2016年のマンション(新築)市況を振り返る

このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

不動産経済研究所が1月19日に発表した2016年の首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)新築マンションデータによれば、発売戸数は前年比11.6%減の3万5772戸で、バブル崩壊後の1992年以来24年ぶりの低水準となった模様です。

所得が伸び悩む中、人手不足に伴う建築費の上昇でマンション価格が高騰した結果、需要が冷え込み、業者が発売を絞る動きが広がったためと考えられます。前年割れは3年連続となっています。

●新築マンションの供給が激減

10年前の2006年は74,463戸も新規供給がありましたが、その後は今回と同じで、価格高騰の影響で2007年:61,021戸、2008年:43,733戸と大きく減少しました。さらに、2008年秋のリーマンショックを契機に世界金融危機、世界同時不況が発生したため、2009年には、とうとう36,376戸と3年前の半分の水準へと激減してしまったのです。

2010年、2011年は4万4千戸台と回復傾向を見せました。2012年も45,602戸と同水準、そして、アベノミクスの効果もあって、2013年は久々の5万戸台(56478戸)に増加しましたが、2014年は再び44,913戸と減少し、2015年=40,449戸、そして2016年=35,772戸と大幅に減る事態となったのです。

同研究所は発売戸数が低水準にとどまった要因について「業者が人気の高い立地を厳選し、郊外で開発を手掛けない傾向にある」ためと分析。 また中古物件を改修する「リノベーション」の広がりで、「新築は選択肢の一つに過ぎなくなった」と指摘しています。

●価格高騰が発売戸数減の要因だ

それも間違いではないとは思いますが、根本の問題は価格の上がり過ぎにあると筆者は考えます。

 発売した月に契約が成立した物件の比率(初月契約率)は68.8%。好不調の目安とされる70%をリーマン・ショック後の09年以来7年ぶりに下回ったこと。ここが注目点です。

ご存知の読者も多いと思いますが、新築マンションのセールスプロモーションは、数か月前から、大規模マンションの場合は半年以上も前から予告広告を露出して関心のある客を募り、その後にモデルルームを公開して客と対面セールスを行います。

商談の中から、有望客が何人いるか、つまり買ってくれそうな客数、言い換えると売れそうな戸数をカウントします。選挙の当選議員数を読むようなものです。その読み作業を通して販売者は売り出し戸数を決めるのです。

500戸のマンションで、仮に現時点の票読みが300戸であれば、駆け込みの購入申込(登録)もあるので、少し多めの330戸くらいを売り出し戸数と定め、2週間後くらいに売り出しとします。

客の動員数(モデルルーム来訪数)が期待以下で、高々100戸しか売れないと読むしかない物件であれば、仕方ないので100戸か多くても110戸しか売り出しません。

売り出し戸数の何%が売り出した月の月末までに売れたかを「初月契約率」として、不動産研究所は集計していますが、売れそうな戸数しか売り出さないので、契約率は常に高水準になるはずです。

しかし、市況の悪いときは、買ってくれると読んでいた有望客が申込みに来なかったり、駆け込みを期待していた分が全くなかったりするものです。そうした期待外れが増加して契約率の低下となって表れるというわけです。

 売り出した戸数が全体の30%であれば、残り70%を第2期以降の売り出しで店頭に並べて売って行かなければなりません。しかし、先行した分が在庫で残っているので、新たな売り出しができません。計画では今月30%を発売し、来月20%を追加発売して年内に50%を売ってしまいたかったが、初回で半分残ったので、発売を2か月以上も先送りするしかないというわけです。

 これでお分かりのことと思いますが、売れ行きの悪化が供給戸数激減の原因なのです。

では、売れ行きの悪化はどうして起きたのでしょうか?そう、価格の急上昇です。

価格上昇が小さいうちは、住宅ローン金利の低下で吸収されてしまい、売れ行きに影響することはありません。
現に最近3~4年の金利低下はご存知の通りで、空前の低金利は返済負担額を増やすことなく大きな借り入れが可能となっています。

しかし、一定の上昇幅をを越えれば購入を断念する人が増えます。この3年間の価格の動きを坪単価で追ってみましょう。

2012年:213万円、2013年:230万円、2014年:235万円、2015年:257万円、2016年:262万円と上昇トレンドを続けて来ました。2016年価格は2012年比で23%も上がったのです。

20坪(66㎡)換算なら、2012年は4260万円だったわけですが、2016年は5240万円と1000万円も上昇しました。これだけ上昇すると、さすがに購買力との乖離が広がり、需要は後退を余儀なくされます。

4年間で23%も急騰したとはいえ、2016年のデータから変化の兆しも読み取れます。それは、ようやく価格が頭打ちになって来たらしいことです。

2016年1~6月は坪単価@270万円で、前年同期の246万円から+9.2%も上がりましたが、7月以降は上げ幅が小さくなり、年間の平均では@262万円で、2015年年間の@257万円から+1.8%と小幅な上昇に留まったのです。

価格の高い都心の供給が減ったことで首都圏全域の平均が下がっただけではないのかと一応疑ってみました。
すると、確かに23区は大きく減少(18,472戸から14,764戸へと前年比20%減)したので、この影響はあるのです。ブロック別の価格を前年比で比較してみました。

23区の2015年は坪単価@326万円、2016年は同@332万円で上昇率は1.8%です。この原因は、高級マンションの減少にあるようです。
億ション戸数は1688戸から1265戸に25%減となったことで、1戸当たりの価格も、坪単価も他のブロックより上昇率が緩やかになったのです。

同様に、東京市部が@205万円から@229万円に11.7%とアップ。神奈川県は@228万円から@235万円に11.6%アップ。埼玉県@191万円から@198万円で3.7%アップ。千葉県@170万円から@185万円に9.0%アップと全域で上昇しています。

こうしたデータを見ると、まだ価格上昇が止まった、止まりそうだとは言いきれません。

●場所の妥協をしない買い手が増えたらしい

ところで、「都心のマンションが買えないので、価格の安さを求めて郊外マンションを検討することにしました」――このような考え方に立つ人はどれほどあるのでしょうか?

これにピタリと答えてくれる調査データは今のところ見当たらないのですが、筆者の感触では、とても少ない気がしています。

昔は、価格が高くなるに伴って都心から郊外へとトコロテン方式に押し出されたものです。一戸建て希望者は、その最大の被害者でした。通勤2時間などという今では信じられない遠距離通勤を強いられました。郊外の中核都市に職場のあった人は、市内に住めず、さらに遠方へと追いやられたのです。

それと似た傾向は、現状では見えません。

安くても売れない郊外マンション。その理由と背景には、共働き世帯の増加が関係しているように思います。移転した先の近所で仕事を見つける人もあるかもしれませんが、その数は少なく、マンション購入前の職場を変えないという前提の上で、通勤時間を極力短くしたい人が圧倒的に多いのであろうと推測しています。

2回前のブログ「都心マンション・駅近マンションは2LDKがトレンド」に書いたことと大いに関連がある。筆者はそう思うのです。

●今後の価格動向は?

とすると、買い手にとって、今後の注目点は全域でいかに価格が下がるかにあります。この答えは改めて書きたいと思いますが、「高止まり」は確実と見ます。値下がりへの転換点もそう遠くないように思います。また、その幅は僅かに留まるでしょう。しかし、楽観はできません。建築費に落ち着きが見られるものの、マンション用地の価格が上がっているからです。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

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