2015年の新築マンション市場を総括する

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

●供給戸数

不動産経済研究所は2016年1月19日、新築マンション首都圏(1都3県)の2015年1年間の販売実績をプレス発表しました。

それによると、発売戸数は40,449戸と前年比10.0%の大幅減少となったようです。ピークは15年前の95,635戸だったので、6割近い少ない水準に落ち込んだ格好です。

ただし、最近5年間を見ると、2011年:44,499戸、2012年:45,602戸、2013年:56,478戸、2014年:44,913戸と、2013年を除いて40,000戸台で推移しているのです。

ピークは2000年でしたが、その後の数年間も85,000戸 前後の新規供給が行なわれていましたから、最近は半減状態が続いていることになります。

●価格の急騰

新築マンションが、それだけ需要が大幅に減退した原因はどこにあるのでしょうか?あるいは、需要があっても単に供給ができなかっただけなのか? としたら何故?  詳しい分析は改めてご紹介するつもりですが、ひとつの解は価格の上昇にありそうです。

不動産経済研究所のデータに戻りますが、昨年の価格(専有面積3.3㎡当たりの単価=坪単価)は、首都圏全体で@257.1万円になったと発表しています。これは、2014年比で9.6%も上昇しています。

ブロック別にも、23区が@325.7万円と前年比13%アップ、東京市部が@204.9万円(前年比9.6%アップ)、神奈川県が@227.7万円(同、13.1%アップ)、埼玉県が@190.7万円(同、6.2%アップ)、千葉県が@169.6万円(同、2.8%)となっており、全域で値上がりしました。

2008年に起きた世界金融危機(リーマンショック)による100年に一度の世界同時不況は、マンションの売れ行きにも影響を与え、その後の価格低下につながったとされましたが、筆者の分析では、2005年~2008年にかけて価格が急騰し、売れ行きの悪化をきたしていたので値下がりは必然だったということになるのです。

しかし、価格の下落が顕著だったのは23区だけで、他のブロックではさほどの下落は起きませんでした。「山高ければ谷深し」ではないのですが、値上がりカーブが大きかった都心が下落率も大きかったのです。

とはいえ、都心の下落も2004年(@221万円)以前に戻るようなことはなく、価格のピーク2007年~2008年の@280万円から2012年には早くも底を打ち、@264万円で止まってしまったのです。

そして、その後の再上昇は、2013年@285万円、2014年@288万円、2015年にはとうとう300万円越えの@325万円となりました。2012年比では、3年間で何と23%も上昇してしまいました。

念のため首都圏全体も検証しておきますが、ピークは2010年の@219万円、底が2012年の@213万円、2013年は@230万円、2014年@235万円、2015年 @257万円、2012年比で20.6%上昇と、23区だけの数値より緩やかながら同じトレンドを見せています。2008~2009年のピーク時@210万円前後からの上昇率も22%となっています。

新築価格の高騰は、中古マンションにも影響を与えています。つまり、中古もじりじりと値上がりを続けているのです。地域ごとに見ると、新築のようにどこもかしこもということでなく「まだら模様」という印象ですが、都心ほど値上り率が大と言えそうです。

●売れ行きに暗雲

価格上昇はリーマンショック前の様相に似て来ました。そのことは、前にも「暗雲垂れ込める」のタイトルで本ブログに書きましたが、売れ行き悪化の兆候を見せるようになって来たからです。

不動産経済研究所は「10月に発覚した横浜の傾斜マンション事件」の影響は軽微だったと解説していますが、月間契約率は9月以降、明らかに低下傾向を見せているのです。

9月以降、11月を除き、好調不調の分岐点と言われる70%を割り込んでいます。1~8月は一度も70%以下になることはなかったのですから、様変わりというほかありません。

価格が上がっても販売に影響は出ていないと強気に語る物件もある一方、値引き販売を余儀なくされている物件もあります。販売が二極化しているという意見を言う業界人もありますが、ひどい販売不振に陥っている物件はまだ少数です。

今後マンション市場はどのように推移して行くか、注視して行かなければなりませんが、価格の低下を金利の低下が吸収する側面もあるので、急速な販売不振マンションが続出することはないかもしれません。

付け加えると、新築の供給戸数が少ない状態が「品薄感」をもたらし続け、少ない中から購入候補物件を見つけたとき、買い手を大いに慌てさせる局面も出て来るのかもしれません。

品薄感は、勢い中古マンションも選択肢に加えざるを得ないと考える買い手をいっそう増やすことでしょう。

●品質の低下・バス便マンションも

新築マンションは、大手でさえもスペックを下げてコストカットに懸命な状況にあります。これ以上上がったら危険だと思っているのでしょう。少なくとも、都心の有名アドレスの物件以外は価格抑制に知恵を絞るっている様子も透けて見えるのです。

中古マンションの市場では、個人売主が強気に価格を設定して売り出す例が増えています。

都心の特定マンションは「ミニバブル」的な状況を見せ、他方では売れ残りマンション、あるいは品数が少ないためもあって、徒歩圏より価格の安い「バス便マンション」に人気が集まる傾向も見えます。

2015年1年間のマンション市場は年初に予想したように推移しましたが、思わぬ事態が起きたのは「横浜市の傾斜マンション事件」でした。10月下旬のことでした。しかし、その影響は筆者の予想より早く終息してしまった感もあります。

こうした新築・中古のマンション市場を鑑みるに、2016年のマンション選びはますます難しいなあと思わざるを得ないのです。

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