第598回 2017年(1~11月)の新築・中古マンション市場動向

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論を展開しております。資産価値を重んじる方のための購入のハウツーをお届けするもので、お気に障ることもあろうかと思いますが、満点の家はないと思っていただき、失礼はお許し下さい。

 

5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

 

 

今年を占うために、先ず昨年の傾向を分析しなければなりません。年間のデータはまだそろいませんが、11月までのデータから可能な範囲で分析して行くことにします。

展望は月半ば以降に改めてお送りします。

 

●新築マンションの市場動向

先ず、新築市場を見ましょう。

*発売戸数

単月の発売戸数は3366戸と10月までの月平均2605戸を大きく上回りました。

1-11月の累計では 29,418戸となり、前年28,765戸より2.3%増となりました。

年間合計でも若干ながら昨年を上回りそうですが、水準は低いと言えます。

 

ちなみに、過去5年は以下のようになっています。2012年:45,602戸、2013年:56,478戸、2014年:44,913戸、2015年:40,449戸、2016年:35,772戸(5年平均44,643戸

 

発売戸数が少ない理由の一面は、「売れない」にあります。ご存知の読者も多いと思いますが、新築マンションは売れそうな戸数だけ売り出す「分割販売」方式なので、100戸のマンションも工事が進んでいつでも売り出せる状況にありながら(商品在庫がありながら)発売に踏み切らないのです。

 

*契約率

11月の初月契約率は67.9%となった模様です。初月契約率とは、その月に新規発売した物件が月中に何%売れたかを示すもので、70%が好不調の分岐点とされます。

 

今年は、2016年同様、70%を割り込む月が何回もあります。ちなみに、1月からの契約率は次のようになっています。

61.6%、68.4%、66.2%、66.3%、72.2%(5月)、67.2%、71.9%(7月)、68.2%、64.9%、60.7%、67.9%

 

 

*価格

1戸平均価格は5551万円、坪単価は@275.6万円となりました。

坪単価は前年同月比で11.5%の大幅アップとなっています。前年同月比マイナスになったのは3月だけで、2016年に頭打ちの傾向を見せたものの(前年比1.8%アップ)、2017年は再び値上がりの傾向が強くなりました。12月のデータは1月半ばにならないと判明しませんが、年間で5%以上は上がりそうです。

 

契約率が良くないのに、まだ価格は下げ渋っています。これが現実です。

供給戸数が少ないので、購買力の高い需要層はまだ十分にあるということでしょう。70%を割り込みながらも、時間の経過に連れては契約戸数を重ねて行き、何とか経営上の一定ラインを超えていくのかもしれません。

 

この低い契約率と販売戸数の少なさから見て、在庫は増える方向に向かうに違いなく、それを嫌って販売促進を図ろうとすれば値引きという策を採るしかないのですが、値引き後の価格は統計に表れません。

 

●中古マンション市場動向(東日本不動産流通機構)

次に中古市場も見て行きましょう。

*成約戸数

11 月の首都圏における中古マンション成約件数は、2,904 件と前年比で 2.7%減少し、10 月に続いて前年同月を下回ったようです。

 

※成約件数 (戸数)の前年同月比を 2017年1月以降を見ると、1月7.8% 2月▲2.2%、3月 3.6%、 4月▲4.0% 、5月▲0.6 %、6月8.6%、7月 3.6%、8月▲5.0%、9月 2.3%、10月▲-7.1%、11月▲2.7%と推移し、一進一退の印象です。顕著に売れ行きが悪化したとは言えないようです。

 

○東京都

11 月の東京都区部は 1,219 件と前年比で 3.8%減少し、10 月に続いて前年同月を下回った。

※年間を通して見ると、東京も一進一退という印象です。

 

○神奈川県

11 月の横浜・川崎市は 499 件と前年比で 7.1%減少し、10 月に続いて前年同月を下回った。

※年間を通して見ると、前年を下回る月が11月までに8回もあり、明らかに売れ行きが悪くなっています。

 

○埼玉県・千葉県

11 月の埼玉県は 314 件と前年比で 9.2%減少し、10 月に続いて前年同月を下回った。千葉県は 378 件と前年比で 4.7%増加し、4か月連続で前年同月を上回った。

※埼玉県は神奈川県ほどではないが悪化傾向が見えます。千葉県は顕著な変化が見られません。

 

*在庫件数

11 月は 44,994 件と前年比で 3.9%増加し、15 年 6 月から 30か月連続で前年同月を上回ったようです。

原因は、顕著な売れ行き悪化という現象はないので、新規登録件数(データ省略)が高水準にあるためと考えられます。

 

*成約価格(単価)

11 月の首都圏における中古マンション成約㎡単価は 50.2 万円/㎡(坪単価166万円)と前年比で 1.0%上昇し、13 年 1 月から 59か月連続で前年同月を上回った。

東京都区部と横浜・川崎市、埼玉県が前年比で上昇しています。

 

※価格が下がる兆候は表れていないということが裏付けられています。ただし、59か月(約5年)上がり続けているのですが、上昇率は低くなってきました。

ちなみに、2017年1月以降の前年同月比は次のように推移しています。

1月 5.4 %、2月4.6%、3月 3.2%、4月 8.4 %、5月5.4 %、6月3.8 %、7月4.5 %、8月5.9%、9月 3.3 %、10月3.3%、11月 1.0%となっています。

 

○東京都

11 月の東京都区部は 74.23 万円/㎡(坪単価245万円)と前年比で 3.1%上昇し、12 年 10 月から 62か月連続で前年同月を上回った。多摩は 38.47 万円/㎡と前年比で 3.1%下落し、10 月に続いて前年同月を下回った。

 

23区は全く下がる兆しがなく、まだまだ下がらないとさえ思わせる状況が続いています。

ちなみに、2017年1月以降の前年同月比の数字は次の通りです。

㎡単価   1月70万円、2月 71万円、3月71万円、4月74万円、5月72万円、6月 71万円、7月 72万円、8月 75万円、9月73万円、10月 72万円、11月74万円

前年同月比では 1月 2.3%、2月 5.4%、3月 1.4 %、4月8.2%、5月 5.1%、6月 1.2%、7月 3.7%、8月 8.4%、9月 4.3%、10月 3.8%、11月 3.1%

 

○神奈川県

11 月の横浜・川崎市は 45.4万円/㎡(坪単価150万円)と前年比で 1.0%上昇し、16 年 6 月から 18か月連続で前年同月を上回った。神奈川県他は 30.4 万円/㎡(坪単価100万円)で前年比マイナス 0.5%と、ほぼ横ばいながら 4か月連続で前年同月を下回った。

 

○埼玉県・千葉県

11 月の埼玉県は 29.4 万円/㎡(坪単価97万円)前年比プラス 0.9%と、ほぼ横ばいであった。千葉県は 26.7 万円/㎡(坪単価88万円)で前年比マイナス 0.3%と、ほぼ横ばいながら 10 月に続いて前年同月を下回った。

 

※取引件数の多い東京都や横浜・川崎といった中心部の価格が相変わらずのためか、全体で見たときの価格は横ばいでしたが、郊外部が下がり出し、いよいよ中心部も価格下落に動くのかと、期待感がにじみます。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

 

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