 

そこで提案します。

デベロッパーに対する値引き交渉のコツは、高めの率(額)を提示することです。

モデルルーム販売という広告を見て販売事務所(マンションギャラリー)を訪問したとします。もし、買いたい部屋が残っていたら、「こちらもモデルルーム同様にお値引きして下さいますよね?」と、さも当然といった顔で言ってみましょう

 

「いえ、モデルルームだけです」などと拒否したら、「では結構です」と買う気が失せたような態度を見せましょう。それで、担当営業マンが慌てるようなら勝機はあります。

全く動揺を見せず、「モデルルームと同じというわけには参りませんが、少しくらいなら」などと回答した場合も大いに可能性はあります。

 

「すみません。モデルルームだけのことでして」などとすげない返答だったら、一旦帰途につきましょう。「そうですか。ではまた」でいいのです。後日(ひょっとして忘れかけた頃に)メールが届くでしょう。

「前回お越しいただいたときのお部屋の上の階の同じ間取りタイプがモデルルーム販売として〇〇万円で売り出す予定です」などと。

 

●表向き値引きしていなくても

「決算前ですので、〇〇万円ほど勉強させていただきますから、この機にご決断ください」などと誘ってくる営業マンもあります。会社から値引きの枠をもらっているようです。

 

このようなケースは、「〇〇万円ではねえ」などと気のない素振りを見せるといいでしょう。必ず「いくらなら買ってくれますか」の反応があります。このパターンは買い手が主導権を握ることを意味します。

 

このような下手な営業マンだったらチャンスは大いにありです。ネゴシエーションは駆け引きです。粘って大きな金額を勝ち取りたいものです。

 

●値引きの額に根拠は要らない

 ご相談者が「値引きの根拠とするため、適正価格を知りたい」とメールで尋ねて来ます。適正価格を評価レポートの中で示すのは当然と考えて数字を表記していますが、それを持ち出して値引きの材料にするのは得策ではないともお伝えしています。

 

 買い手にとっては安ければ安いほどいいのであって、例えば「不動産鑑定士の鑑定結果がいくらだから、この価格はいくらいくら高い。よって、ここまで下げろ」などの理屈は通用しないのです。

 ご相談者の意図は、どこかに「交渉時の拠り所」となる数字が欲しいという心の動きがあるものと推察できます。

 

 どこかの家電量販店が、「当店より安い他店がありましたら、同じ金額まで価格をお引きします」という販促手段を駆使して成長しました。これは、同じ型番の商品と分かるからこそ可能な商法です。マンションのような唯一無二の商品には当てはまりません。

 

 その意味からも、たとえ100万円でも得した気分になることがある一方、500万円の値引きでも得に感じない商品もあるはずです。

また、元々が高値であれば、少しくらい値引きしてもらっても安いとは感じないはずです。

 

反対に、元々が大変優れたマンションで、魅力を感じていたものの、高いことだけがネックで逡巡していた人にとっては、100万円でも背中を押されたように感じるということがあるのです。

 

大事なことは、値段に見合った価値あるマンションかどうかです。ただ、その見極めは難しいところがあります。そのようなときは、第三者の意見をお聞きになるといいでしょう。

 

定価を決めている新築マンションでも、交渉次第では値引きしてくれます。コトと次第によってですが。試しに交渉してみる価値はあります。

新築マンションの場合、表立った値引き販売は、昔は一切していませんでした。実際には、気付かれないように行っているのです。

 

「価格改定」「新価格」などと広告に堂々と打ち出す例も稀にあります。今後はそうした例が増えるかもしれません。

広告で打ち出すことはなくても、値引き販売が常態化するはずです。値引きについては、当然あるものだと認識して交渉してもいいでしょう。

 

 

●値引きしてくれるのはどんなマンション?

マンションが値引きをする理由は、販売が思わしくないからです。順調に売れていたら値引きはしません。

「売れている」マンションに対して、値引き交渉を仕掛けても無駄と断言してもいいのです。 そこで、売れていないか売れているかを判断することが先決になります。

 

実は、あなたが良いマンションだと思っても、なぜか売れていないマンションがあります。客観的に見ても、良いマンションが売れないこともあります。

何故でしょうか?価格が高いからです。高すぎれば売れ足は鈍いものです

しかし、販売状況は中々つかめません。売り手が巧妙に隠すからです。

 

売主が販売状況を隠すのは、値引き交渉に及ぶ客が増えることを恐れるからだけではなく、売れていないものは悪いものという誤解を買い手に持たれたくないからです。その誤解がますます売れないという悪循環に陥りかねないことを警戒しているためです。

良いものは売れる。売れるものは良いものという観念そのものを買い手に見せたいのです。

 

これも先に述べたことですが、売れているか売れていないかを見極める簡単な方法は、建物が完成に近づいているか、既に完成し入居が始まっているとき、プレハブ小屋の外部モデルルームから建物本体内にモデルルームを移転して販売しているかどうかです。

この状態は、大体において売れていない物件です。

 

しかも、「第〇期・新発売」と謳い、売れ残りでないことを言いたげな物件でも、当該期の売り出し戸数が一桁だったら、販売不振の動かぬ証拠と言えそうなケースも多いのです。第〇期の数字が8期とか9期などと大きな数字の場合も販売不振物件である場合が多いのです。

 

●交渉はこうする

相手が売り急いでいるようなときは、ズバリ 「ちょっとおまけしてくれたら、ここで決めますが、どうですか」 と言うことです。

当然「いくらですか」と聞いてくるでしょうから、そのとき平然と大きな金額を言うのです。

理由など説明する必要はありません。安い方がいいに決まっているのですから。

 

〇〇〇万円おまけしてくれたら必ず契約します」 と、明確な意思表示をするのがコツです。間違っても、「金額次第で契約するかどうか検討するから金額を提示してくれ」などと言ってはなりません

 

百万円と言って百万円になるよりは、1千万円と言う方が、5百万円は無理かもしれませんが、3百万円くらいの値引きを勝ち取る可能性が高いものです

知人の専門家に相談したら、「良いマンションだが価格が高いね。10%引きをお願したら」と言われました・・・このように言うのも方法です。

 

最初は、「それはとても無理です」と答えるでしょう。そうなったら、「では、いくら勉強してくれますか」と切り込めばいいのです。「ちょっと上と相談しませんと・・・」と反応あればしたら脈ありです。

 

販売が順調ならば、売主も強気ですから、「ご勘弁ください」 と値引き交渉には応じないでしょう。しかし、それでも粘って交渉すれば、価格以外のサービスを何がしか提供してくれることがあります。

例えば、「モデルルームに展示していた家具」 や 「登記料の売主負担」、「駐車料5年分無料(売主負担)」 といったものです。

 

そこから何の譲歩も引き出せないときは、「会社との交渉、頑張って下さいな。お願いした価格になれば、いつでも手付金を払いますから」と言い残して帰ること、そして翌週にでも電話またはメールを送り、「私どもも少しだけ歩み寄ります」などと初めて妥協しつつ「いくらくらいなら可能ですか?」などと交渉することです。

 

買う気がある。冷やかしではない。この姿勢を見せつつ、簡単に妥協しない手強い買い手(タフ・ネゴシエーター)でありたいものです。

 

こうした駆け引きが苦手な人や、値引き交渉をしたことのない人は、「何かおまけは付かないのでしょうか」 から口火を切ってみてはどうでしょうか。

 

担当者が、いきなり「今決めていただけるのなら〇〇万円お値引きします」 と言ってくることがあります。チャンス到来です。

これは、販売が絶不調の証拠です。あらかじめ 〇〇〇万円までなら値引きしていい、 という値引き幅が現場に与えられている場合で、 誰が行ってもその額だけは値引きしてくれるということです。

そういう場合は、その額を交渉のスタートと考え、積み上げを狙うようにすべきです。 

 

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