どんな先進マンションでもやがては陳腐化する

●進化し続けるマンション
３年くらい前だったか、「マンションの企画は進歩がないなあ」と感じることがありました。ところが、最近は再び先進機能が装備されたものや、高い付加価値を持つマンションが増え始めたという印象があります。
例えば、3.11地震の影響が大きい「防災マンション」「耐震性の高いマンション」がその代表例ですし、原発事故でクローズアップされることとなった「節電マンション・創エネマンション」も目立ちます。
ソフト面では、24時間365日いつでも各階でゴミ出しができるマンションや、新聞の各戸配達サービスなどが目新しい例です。
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●手振りで家電を動かせる家
これは、2012年6月27日の日経新聞の記事です。ゲーム機に搭載している画像認識などの技術を応用して、人の動きや声を感知し、リモコンがなくても照明をつけたり、テレビのチャンネルを変えたり、あるいはカーテンの開け閉めもできる。そんな家が間もなく誕生するのだとか。
体の自由がきかなくなった高齢者だけでなく、多忙な主婦にも歓迎されるであろう（？）この装置は、マイクロソフト社が三井ホームと提携し、世界で初めて日本で実証実験をするのだそうです。
新聞によれば、装置の価格は2万円前後と安いそうで、実用化は3年先だそうですから、近い将来マンションにも装備されそうです。

このニュースを見て思いました。
かつてはＳＦの世界でしかなかった便利な装置を具備した住まいが、これからはどんどん現実のものになるのかもしれないと。
声で命令するだけで食事を準備し運んでくれる装置、「掃除しておいて」と言えば勝手に綺麗になる浴室、介護してくれる人がいなくても寝起きや入浴が可能な家、洗って乾燥するだけでなく所定の場所に納めてくれる食器洗浄格納機など。

●古い家は新しい家に劣る。だが・・・
いずれにせよ、今後も停滞したり再び動き出したりしながら、マンションは進化を続けていくのでしょう。
とすると、古いマンションは時代遅れになってしまいます。モデルルームで見せられる「進化したマンション」には、その目新しさや便利さに感動することでしょう。中古マンションは、見劣りするに違いありません。

言い換えれば、先進的だったマンションも、時間が立てば陳腐化する宿命にあるのです。
中には、古さを感じさせない設備を有する中古マンションもあるかもしれませんが、それでもいつかは陳腐化するに落ちるに違いありません。

●大切なのは何か？
陳腐化したマンションの価値は、当然ながら便利なハイテク設備付きの新築マンションン比べて値打ちが落ちることになります。これは仕方のないことです。そこで、マンションの変わらぬ価値は何かという命題に帰着します。
結論を先に言ってしまうと、たとえハイテク設備がない、最近急速に増えつつある「太陽光発電装置」がない、いざというときの「防災用品の備蓄」もないといったマンションでも、立地条件に優れたものや、耐震性と耐久性に優れ、あるいは可変性（間仕切り変更を含むリフォームのしやすさ）といった基本構造に関するもの、さらには維持管理の体制が優れたものなどが優先するということになります。

時代の空気を反映した先進マンションも結構ですが、バス便の立地であったり、維持管理・メンテナンスに不安が残ったりするマンションは、やはり選択対象から外すべきものです。

●古くなるほどに値打ちが出るマンション
蛇足になりますが、建物が古くなっても味が出てくる、そんなマンションがあることを思い出しましょう。今日は詳細を割愛しますが、敷地内の樹木が生長したことで緑の多い、美しいマンションというのがありますし、入居者のモラルが高いために管理状態がとても良いマンション、すなわち美しいマンションという例もあります。
マンションの価値は美しさだと思うのです。美しさは、デザイン性の高さなども加わるでしょう。
美しいマンションは、設備の古さ、あるいは無いことを補ってお釣りが来る価値を生み出します。
目先のハイテクや流行に囚われないマンション選びを心掛けたいですね。

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