最近おかしい新築マンションの値付け
- 2014.11.30
- マンションの資産価値
ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています
「価格表を見せない」、「契約済みの住戸は価格を伏せておく」のは、マンション営業の常套手段ですが、最近その究極の狙いを垣間見ることになった事例を紹介します。
●分割販売(期分け販売)と価格
ご承知のように、マンション販売は全戸数をいっぺんに売り出さず、何回かに分けて販売します。これを分割販売(分譲)または期分け販売(分譲)と呼びます。
1回当たりの売り出し戸数は売主の任意で、状況を見て決定します。状況とは買い手の集まり具合、反響度合のことです。
買い手を集めるためには、ホームページを開設するだけでは足らないので、各種の広告を併用します。新聞広告、専門雑誌広告、新聞折り込みチラシ、看板、テレビCM、ダイレクトメールなどですね。
広告のレスポンスは、初めは資料請求者を募る形とし、、やがてモデルルームを公開して関心客の動員を図ります。
そして、モデルルーム見学者に営業マンを応対させ、関心の強さ、購買意欲の強さ、或いは購買力などを観察します。
営業マンの経験則から、この客は有望であるとか、見込み度はBランクであるといった分類をします。そうして、全体で何戸くらいは売れそうであるといった「票読み」をしていきます。
この票読みによって売り出し戸数を決定するのです。
この過程で、価格は「予定」と断りつつ一部の住戸のみ開示します。予算と価格のかい離が大きければ意欲は高くても有望客とはならないからです。
反応がよければ、つまり売り出したい戸数に買いたい客の数がたちまち達する状況と踏んだ時は、開示する住戸数を増やします。反対に伸び悩み状況にあると見た場合は、営業に力を入れます。例外的には、開示する戸数を途中で減らすこともあります。
いずれにせよ、開示した価格はあくまで予定なので売り出しまでには変更になることもあります。
ただし、一般的には微調整の範囲であり、かつ価格を下げることはあっても上げることは少ないのです。
条件の良くない位置にある住戸は当然安く設定するのですが、売り出し前の商談の中から有望な客が全く浮かんで来ないというとき、すなわち不人気住戸と認定されるときは、価格をもう一段下げます。
また、同じ階でも角住戸と中住戸の差や、方位の差(日当たり・眺望の差)などで人気の偏りが生じます。営業マンは経験から、このくらいの差が適正であると知っていますが、複数の要素が重なりあうとピタリと当てることは困難なので、予定価格表は売り出しまでに微調整されるのです。
●売れ行きが良くても値上げしないのが普通
分割分譲方式では、売り出し住戸のみの価格を開示し、未発売住戸は「次期分譲」という表示に留めておきます。
現在売り出し中の住戸の中に検討したいものがなく、或いは買いたい人が複数あって抽選になるかもしれないから、次期分譲住戸の中で検討したいという場合、買い手にとって気になるのは価格です。
このようなとき、同じ面積で階がひとつ上がるだけなら、およその価格が買い手には分かります。「1階上がるごとに〇〇万円の差なのだから」という推定をするわけです。
面積が少し違うなら単価を計算して推定する人もあるでしょう。ということは、売主も蓋をあけたとき全く予想外の価格にすることは難しくなります。
実は、「まだ決まっていませんので」と断るものの、本当は社内的な決定は済んでいるのが普通です。
全住戸の価格を、階、眺望、日当たり、その他の条件を勘案しながらバランスよく価格表を作成します。 全住戸の価格の合計が売り上げになるわけですから、それで利益も自動的に決まって行きます。
従って、微調整するにしても売り上げの減少は避けなければなりません。そこで、予定価格表を表示するときは少しずつ高めにしておく措置も必要になるのです。
しかし、第1期で売り出し価格が確定してしまうと、2期以降の価格は1期価格を基準にバランスを取らなければならず、結局のところ大きな価格変更は起こりにくい(しにくい)のです。
買い手の反応が良く、販売が順調に進みそうなとき、売主は価格を上げないのでしょうか? この質問はときどき届きますが、以上の説明で答えがおわかり頂けることと思います。
売れ行きが良いときは、価格を上げるのではなく、1回当たりの売り出し戸数を増やすという策を講じるのが普通です。
●売れ行きの良さから値上げを断行した業者
ところが、最近ごく一部の業者が値上げの挙に踏み出たという情報が入って来ました。
ある都区内の物件ですが、同じ間取りで第1期の価格と第2期の価格で500万円も違うというので驚きました。
勿論、階は3階ほど違うのですが、第1期の価格表を見ると1階ごと80万円の差なので違っても240~250万円になるのが常識だからです。
第1期で確定価格表を受け取った買い手のAさんは抽選に外れてしまい、第2期の類似タイプを検討したそうですが、価格差が大きく予算も厳しいので購入を断念したそうです。その過程で感じた憤りが筆者にも伝わってきました。
●値上げ前に買うか見送るべきかの判断は?
さて、販売途中で値上げするような物件は、人気がある証拠とも言えますが、そのような仕打ちを受けても購入に踏み切るべきでしょうか?
予算を超えてしまったので断念するほかないという人もあるでしょうが、人気物件は多少の無理をしても買おうとする心理に支配されがちです。
人気の物件は資産価値も高く、かつリセールバリューにも期待をかけられるものであるのは確かです。
しかし、ここで誤ってはいけないポイントがあります。見過ごしてはならないポイントと言い換えましょう。それは、価格が価値に見合っているかどうかです。
価値以上の高値になっている物件も少なくありません。マンション価格の高い・安いを測る物差しは見つけにくく、一般の買い手が判断に窮するのは確かですが、高値掴みをしてしまう危険が高いのです。そのような物件は、期待したリセールバリューが得られません。
調査によれば、売り出した年度によってリセールバリューが大きく異なっています。
ある年の販売物件の10年後の中古価格がいくらであったかを調べると、購入価格から平均10%上昇した年と、逆に10%値下がりした年があるのです。
今は、下手すると高値掴みをさせられてしまいそうなときです。そんな中で、人気に便乗して途中で値上げするような物件は、とりわけ気をつけなければなりません。
数に限りのある不動産ゆえに、人気物件では冷静さを失いがちです。まして、目の前で「次期では値上げするかもしれない」などと聞くと、慌てて「その前に」と考えます。
しかし、値上げ前の価格それ自体が高値掴みかもしれないことに気付かなければなりません。
買いたい・欲しいと思ったマンションが、「この価格で買えるのは今回のみですよ」などというトークは、一般商品の販売でもよく登場しますが、気を付けたい場面です。
・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。
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