想定外のことが起きる世のマイホーム購入
- 2015.07.10
- マンション市場
ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
マンション価格が高騰しています。 それでも買いたい事情、買わなければならない事情にある家庭にとっては本当に悩ましいときです。高値掴みをしてしまうかもしれない。リセールのときに大きな損失をこうむるかもしれない。反対に、この物件なら高くても将来性が高いので、きっと良い値で売れるだろう。
金利は史上最低の水準にある。当分変わらないから最も変動金利を利用しよう。低金利は、多額の借り入れを可能にし購買力を押し上げてくれる。高くなっても手が届いてしまう。だけど、こんなに多額の借り入れをして本当に大丈夫だろうか等々。
様々な思惑を持ちながら購入する人もあることでしょう。しかし、計画や思惑は、根底から覆ることもある。それが世の中というものかもしれません。
●まさかが起きる。それが世の中だ
この3日ほど、株価が乱高下しました。7月8日に日経平均は622円も下げ、翌9日には117円高となりました。
主な原因は、中国・上海市場の大幅な上げ下げにあったようです。
中国で何があったかは別として、他国の異常な投資市場や景況などが国境を越えて我が国へ影響を及ぼすという構図は、かつて「アメリカがくしゃみをすると日本が風邪をひく」と言われたことがありましたが、今、日本経済に影響を与えるのは米国だけでなく中国もという時代になったようです。
ギリシャの債務がデフォルトになるかならないかの問題も、連日EU各国間で協議が続いでいます。日本にはあまり関係ないように見えますが、それで済むという保証もないようです。
2008年に起きたリーマンショックのときも、当初は日本への影響は小さいと言われていました。しかし、影響は世界中に広がり、世界金融危機、世界同時不況と言われる危機的な状況に発展、日本も例外ではなかったのです。
このとき、マンション業界の中堅デベロッパーが多数破たんしました。6~7年前のことです。
今日の世界は国境があってないようなもの、私たちの知らない場所で起きた小さな事件が世界に飛び火し大火となる時代なのでしょう。
「1990年代はまさかの時代だ」と語ったのは堺屋太一さんでした。ベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツがひとつになったこと、冷戦が終わったことなどを指して表したのでした。
2000年代も、全く予想だにしなかった事件や変動が起こって世間にショックを与えました。例を挙げればキリはないですが、銀行に預けた預金も安全ではなく、保障されるのは1000万円までとなりました。
護送船団と言われ銀行はつぶれないと言われていたのに、その安全神話は崩れ、日本中の銀行がたくさん破たんして行った過程で決められた制度です。
大手都市銀行さえも多数消滅し、生き残りのために合併も多数行われました。東京三菱UFJ銀行という長い名のメガバンクは合併の結果です。
1980年代に起きたバブル経済の勃興、1990年代初めの崩壊も、そのころは予想外のできごとだったのです。株価は1989年12月末に39,000円弱と高値をつけ、これがピークでした。
暴落して底を打ったときの株価は7000円台だったと記憶しています。その後、上下動を繰り返しながらも持ち直し、25年後の今日は20,000円弱です。
このような大変動を誰が予想できたでしょうか?
●不動産価格の変動と土地神話の崩壊
不動産バブルにも目を向けてみましょう。
かつて、土地を持っていれば必ず儲かると信じられていました。
企業においては、購入額が簿価として計上され、その後の値上がりによって「含み益」をもたらされる。膨らんだ不動産価格を担保にすれば簡単に銀行融資を受けられる。つまり、土地は錬金術に欠かせない、いわば打ち出の小槌になり得ました。
景気が悪く売り上げが減ったとき、足りなくなる現金収入を借入金で賄うことが可能になるのは、土地のおかげであったのです。
企業は、いざというときは土地が会社を救ってくれるから、余力のあるときはとにかく土地を買おうと動きました。 買った土地には、本社社屋を建設したり、社宅を建てたりしたのです。
土地は買ったら持ち続け、簿価と時価との差が生み出す含み益を資金調達に活用することが可能なので、企業が土地を買い占めます。
バブル期、余力が企業にもたらされ、土地の買い占めに拍車をかけました。「買うから上がる、上がるから買う」という循環を生んで不動産バブルが勃発したのです。
その後、政府は暴騰とか狂騰と表現された異常な地価の高騰を抑えるため、土地取引に届け出制もしくは許可制を導入しました。
その効果はてきめんで、やがて地価は暴落し、バブルは崩壊しました。将に土地神話の崩壊でもあったのです。
●マイホームの値上がり・値下がり
25年以上も前(1988年以前)にマンションを買った人の多くは、大きな値上がりを体験しました。タイミングや購入した物件・場所によって差はあるものの、短期間に我が家が2倍、3倍になったことで驚いたものです。
しかし、現に住んでいる家の値段が何倍になろうと、何の得もありませんでした。むしろ、固定資産税がアップしたことで苦々しく思った人もあったはずです。
一方、売却した人は、高値に驚くとともに手にした金額に喜び一杯だったことでしょう。ただし、その資金でもっと良い住まいを手に入れようとすると、郊外のまだ値上がりの波が及んでいない街へ行くほかありませんでした。
売却した場所の近くは同じように値上がりしていたため、売却して得た金銭に(新たなローンなどで)プラスしなければランクアップした家は買えなかったからです。
反対に、バブル期に高額な住まいを購入した人は、その後の極端な値下がりを体験することとなりました。
何かの事情で売りたいとなったとき、現実の厳しさにぶつかりました。売却して得る金銭では住宅ローンの残債を清算できないことを知ったからです。いわゆる追い銭が必須でした。
結局、売るに売れず、持ち続けるしかなかったのです。
●値下がりしても売らなければ損失は確定しない
このようなことを知ると、高値が続く最近のマンションを購入することをためらう人も出て来るかもしれません。
ポストバブル期には売却を断念した人も多かったはずですが、これは、含み損を抱えてしまったものの、損失が確定しないで済んだということを意味します。
つまり、値下がりしても、売却しなければ損は表面化しないことになるのです。
本ブログで度々度々述べて来たのは、「高値掴みに注意」です。しかし、今は大なり小なり、どれを買っても高値掴みになる懸念が拡大しています。
結果的に「高値掴み」をしてしまった人は、どう考えたらいいのでしょうか?
もうお分かりのように、個人の場合、売却しなければ損も得もないのです。値下がりしても気にすることない。そう割り切れれば気楽なものです。金利変動リスクだけに対処し、あるいは分不相応な借り入れをしなければ問題はありません。
住み替えの必要が生じたときも、転居先は賃貸マンションでしばらく我慢し、自宅を賃貸して保有をし続ければいいのです。
・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。
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