第723回 「マンションの室内設計で残念なところ」

このブログは10日おき(5、15、25)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。

今日は、日ごろ何度も接する間取りの話です。気を付けたい点(残念な点)を網羅してみました。

ご検討の際に参考にしていただければ幸甚です。

<トイレの手洗いが奥にある>

・・・・・水槽の上部に手洗い用の蛇口がある昔ながらのタイプ。高級マンションではあり得ない形です。残念無念と言わざるをえません。

<便器の先端から扉または壁までの長さが足りない>

・・・・・言うまでもないことですが、壁またはドアまでの距離が短いと、大柄な人は頭をぶつけてしまうのです。未完成マンションの場合で、検討する部屋がモデルルームでないために確認できないときは「トイレの先端から扉または壁までの距離が少なくとも55㎝は必要と覚えておくといいでしょう。

<その浴室サイズは、1418ですか、1620ですか?>

・・・・・昔のマンションは1317とか1216といったコンパクトサイズが主流でしたが、最近のファミリーマンションは広めに作るのが定番です。1418とは1辺が1400ミリ(1.4メートル)、もう1辺が1800ミリ(=1.8メートル)という内法寸法のことですが、モデルルームを見た瞬間に「狭い・広い」の感覚は、いま住む家のサイズと比較してのことですが、大事なことは「売買市場での主流、または基準がどのあたりにあるか」です。中古マンションの中には2サイズダウンの物件が多いので、気を付けましょう。

<洗濯機が無造作に置かれるマンションは願い下げだ>

・・・・・マンションの間取り図を見て落胆することのひとつです。パーティションも何もなく、洗面所の隅に無造作に設置された洗濯機パン。設計センスを疑ってしまします。ともあれ、雑然としがちな洗濯機周りはスッキリと片付くものを選びたいものです。

<トイレは客に見られることを意識したい>

・・・・・トイレは、家族だけならまだしも、家族以外の人も使う場合があると思いましょう。

狭いながらもリビング空間。そんな意識を持って、整理・整頓、そして飾りつけをしたいものです。

そのためには、「棚」や「手洗い器」、収納などを細かくチェックすることが大事です。お洒落かどうか、狭くないか、機能性は問題ないか、といった観点が必須です。

<玄関ドアからリビングまでストレートな位置関係に要注意>

・・・・・多くのマンションは、玄関からリビングルームのドアまでまっすぐになっています。このため、玄関先に訪問者があるとき、奥まで覗かれてしまうものです。

見られても構わないという考え方もありましょうが、見られたくないなら、リビングルームの扉は開け閉めの習慣が必要です。

玄関ドアから奥が見えない形が望ましいのです。

<売却価格が安くなりがちな低層階住戸>

・・・・・何階の住戸かは、マンションの価値を左右する大事なファクターです。

目の前に隣地のマンションやビルが迫っているか、公園・緑地かで快感が全く異なるはずです。

低層階の住戸は、その観点では厳しい評価になることが多いものです。日当たりに影響がなくても、プライバシー性に問題があるものです。

何階に住もうと、どこかから覗かれてしまう可能性はゼロではありませんが、人間心理として、目と鼻の先に他人の目があるのは歓迎できないものです。

このような家は、買い手が避けようとします。つまり、売りにくいのです。ということは、価格に下方圧力がかかることになります。

何年か先に売却する、そのときの価格に大きな影響を与えるのです。可能な限り上階が望ましいことになります。

新築マンションを検討した経験をお持ちの方はお気づきかと思いますが、マンションの価格は上に行くほど高く設定されているものです。上階の方が人気は高く、下層階が売れない、少なくとも売れ足が遅いということをマンション業者はよく知っています。

この人気度に応じて価格を決めているのです。

この階数による人気度は、新築販売のときは格差が大きく、中古市場では新築時ほどではないのですが、やはり価格差が生まれます。

その意味で、低層住戸より高層住戸を買った方がいいと言えるのです。

<1階住戸は避けるべき>

・・・・・その意味で、「1階住戸や半地下住戸は絶対買ってはいけない」と筆者は助言するのが常です。「子供が走り回るから」という理由で1階にこだわる人も少なくないのですが、筆者こう助言しています。

「お子さんが室内を走り回るのはいっときのことですよ。しばらくすると収まります。注意しても叱っても子供は同じことを繰り返すものですが、しばらくすると、聞き分けが良くなり、ご心配は無用になるはずです。続いても半年くらいのこと。やがてピタリと止まります。下の階の3軒くらいを訪問し、迷惑をおかけすることがあるかもしれませんが、どうかよろしくとでも挨拶しておけば問題にはなりません。筆者がかつて住んだマンションでも、上階に元気なお子さんがいる家族がいて、しばらくの間、専業主婦の妻を悩ませていましたが、ある日からピタリと止まったのです」

だから、元気な子どもいても気にしないで上階を選んだらいい、筆者はいつもそう助言します。

<半地下や地下住戸だけはやめた方がいい>

・・・・・半地下や地下住戸の好きなデベロッパーを見かけます。高い土地代だから、地下にも住戸を作れば、1戸当たりの価格が安くなって売りやすいからだと分析できますが、居住性の悪い住戸を作る、しかも意図的に作るのが企業の社会的使命という基本から外れているとは考えないのか、残念というほかありません。

大手の有名デベロッパーでも、稀に半地下のような住戸を設計してしまうことがあるのは、承知していますが、それでも企業方針として意図的に地下住戸を作り続けている企業とは違います。残念としか言いようがないのです。

・・・地下住戸でも、ドライエリア(空堀=からほり)を設けることで法的な基準をギリギリ満たしているのは確かですが、陽光が降り注ぐことはなく、前面道路の通行人から室内を上から覗かれてしまう住まいになったものも多いのです。

価格が安いのが特徴ですが、「いくら安くても、そんな家には住みたくない」そう考える人が多いのです。ということは、将来の転売に大いに悩まされることになるのです。

<天井高が2400ミリしかない>

・・・・・これは古いマンションの普通基準でした。最近の新築マンションは2500とか2550が標準サイズです。天井の高さは、自分基準ではなく、一般基準で見る方がいいのです。将来の売却額に影響するかもしれないからです。無論、天井の高い家は住んでいて気持ちよさを感じるのも確かです。

<下がり天井に注意>

・・・・・中古マンションまたは完成済みの新築マンションを見学したとき、もっとも違和感を覚えるのは、「下がり天井」の存在です。マンションの構造は「柱と梁」で区画された空間に天井と床、壁を設けて作られますが、その区分された中に水道やガスを使用するための道(管)が必須です。

それだけではありません。密閉空間なので、吸排気ルートを確保しなければなりません。居室だけではなく、キッチンや浴室の吸排気も必須です。このルートは天井裏にあって、バルコニーまで続きます。

・・・このルート(排気ダクト)が天井の隙間では用をなさず、部分的な「下がり天井」を生み出しています。それが室内空間に圧迫感や狭窄感を醸し出します。設計士さんたちは、その悪い印象を避けるためのルートもしくは寸法の圧縮に知恵を絞っていますが、結果的に不十分なマンションは少なくないのが実態です。

とりわけ避けようがないのが、柱と柱をつないでいる構造体としての梁のサイズは大きく、天井の垂れ下がり感を強めます。部屋の隅を通っている分には目立たないのですが、部屋のど真ん中あたりに走っているマンションは少なくありません。

・・・梁がどこを通っているかをチェックするのは居住性に大きく影響するのでじっすの確認事項です。

特に未完成の新築物件を検討するときは「大梁の位置と梁下寸法を教えて」と尋ねたいですね。

<階高・天井高に注意>

・・・・・・下の階の床面から、上の階の床面までを階高と呼びます。一方、天井高とは室内空間としての高さで、天井を二重にしたり、床を二重にしたりするので、当然「階高」より短くなります。

住み手の目に映るのは「天井高」のほうです。「天井の高い家は気持ちがいい」となります。

しかし、階高も無視はできません。

この10年~15年、マンション建設の最大の問題は建築費の上昇でした。建築費を抑制することに頭を悩ませ続けているマンション業界ですが、対策は出尽くしてしまったようです。

というのも、設計方針がまるで時代錯誤、退歩しているからです。設計者やゼネコン、こう指摘すると、デベロッパーに属する人たちは気色ばむかもしれませんが、二重床構造が当たりませだったマンションが直貼り構造にしたものが増えているのは事実です。

二重床より直床構造の方が、設計も施工もたやすくなって、工費も安くなるのです。

・・・しかし、「直貼り構造」のマンションには欠点があります。音の問題でしょうか?こう尋ねられますが、その点は大差がないようです。室内を歩いてみて気付くのは「ふわふわ感」とでもいいましょうか、床材が柔らかで沈み込むような感覚が伝わって来るのです。

直床構造は、昔(40年前)と異なり、バリアフリーになっているので、生活していくうえで支障はありません。リフォームの際に、コンクリートスラブに段差があるため、水回り位置はある程度固定されてしまうという問題は残りますが、大胆な間仕切り変更ができないというだけのことです。

従って、一般ニーズから見て、直床が問題になることは殆どないと言って過言ではありません。リフォーム・リノベーションの市場が大きくなっていますが、直床がネックで中古マンションの値段が下がったという話は聞いたことがありませんし、今後も資産価値(売却価格)に大きな影響を与えることはないと断言してよいと思います。既に述べたように、資産価値を左右するのは別の要素です。

・・・しかし、直床のマンションが最近増えたという事実があり、これがインターネット上の論争に発展しているのですが、高級マンションではあり得ない構造であることも確かです。

直床構造は、「廉価版マンションの象徴」とも見なされます。背景には2011年の東日本大震災以降に大きく変わったゼネコン業界の情勢があります。建築費が高騰したため、コストダウンの策のひとつとして採用が増えたからです。

40年以上前の古いマンションでは上下階の騒音問題がしばしば発生し、デベロッパーとゼネコンを悩ませていました。直床から二重床にしても根本解決には至っていませんが、二重床にする方が細部の工法と施工技術によっては遮音効果が高いようだ、加えて二重床の方が別のメリットも多いと分かり、二重床が分譲マンションに定着したのです。最近数年の動きは、時代に逆行していると言えます。残念な流行です。

<床の厚さに安心は禁物>

ひところ、マンションのスラブ厚が随分話題になったことがありました。

最近は見かけなくなりましたが、マンションの音問題が解決したわけではないのです。マンションの音問題は、「分譲マンションなのに」という買い手の期待が裏切られたという思いと重なるようです。賃貸マンションに住んでいて上階から聞こえて来る不快感は、分譲マンションではあってほしくないと願い、かつ分譲マンションではあり得ないと思い込んでいる人が多いようです。

このため、入居してみて上の階、隣の家から聞こえて来る音にびっくりしたとか、2階住人が1階エントランスのエンジン音に悩まされているなどという話はよく聞きます。

原因は施工不良にあったというケースも聞いたことがありますが、どの程度までなら許されるのかは中々難しい問題のようです。

・・・床の遮音性は、「スラブ厚」と「梁間面積」で決まるとされています。つまり、スラブが厚いから安心とは言えないのです。梁と梁で構成される面積が広いほど、床(スラブ)の厚みは厚くなければなりません。

従って、スラブの厚みを聞くだけでは足りないのです。スラブの厚いマンションを担当する営業マンは「000ミリもあります」と、さも高級マンションであるかのような説明をしますが、筆者なら「だからどいなの?」と尋ねます。

・・・中古なら、内見時に耳をすませて確かめることも可能ですが、新築マンションでは殆ど分かりません。売り主の説明を信じるほかないのです。

しかしながら、マンション業者は長年の経験から「スラブの厚みは可能な限り厚くしておかないと入居後に買い手からクレームが矢のように降り注ぐ」ことを知っていて、うかつにも騒音苦情に悩まされるような床、壁が薄く不快な生活を強いられるマンションは建てないものです。

・・・マンションを初めて買う人は、室内で大きな音を出したり、走り回ったりするといった生活はできないと覚悟しておく必要があいます。言い換えれば、マンションは共同住宅なのだから、「自分の家だから、何をしてもいいというエゴは許されない」と覚悟して住むべきと言えます。

<柱の室内張り出しに注意>

・・・・・家具が置きにくいからと柱を外に出し、室内は綺麗な正方形・長方形にしようという動きがいつごろからだったか、普通になって、最初はリビングルームのあるバルコニー側の2本だけでしたが、その後4本の柱を全部外に出そうと変化しました。それが珍しかった時代には、広告紙面に「アウトポール設計で室内スッキリ・・・」などのコピーが躍ったものでした。

今も室内に柱が張り出した設計は少なくないのですが、そうするしかない設計上の制約があるためです。

<共用廊下に面する個室の残念な設計>

・・・・・マンションはエレベーターを降りてから我が家に行くまでの通路がなければなりません。この通路が閉鎖状態になった「内廊下」と、外気に面した「開放廊下」とに分かれます。「内廊下型」は、廊下に面している壁に窓は設けられないことになっています。このため、室内の生活音が共用廊下を通る人の耳に届くことはありません。

・・・問題は「開放廊下型のマンション」です。廊下に面した部分に個室がレイアウトされ、そこに窓が設けられるのが普通だからです。

通行人との間には、ガラス窓が1枚あるだけです。うっかりすれば、話し声は筒抜けになってしまいます。窓の外には、防犯用のシャッターが設けられるものの、閉めっぱなしというわけにいかず、上半分だけ開けていたりするものです。その操作によって室内が覗かれない形状になっているものの、通風のために、上部20㎝くらいを開けていることもあります。

そうなると、室内の声・音が筒抜けになります。

・・・その懸念を少しでも減らそうと、外廊下と居室の窓位置に工夫している間取りがあります。

中には、廊下と寝室の間を吹き抜けにし、窓の外を花台にして心理的にも遠ざけようとしたプランも見られます。

最近の新築マンションでは姿を消したと言ってよいほどお目にかかれませんが、以前はよく見かけたものです。コストアップがなくなった最大の要因ですが、個室のプライバシー性に配慮した間取り。復活してほしいものです。

<ダブルベッドが収まらない>

・・・・・ダブルベッドの置き方で壁に押し付けていいのは、頭か足元かは別として短辺の方です。長辺の部分は両側を40㎝ほど空けることが必要です。片側を壁に押し付けて置いたら、手前に寝る夫はいいとしても、奥に寝たい妻は足元からベッドの上を這いあがる格好となります。これは芳しいものではありません。

主寝室のベッド配置を考えるとき見落とさないようにしたい、大事なポイントです。

<北向きマンション。いかがなものか>

・・・・・北向きマンションってどうなの?このようなご質問がときどき届きます。日本列島の位置から太陽の動きを考えると、「住まいは南向きがよい」のは昔も今も変わりありませんが、マンションが主流の現代になって、この常識が崩れています。

つまり、一戸建てが住まいの主流だった時代の常識は、マンション時代になって変わったのです。

湿度の高い日本では、風通しの良い家が好まれて来ましたが、タワー型マンションが増えた現代、共用廊下が屋内型になって、片面だけの窓を開けても風は流れません。タワーマンションでなくても、防犯の観点から窓を閉めっぱなしの家が近年は増えました。しかし、通風の悪い家は良くないので、機械で強制的に換気することが法律で定められています。

一方、日当たりは時代が変わっても誰もが望む天の恵みのはずです。ところが、マンションでは東西向きも多く見られます。全戸が南向きという物件もときどき見かけますが、過半は3方向に向けて建てられます。しかし、北向きは今も少ないのです。

・・・北向き住戸が誕生する事情や背景はともかくとして、「北向きマンションってどうなの?」とたまに聞かれます。

筆者は答えます。北向き住戸の長所は、視界に入るマンションは多くが南を向いていますから、太陽が燦々と当たり、輝いて見えることでしょう。

また、北向き住戸は真夏のエアコン利用時間が少し減るかもしれません。一番のメリットは購入価格が安いことでしょう。

・・・このように、北向きマンションにメリットは大きいとは言えないものです。

価格が安いというメリットも、次に自分が売る際に、高く売れないとデメリット、つまり「両刃の剣」なのです。ゆえに、買うときの安値に惹かれて「安物買いのなんとやら」にならぬよう気を付けたいですね。

もっとも、ワンルーム系(シングル用)マンションなら関係ない問題といって過言ではありませんが・・

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「対面相談」もご利用ください。お申込みはこちらから(http://www.syuppanservice.com

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