欠点の大きなマンション。価格が安ければ“買い”か
- 2016.03.05
- マンション購入アドバイス
ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
マンション全体としては、悪くない物件があります。しかしながら、その中に欠陥を抱えた特殊な住戸があります。例えば、地下住戸や前の建物と接近し過ぎている住戸、高速道路の足げたが目の前にそびえる住戸、ゴミ置き場のそばの住戸などです。
これらの弱点を抱える住戸は、例外なく他の住戸より価格が安く設定されています。
「価格が安いのだから我慢しなさい」というのが売り手の論理です。買い手から見ても、確かに条件は悪いが、これだけ安ければ妥協するべき住戸なのかもしれません。
しかし、そう感じる住戸であっても、できたら避けた方が良いというお話をしたいと思います。
●価格が安い住戸は目玉商品としてPRされる
ご存知のように、マンション広告の目的は顧客動員にあります。「モデルルームを見に来て下さい」という売り手のアピールです。
買い手が関心を最も関心を持つ対象は、「場所(立地条件)」です。 マンションの広告であること、そして、そのマンションがとても立派な建物であることを完成予想図によって訴求するのですが、買い手がそれを見て真っ先に思うことは、「おや、場所はどこだろう」です。そして、広告(チラシや新聞刷り込み)の中から地図を探すのです。
次には、「間取り」に目をやります。その次は「価格」です。
価格は予告広告の段階では伏せていますから、繋ぎ止めの策が必要になります。
バリエーションが豊富に用意された間取りや「眺望」の良さをアピールする写真、豪華なエントランス周りの完成予想図、を見て興味をなくす人は少ないでしょうが、「場所はもうひとつだなあ」と感じた人は興味をなくしてしまいます。
建物プランが優れていても、立地条件が自分にとって魅力のないものであれば、興味を失う買い手は多いものです。
そこで、次の段階で採る作戦は「価格訴求」です。場所はもうひとつと感じた人であっても、全くの埒外(らちがい)でなければ、価格の安さには強い反応を示すはずです。
価格の安さは、当然ながら「3LDKが〇〇万円より」などのキャッチコピーを使います。つまり、同じ3LDKでも、あるいは同じ専有面積でも、そのうちの一番下の価格を広告では使います。
広告をときどき見ている人は、感覚的に「このエリアでは安い感じがする」と食指を動かすことになります。
売り手は、安さに釣られてやってきた客を見て「広告の効果」を実感し、ニンマリするというわけです。
ここまで何ら違法性もなく、普通の商法です。とにかく、先ずはモデルルームを見てもらう客をたくさん動員しようという狙いなのですから。
「今度の土日は来場に〇〇プレゼント。ただいま創業〇〇年キャンペーン実施中!」などの広告は別の業界でもよく見られる販売促進の定番です。
●目玉商品は欠陥商品か?
価格の安さに釣られてモデルルームに行くと、安い商品は何かしら問題があることを気づかされます。
食品なら「味は同じ形が悪い」や「賞味期限が迫っている」などの場合、消費者はこれを割り切って購入する人もありますが、マンションとなるとどうでしょうか?
そうです。「いくら安くてもこれじゃあねえ」と期待が一気にしぼんでしまうのです。
冒頭で述べたような欠点の目立つ住戸は、「安いから」では割り切れない場合が多いからです。
日当たりが悪い、見映えが悪い、見晴らしがない、プライバシーが損なわれそうだ、天井が低いといった悪条件を見聞きして、妥協の限度を超えていると感じた人は、途端に興味をなくし、別の住戸に目を移します。
そうして、「他は安くないけれど、買えないこともないし、来てみたら想像していたより場所は悪くない。それに何といってもモデルルームが素敵だったので前向きに検討することにした」となる例もあるわけです。これこそが売り手の狙いとするところでもあるのです。
格安の価格設定にも関わらず、条件の悪さから売れないまま推移したとしても、しばらくすれば妥協して買ってくれる買い手は必ず現れると売主は高をくくっています。彼らの経験値が、この条件でも価格をここまで落としたら売れるはずだと信じるからです。
つまり、欠陥商品とは考えていないわけです。基本的に、「ただでも要らない」ような粗悪な商品は造っていない自負があるからです。
家は快適性が重要ですが、「日当たりなんかなくてもいい、広さがあれば」と思う人、「条件が悪くても構わない。家賃を払うことを思えば毎月の負担が楽だから」などと考えて購入する人が現われるのは確かです。
●本当に安いと言えるのか?
新築マンションは全部の住戸を一斉に公開することはないものの、複数の価格を表示した「部分価格表」を見せてくれます。
この価格表には売主から見ると魔法の力があります。どういうことかと言えば、上下階、方位などによって価格の高い低いを比較できる役割を担い、買い手の目をそのマンションにくぎ付けする力を持つからです。
同じ面積・同じ間取りで、上階の5000万円に対し1階は4000万円などと表示されており、二つの比較だけなら、欠点のある1階住戸が「ここまで安いなら」と妥協の気分を買い手にもたらすのです。
人間には、AかBどちらがいいかと問われると第三の選択肢を忘れ、AかBのどちらかを選ぼうとする心理が働くと聞いたことがあります。第三の選択肢、つまり他のマンションのことですが、そうして、売りにくい条件の良くない住戸も売れて行くのです。
買った人は、条件の悪さに不満があっても、格安の値段という魅力との差し引きでは満足度が高いのです。
しかし、本当にお買い得なのでしょうか? そもそも比較相手の価格が高いのではないのか? ここに着目しなければなりません。
●お得だったかどうかが分かるのは売却時
安くした特定住戸が、条件の良い住戸との価格差を価格表の上で比較することによって、いかに安いかを認識し、購買に至った買い手ですが、何年か先に中古マンションとして売り出すと状況は一変します。中古マンションとしての価格表は存在しないからです。
同じマンションの中に、同時期に売り出す人があって、例えば同じ面積で5000万円の部屋と4000万円の部屋が広告(WEBサイト)に同時掲載されれば、格安であることがたちまち分かるでしょうが、そのような都合の良い状況は滅多にあるものではありません。
検索するときの条件入力のひとつは「価格(予算)」です。〇〇万円以上、〇〇万円以下と入力するはずです。
すると、条件の良くない物件が上記レンジの中にある場合、複数の物件とともにヒット、それらの比較では「駅に近いのに安い」とか、「築年数の割に安い」、「間取りも悪くない」などと検討物件の中に残るかもしれません。
そうして内覧を希望し、現地見学の運びとなります。ところが、実際に物件を見ると失望します。
「そうか安い理由はこれだったか」と価格の安さに納得しつつも、購買意欲が湧かずにその場を離れることになるのです。
安さの度合いを明快に示す「価格表」のような魔法の道具がないからです。
売主は、「元々安く買ったので、売り出し価格もそれなりに安くした。だから間違いなくお買い得なはず」と、自分が新築時に心を動かしたと同じような買い手の反応を期待したとしても、次の買い手は期待に答えてくれません。
比較対象となるものが示されないので、安いようではあるが、どれだけ安いかは分からないからです。
こうして、内覧希望者が現れては消え、消えては現れを繰り返して、中々買い手を見つけられない状態が続きます。売り出し価格は、仲介業者のススメもあって一度ならず下げます。値下げをするたびに内覧希望者が増え、50人を超えます。それでも「価格交渉」を申し入れて来る買い手はなく、とうとう価格は当初の設定から500万円も下がってしまったなどという例は少なくないのです。
「同じ面積の住戸より500万円も安かったので、このくらい安ければ悪条件も帳消しにしてくれるだろう」や、「予算が少なかったので目をつぶって選んだ部屋だったが・・・」などと考え買った我が家が、実は高い買い物であったことを知るはめになるのです。
このような状態を諺で表すと「安物買いの銭失い」というのでしょう。
条件が特に悪い物件は、少し安いくらいでは手を出さない方がいいのですが、「少しくらい」ではなく、「かなり割安」と信じた末の失敗です。
どんなマンション、どんな部屋でも何かしら不満が残るのが現実です。しかしながら、多くは許容範囲にあるのが普通です。選択しても大きな間違いには至らないものです。
気を付けたいのは格安住戸、もしくは大きな値引き販売中の住戸です。売れないのは、欠点を補ってお釣りが来るほど割安でない証拠です。売れ残ったときの「値下げ」住戸も同様で、価格表を見れば「割安」と分かります。
しかし、価格を下げたら買ってもよいかと問われれば、筆者は将来価格に関して悲観的な答えを返すでしょう。「マンション選びの法則12か条」としてご紹介した記事を覚えておいででしょうか?
「高い物は高く、安い物はより安く」という一条があります。その中では、都心物件と郊外物件という比較例で解説しました。復唱しておきます。
「安く買えば、それだけお得になる」この一見正しそうな論理は反対の結果になることがあるのです。
言うまでもなく、都心のマンションは郊外マンションより高いものです。
東京郊外の各都市にも、それぞれに働く場所があり、そこへ通勤する人もあるわけですが、首都圏住民の大多数は東京都心の職場に通勤しています。毎朝の通勤ラッシュがそれを象徴しています。
都心の職場に通う人は、できることなら自転車で通える程度か、電車でも二駅か三駅程度の近くに住まいを構えたいと思っています。
しかし、そう考える人が多いために都心の住宅価格(売買・賃貸)はうなぎ上りに高くなってしまい、安い住宅を求めて郊外へ移ることとなりました。正確には押し出されたのです。高度経済成長、バブル経済期のことです。
バブル崩壊後、都心への回帰が幾分進みましたが、都心のマンションは郊外に比べて相変わらずの高値で、その傾向に大きな変化はありません。
都心の土地は高く、そこに建てられるマンションの価格は安くなりませんし、マンションに適した土地の売り物も多くありません。
少ない売地の取得競争は常に激しく、それが土地の価格を吊り上げる結果となるのです。
開発できる新築マンションが少なければ、中古物件にも人気が集まります。
こうして都心のマンションは、新築も高く、中古も旺盛な需要に支えられて価格は強含みとなるのです。つまり、都心のマンションは中古になっても値下がりしにくいことになります。
これに対し、郊外マンションは土地需要が相対的に少ないので、安い価格で供給ができます。中古マンションも同様で、都心ほどの需要がないので、価格は常に弱含みとなります。
都心の新築マンションの価格を100とし、郊外の新築マンションを70とします。これが中古になったとき、都心は80くらいの価格を形成しているとき、郊外の中古は40くらいに下がってしまうのです。
言い換えると、「高い物件は高いまま、安い物件は“より”安くなる」。これが法則のひとつです。
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筆者が提供する「物件評価サービス」で適正な価格と判定できたとしても、悪条件のマンション、悪条件の住戸は「将来価格の予測」においては厳しい結果になる場合が多いのです。
それでも購入をしたいなら、将来価格に関しては、ある程度の覚悟を持たれるよう進言することにしています。
・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。
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