2012年・新築マンションのトレンドは?

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

今年の新築マンション市場は、どのように推移するでしょうか?概括しておきましょう。
1.新規供給戸数
首都圏は、前年より10%以上は増える可能性がありそうです。戸数にして50,000戸を超えることになりそうですが、2005年ごろの水準(約84,000戸)とは比較にならない少なさです。
首都圏以外は、前年並みと予想します。
2.マンション価格
マンション市況が大きく好転するとは考えにくいことから、建築物価、地価ともに分譲価格上昇の可能性は低いでしょう。
3.住宅ローン金利
グローバル経済の動きには予想もつかないことが起きる場合もありますが、長期金利、短期金利ともに急上昇する可能性は低いでしょう。また、金融機関同士の個人顧客争奪戦が激化し、金利の下押し圧力は高まっています。従って、ローン金利が上がる可能性は小さいと見てよさそうです。
4.住宅ローン控除
昨年中に購入した人は最高で400万円の控除を受けられたものが、今年は最高300万円に減少します。これは法律で既に決まっていたものです。
5.その他の税制
不動産取得税や印紙税、登録免許税の軽減措置は今年も継続されます。また、親子間の住宅資金贈与の大幅減税特例や固定資産税の減免などは昨年より拡充する方向で検討されています。
6.商品内容
ここまでの5項目には、大きな変化はなさそうな見通しですが、商品内容は大きく変わりそうです。

①高耐震・高耐久マンションが増加
東日本大震災以後のニーズの変化を受けて、業界がこぞって取り組んでいるのが耐震性です。免震構造や制震構造の物件が大幅に増える可能性があります。
また、長寿命マンションを目指して高強度コンクリートを使用する例も増えてきましたが、今年は加速するでしょう。
いずれも買い手には歓迎すべき現象になります。それでいて、業界各社の経営努力によってコスト上昇は抑えられ、大きく価格が上がる懸念も小さいと考えてよいと思います。

②エコマンションが進化して増加
福島原発の問題が電力不足を引き起こし、計画停電や節電ブームをもたらしましたが、これにより低炭素社会を目指して来た従来の流れが加速することとなりました。
マンションの企画でも、一層のエコ化が進むでしょう。従来型の省エネ設備、例えば「節水トイレ」や「高効率給湯機」、「魔法瓶型浴槽」、「LED電球」等に加えて、創エネの「太陽光発電」や「太陽光給湯」を装備し、進化したエコマンションが大流行する可能性は高いと予測します。

③防災マンションが一般化
万一の災害に備えて、防災用品を備蓄したマンションも増えるでしょう。飲料水、非常用食料、救急用品などの他、マンホール用の簡易トイレや、かまどに変身する敷地内公園のベンチなどです。
さらに、買い手が最も期待する自家発電装置付きマンションも増えるでしょう。電気は災害のときの復旧が早いとはいうものの、数日間の停電に備え、エレベーターを稼働させるため、また携帯電話の充電用などにも最低限の電力は必須となるからです。

④カーシェアリング
景気の停滞が長期化する中、商品の購入に当たり経済性を熟慮する人が増えています。このような潮流からでしょうか、カーシェアリングは、経済性、合理性が評価されて利用者も確実に増加しているようです。静かなブームといった印象ではありますが、駐車場の利用料金が3万円もする都心では、クルマを手放す人が減っても不思議ではないのです。
少なくとも、マンションの購入を契機にクルマを買うという傾向は着実に衰えていると考えられます。
もはや、マンションの企画にカーシェアリングシステムは欠かせません。そのトレンドに伴って、電気自動車と充電タワーを管理組合に寄付する形で最初から用意しておこうという物件が、今年は一気に増えると思います。

⑤気になる「管理費・修繕積立金の値上げ」ラッシュ
老朽化したマンションの大規模修繕や建て替えが社会問題として大きくクローズアップされて来ました。日常管理においても、管理会社に丸投げだった入居者が自分たちの財産は自分たちの手で守るという意識に変化しつつあると言われます。

少し前には不透明な管理委託料が問題にされて、管理会社のリプレイス(交替)が増えるとともに管理費が下がる傾向も見られました。このため、管理会社間の競争も激しくなっているようです。管理会社としての価値の向上に自ら取り組んでいる企業も増えています。

管理費は単に安ければよいわけではなく、管理組合(入居者)は維持管理のための最高のサービスを適正な委託費で請け負える管理会社を求めています。
土地神話が信奉されていた時代と異なり、今は自宅マンションができるだけ値下がりしないように、メンテナンスをしっかりやらなければという気運がユーザー側に生まれつつあるのでしょう。

このような流れの中で、気になるのは管理費と修繕積立金が分譲時に高く設定されるケースが目立って来ました。そもそも、事業者(マンションの売主)が子会社などに一方的に委託先を決めてしまうため、競争原理が働きにくいのが新築分譲時の管理費等なのですが、それにしても一体どういうことでしょうか?

長期的な展望のもと、資産価値を維持していくための高度なサービス提供には必要な費用だからと単純に受け止めていいのか?それとも、管理費滞納者の増加という一方の問題意識から高めの設定をしているからか?
疑問は尽きないのですが、今年その傾向が強くなりそうな、これは予感ですが、そんな気がします。

特に、修繕積立金を入居時に一括して集める「修繕積立基金」を多額に設定する例が増えるのではないかと予想します。首都圏の平均的な70㎡クラスのファミリーマンションで、これまで30万円から50万円だった水準が、入居時に50万円以上80万円未満といった辺りに定着するのではないかと思います。
登記料等と併せて用意しなければならない頭金以外の諸費用は、物件価格の4~5%程度で良かったのが、5~6%くらいまで増えることを覚悟しておいた方がよさそうです。

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