第726回 「リノベーション物件には注意せよ!!」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。

リフォームとリノベーションの違いは何?

先進の機能を持つ設備に交換するとか、間仕切りを大幅に変えるような、大掛かりなリフォームのことをリノベーション(Renovation:改革・刷新)と定義しています。

これに対し、壁紙を張り替える、絨毯張りの床をフローリングにする、建具のドアハンドルを交換するといった程度は「リフォーム」の部類です。

 

間仕切りをそのままに、設備の交換と壁、床、天井の張り替えをした「フルリフォーム」をリノベーションと主張している売り出し広告を見かけますが、厳密にはリノベーションではないという見方もあります。しかし、線引きは必ずしも明確ではないようです。

 

今日はリノベーション物件の実態と、検討すべき課題について語ろうと思います。

 

●リノベマンション参入の業界事情と売り手の事情

中古マンションの取り扱いは、例外もありますが、全国のどの業者でも参加することができます。ただし、成約時に受け取れる手数料は法律で上限が定められています。

 

売りたい人から売却の依頼を直接受けた仲介業者を「元付け業者」と言いますが、買い手が決まると、元付け業者には3%の手数料が入ります。買い手を自ら探して成約させると、買い手からも3%の手数料が入るので、合計6%の収益が得られるのです。

 

ところが、他社が買手を連れてきて成約したときは、「分かれ」と言って、2社が3%ずつ手数料を分け合うことになります。正確には、元付け業者は売り主から、買い手を見つけて来た業者は買い手から手数料をもらうのです。

 

この法的な制限があるため、仲介業者は大きな利益を上げることが難しい業態と言われます。ところが、どんな商売でも同じですが、やりようによっては多額の利益を取ることができます。

 

1件当たりの収益を上げるには、高額物件を多数扱うか、売り手も買い手も自社で扱うようにすればいいのです。とはいえ、高額物件ばかり独占するようなことは、ライバル社も多いので事実上難しいのです。売り物件の依頼件数もそうですが、売りも買いも、どちらからも手数料を取るというのも簡単ではありません。

 

三井・三菱・住友・東急グループなどの大手仲介業者は、ある程度可能ですが、中小の仲介業者の場合は、売り依頼を増やすことも難しいので、買いたい客があっても他社の取り扱い物件を売らせてもらう形となり、最高でも3%の手数料しか入りません。

 

そこで考えられたのが、中古物件を売り希望者から買い取って転売するビジネスです。無論、安く買って高く売るのが狙いですから、急いで換金したい所有者の足元を見て「安く買い叩く」のです。安く仕入れられれば、制限手数料以上、たとえば10%の利益を乗せて転売するようなことも可能になります。

 

これをもう一段発展させたのがリノベーション事業です。リノベーション工事を施して、原価を例えば500万円追加しても、利益が10%、20%と取れるならメリットは大きいと考えたのです。

 

ところが、安く売ってくれる所有者は多くありません。切羽詰まった事情を抱えている特別な所有者だけです。そこで、リノベーション物件を扱う業者は、一般市場に出ている売れ残り中古を狙い撃ちします。即金で買うから値段を少し下げてくれと交渉するのです。この申し入れに乗る売り手は少なくないようです。

 

ところが、立地のよい、比較的新しい「人気マンション」の所有者の大半は、この申し出を受け入れません。結果的に、中々売れないような、古くて立地条件も悪いマンションの仕入れ(購入)が主体になってしまうのです。

 

平たく言えば、リノベーション物件の大半は「駅から遠いとか、利便性の高いものでも、「囲まれ感の強い立地」、小規模で貧相な外観の物件が大半になっています。早い話が、褒めるところの少ない、そのままでは売れないマンションなのです。

 

こうした条件の悪いマンションも、リノベーション工事によって新築なみのレベルに化粧すれば、購買熱を煽り、成約できる確率が高くなります。こうして、リノベマンションは近年増えることとなりました。

 

●リノベもピンキリ

お分かりのように、リノベ物件は、言ってみれば化粧で欠点を目立たなくした商品なのです。それでも価格が相応であればマシなのですが、大抵は割高です。新築なみに改装してあったとしても、適正価格とは言い難いものばかり・・・筆者の調査による感想です。

 

取り扱い業者も「できるだけ安く買って、リノベ工事費用を抑えつつ、売り値があまり高くならないように」と、注意してはいるようですが、そもそも仕入れ額が高ければ限度があります。

 

「中はきれいだけど、共用部に魅力ないなあ」とか、「交通便が問題だし」などと言って二の足を踏む見学者が多かったりします。

そもそも、安く仕入れることは簡単ではないので、リノベ工事も最低レベル、つまり化粧のレベルが低い、感動的でないリノベーション商品として市場に出ていたりします。

 

中には、センスある内装をした物件もあるのですが、排水管の位置が固定されているため、「やむを得ずこうしました」的な「おかしな形の内装もよく見かけます。

 

また、個性的な内装にした魅力的な内装の物件も見かけますが、そんな物件に限って立地条件に問題があるのです。また、そもそもリノベーション物件は築年数を重ねており、このままでは売れないような物件が多いのです。立地に問題があって、築年数も30年を超えていたりします。

 

●高値と分かっていても購入するメリットは?

リノベーション物件は、業者利益がたっぷり乗っていると思って間違いないのですが、それでも買うとしたら、メリットはどこにあるのでしょうか。

 

「世話無しでいい」という一点に尽きるのではないでしょうか?また、リノベマンションはローン控除が個人から購入する中古マンションと比べて倍額になる点も加えられそうです。

 

世話無しでいい、ローンが実行されたらすぐに住むことができる。心配するのは引っ越しのことだけ、と言って過言ではありません。室内に限れば、新築同様ですから、気持ちいい我が家、多分広くて快適なはずです。多少、高値でも買うメリットはあるのです。

 

ただ、立地条件はどうか、将来のリセールは大丈夫かといった懸念点は残るはずです。

立地条件が良ければ、古くなっても意外なほど価格は下落しませんが、リノベマンションに好立地の売り物は少ないのです。

稀に出て来る都心や準都心の物件でも、交通便が良いだけで近隣建物との関係(切迫している)や環境面などでは、疑問に思う物件ばかりです。

 

●1棟丸ごとリノベはどうか?

リノベーション物件でも、1棟丸ごと販売という例が稀に見られます。元の所有者は法人です。社宅として長年使ってきたが、リストラの一環として売ったもの、相続財産の整理の賃貸マンションが居住者の退去が進んで売却に至ったものなどが稀に現れます。

これらの中には、好立地の物件もありますが、数は少ないのです。

 

共有部もリノベーション工事をして販売されるので、「古いけど新しい」、価値ある建物に生まれ変わっています。

 

ただし、タダ同然といって過言でない仕入れ値とはいえ、投下する資本には限度があります。このため、「やり残したような」箇所がどうしても見えてしまうものです。

また、全面改装と言っても、構造躯体は触れないので、天井が低かったり、窓が小さかったりなど、築20年程度の分譲マンションにも勝てない代物です。

 

新古(しんこ)マンションなどと言われますが、まあ「歳は隠せないなあ」というのが見学者の共通の感想のようです。

 

●中古を買うなら「自分でリフォーム」がベター

新築が歴史上、最高値の今、中古マンションに興味を示す買い手も着実に増えています。新築にこだわっていたら、中々マイホームは持てない時期なのです。

 

立地の良い中古は、新築並みの高値という感想を漏らす人もいますが、それが市場の価値であるなら容認せざるを得ません。

 

筆者はよくこう言います。「築20年マンションの余命は60年か70年、新築は80年か90年。中古でも実は新築と大差ないのです」と。

 

立地条件の点では厳選しなければなりませんが、築15年程度の中古ならリフォームも大掛かりでないため、購入後の手間も僅かで済みます。狙いは、ここです。購入者の多くは築浅中古(10年未満)を狙っていますから、人気度で劣る「やや古い」中古、すなわち15年程度が狙い目なのです。

 

売り手の使い方がどうだったかにもよりますが、20年以内の中古なら、結構きれいな物件も少なくないのです。それでいて、築10年未満のような人気はないので価格は割安です。

 

●中古ならプチ・リフォーム

リフォームは、どこまでやるか、それが重要です。

綺麗な家、設備のいい家に住みたい。日本人共通の願望ですが、特に女性は新築にこだわりが強い感じがします。

 

中古になると、部屋を見た瞬間に「汚いなあ」と興ざめしたりもするのでしょう。そこは見学前から覚悟しておくことが大事かもしれません。

ともあれ、中古はリフォームが不可欠になります。しかし、リノベーションしようなどと大掛かりなリフォームは考えない方がいいでしょう。金額が大き過ぎるからです。度々重なる打ち合わせに時間も取られるし、費やすエネルギーも半端ではありません。

ようやく満足するプランができて工事に入っても、完成したときの失望感が大きいことも多いのです。

 

PC上で完成イメージを瞬間的に映し出すシステムもありますが、実物とのギャップは小さくありません。お金と時間をかけた割には出来上がりに不満を漏らす人が多いのです。

 

筆者のお勧めは「プチ・リフォーム」です。例えば、入居前はガスコンロとトイレだけ新品に交換し、壁紙もトイレの1面だけ、少し欲張っても玄関ホールの壁にボーダーの木パネルを張り付ける程度にするなど、最小限に留めることです。

1年経ったら今度は寝室の壁紙を高級感のある布クロスにする、3年目はリビングの一角にミセスカウンターを取り付けるといった、分割リフォームを計画するのです。

 

程度問題ですが、きれいに使ってきたお宅をときどき見ます。リフォームが要らないと思える物件も少なくないようです。

しかし、築20年などになると、さすがに部分的なリフォームは必須です。

 

リクルート社の調査データなどを覗くと、年数に比例して費用がかさむようですが、それを一遍にやってしまうのではなく、発想を換えるのが筆者のお勧めです。すなわち、購入時は最小限に抑え、後の楽しみに残すことです。マイホームの楽しみは、賃貸では許されない室内のお化粧や模様替えにもあるのですから。

 

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