第585回 家屋を棄てる人の心

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全国各地で空き家が問題になっています。所有者はどこへ行ったのでしょうか?相続する相手さえいないのでしょうか?

老朽化が進み、今にも倒壊しそうな家屋は、危険があるということから行政が公金を使って解体し更地にしたというニュースもたまに飛び込んで来ます。

持ち主は存命なのか他界したのか、他界したとして相続人はなぜ放置するのでしょう。

誰も住まず、放置されて廃屋となると、木造住宅は朽ち果てます。人口減少が進むトレンドの中で、こんな家が全国で激増する世の中になってしまいました。

これは地方の過疎地だけの話ではなく、首都圏でも起きているのだそうです。

放置家屋・空き家問題は、一戸建てだけのことでしょうか?少なくとも放置による危険な粗大ごみ扱いにされているのは一戸建てですが、空き家問題はマンションにも迫っていると思えてなりません。

買ったマンションが要らなくなるという状態は、本人も家族も、子供たちも誰も欲しくないということですが、それなら他人に売るか貸せばいいではありませんか?マンションなら大体において山の中ではなく、都会にあるはずだし、生活の便も悪くないに違いない。貸せば毎月お小遣い程度の賃料が得られるはずです。副業が面倒と考える人は売却すれば二束三文でもいくらかの一時金を受け取れることでしょう。

事情を知らない私たちは、こんなふうに考えがちです。

しかし、実態は全く異なる姿になっています。誰も買ってくれないマンション。保有すれば管理費ばかりがかかる。少ないが固定資産税も課税される。そして、誰も借りてくれない。安い賃料設定でも借りてくれる人がいないのです。たまに借り手がついても空き家期間の方が長く、収支は常に赤字で持て余すだけのマンション。

借り手がいないマンションはなら、買ってくれる人はもっといない。そんなマンションがこれからは増えるかもしれない。恐ろしい話ですが、あと30年もしたら、首都圏でも話題になる。最近、筆者は考えたくない、こんな想像をしています。

話を分かりやすくするために「越後湯沢駅」の周囲に林立するリゾートマンションを比喩として取り上げたいと思います。

リゾートマンションがブームだった時がありました。バブル期びことです。筆者の先輩でマンション会社を経営していた人が、都区内でマンション開発ができないので(土地が暴騰したため)、仕方なくリゾートマンションにチャレンジしたら瞬く間に売れたことで気を良くし、続けざまに開発して悦に入っていたことがありました。偶然、上野駅で再開し、「いや~売れるねえ」と語ったことが今も忘れられません。

何故あの頃リゾートマンションがブームになったかの分析はさておき、乱開発された越後湯沢のマンションは、今どんなことになっているのでしょうか?越後湯沢は、ご存知スキー場のある街です。あの頃はスキーも冬のレジャーとして大流行したと記憶しています。

三井不動産が屋内スキー場の「ザウルス」を船橋に建設したのも、そのころだったと思います。

別荘・リゾートマンションを専門に扱う仲介業者のサイトを覗いてみると、2LDK 101.48㎡(築26年)が1500万円という比較的高額な物件もありますが、多くは100万円未満、60㎡が90万円で購入可能のようです。20㎡台のワンルームになると10万円、15万円といった売り物件がずらりと並んでいます。管理費等がワンルームでも15,000~20,000円とあります。

 
何故こんなに安いのか、言うまでもありませんね。今でも冬になればスキーを楽しむ人は少なくないのでしょうが、ひと頃のブームは去ってしまいました。ホテルに連泊するよりマンションを借りた方が安上がりだと考える人もあるのかもしれませんが、ハワイのコンドミニアムなら一年を通して需要はあるでしょうが、スキーは年間に3か月か4か月でしょう。

もちろん予約の手続きが面倒だし、友人たちにも自由に使って欲しいから1室買ってしまおう、あるいは法人が福利厚生のために保養所として所有する、そんな需要があるのかもしれません。

しかし、その数は高が知れています。欲しい人は好みの物件なら高くても買うかもしれませんが、タダでも要らない人も多いはずです。

つまり、買いたい人(需要)が極端に少ない。それがリゾートマンションの実態なのです。東京に仕事の拠点を持ち、週末に帰る家を熱海や伊豆に持っているという富裕層もありますが、日本人のライフスタイルとして定着したわけではありません。

需要がなければ、品物に値段はつきません。筆者の仲人さんが昔、別荘地を買いましたが、建物は立てず仕舞いでなくなってしまいました。別荘で悠々自適の暮らしあおするのが夢だったそうですが、最後まで仕事に熱中していたそうです。

首都圏でも、誰も買ってくれないマンションが既に現われつつあることをご存知でしょうか? その場所を具体的にここでで明らかにすることは控えますが、越後湯沢のリゾートマンションよりはマシですが、3LDKが800万円とか900万円といった低価格で流通市場に出されているのです。

買い手が付かないから価格がどんどん下がってしまうのです。それでも売れない。所有者は住宅ローンを完済しているのでしょうね。残っていたら、売れば預貯金からお金が出て行くのですから、それはきっと大きな抵抗があるに違いなく、そこまでは下げたくないと頑張るからです。

購入時が新築だったか、中古で安く買ったか、知る由もないのですが、仮に2000万円で買った家が1000万円になっても、長い間に出て行った金というものは、もともとなかったものと思うことができるのだと、心理学者が分析しています。

売ったら、少ないながら現金が入ってきて、それをあてにして次の家を買うとか何かの資金にしようと目論んでいれば別ですが、新たな負担にならなければいいのだそうです。

500万円の車をローンで買って、中古車として100万円で売るようなことになっても、乗って楽しんだ時間を思えば損とは考えないのでしょうし、50万円の高級ハンドバッグをインターネットのオークションにかけたら20万円で売れたと喜んでいる女性もいます。マンションでも。「もらったものだから」とか、「売れたら儲けものくらいに思っていたから」などという感覚で買い手を待っているのでしょうか?

人口減少がマンション需要を減らすことは間違いありません。東京の人口予測では2025年から減少のに転じるのだそうです。しかし、人口減少がもたらす弊害を実感できるまでは時間がまだあるように思います。

ただ、その見方はあくまで全体的なものです。重要なことは地域的な格差が生まれるということです。

首都圏郊外、東京都でも郊外の都市では早い段階で人口減少に転じて行くでしょう。「消滅都市レポート」などという恐ろしい予測が数年前に発表され、なぜか豊島区もその仲間にありました。まさかとは思いましたが、推計の手法ではそうなるのでしょう。

ともあれ、空き家問題は一戸建てだけの問題ではなくマンションにも忍び寄りつつあるのです。長い間に、いつの間にか家を買いたい人がいなくなって中古マンションは買い手がつかない。何とか売れたが、ひどい値段だったと嘆くことにならないよう、長期的視点を頭の片隅に置きながら購入先を決めるようにしなければなりません。

筆者も郊外の街に家があって家族が住んでいますが、凝って建てた一戸建てなので、かけた金を思えば100万円でも買い手がつかないとは思いたくはないのですが、現実は買い手を見つけるのは至難の業です。かろうじて近くに住む親せきがあるので、いずれは誰かに贈与しようと覚悟を決めているところです。

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