第654回 話題の新発売マンション。どれも「驚く高値」に思うこと

このブログは居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から「マンションの資産価値論を展開しております。

5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

 

今秋の話題マンションは、国立競技場前の「THE COURT神宮外苑」と、渋谷駅から徒歩7分の「ザ・パークハウス渋谷南平台」、渋谷区役所・渋谷公会堂の再開発プロジェクトである「パークコート渋谷ザタワー」、3件でしょうか?

 

今日は、この高額な3つのマンションを見て感じたことを述べようと思います。

 

●再開発プロジェクトはみな高い

3件とも所在地は渋谷区です。噂によれば平均坪単価は@800万円以上になるらしく、20坪(66㎡)で1億6000万円なので、いずれも庶民には縁遠い高値の物件です。パークコートは定借マンションなので、@800万円までは行かないらしいですが・・・

ところが、15坪くらいのコンパクトタイプで下層階なら1億円くらいになるはずなので、手が出るDINKSさんもあると推察します。ちなみに、南平台は価格が既に公表されており、今回の受付は5戸のみですが、12,480万円~71,500万円(57.53㎡~215.30㎡)となっています。

 

これらの物件が話題になるのは、大型マンションということもありますが、格別な立地条件にあるからです。共通するのは、「再開発プロジェクト」のマンションであることです。

 

「THE COURT 神宮外苑」は409戸(事業協力者戸数229戸含む)、「ザ・パークハウス渋谷南平台」は100戸(事業協力者住戸30戸含む)、「パークコート渋谷ザタワー」は505戸(総販売戸数355戸)とあります。

 

注目点は、総戸数の割に販売戸数が少ないことです。上のデータは、HPの物件概要からコピーしたもので、パークコート渋谷ザタワーだけ表示が異なりますが、推測するに地権者(渋谷区?)に渡る住戸が150戸もあるということなのでしょう。

 

THE COURT神宮外苑 完成予想図

パークコート渋谷ザタワー完成予想図

(画像:物件公式HPより。2点とも)

 

筆者は、再開発案件と聞くと「高く出てくるな」と警戒するのが常です。理由はこうです。

 

再開発プロジェクトは古い建物の建て替えを伴うのですから、歴史ある一角なのです。歴史ある街は成熟しているので空き地がなく、そこでマンション開発をしたくても適地が見つからないものです。たまに、売地が出ると、零細な個人事業主が何十年と保有していた小型ビルの跡地です。相続税問題が絡んでいたり、資金の問題があったりして売却に踏み切るのです。

 

ここ数年、日本橋アドレスで小型マンションの供給が急増したのも、2015年に増税になった相続税対策が背景にあったものと考えていますが、駅に近い古い街の宿命だったのかもしれません。ともあれ、たまに売り出される好立地のマンションは、どれも小型です。

 

今回の3件は、いずれも大規模でマンション業者垂涎の土地です。このブログでは何度も「新築マンションの品不足」について解説して来ましたが、その原因のひとつは適地不足にあるのです。郊外や駅から遠い土地なら出物はあるが、売れそうにないから鼻から検討しないか、検討しても買収を止めてしまうのです。

 

同業他社が、郊外や駅から距離のあるマンションの販売に苦労する姿を横目でにらみながら、条件の悪い土地を敬遠するというわけです。しかし、都心部もホテル業者に奪い去られることが多いとも聞きますし、デベロッパーの用地取得難は深刻のようです。

 

このような背景から、地価は上昇し、都心のマンションは上昇して来ました。その中でも一等地にある再開発マンションの高値は驚愕です。

それでも、「買う人は多い。この立地、このプランなら5億円でも買ってくれる人は1人や2人はいるはずだ。2億円なら少し時間がかかっても10人。1億円ならサラリーマン家庭でも共働きなら買えるのだから30戸はいけるよ。1億5000万円前後の中間帯では30人はあるだろう。面積をもっと落として8000万円くらいにすれば、単身者や投資家が来るはずだ。これらを合計すれば、何とか150戸は売れるはずだ」。議論の末に、こうした結論を導き開発のGOが出て、用地買収とプランニングが行われます。

 

当然、競争相手は多数です。同業他社に取られないようにするには、地主に対し好条件を提示する、すなわち高い買収額を提示することが必須なのです。

 

高くても売れるようにするには、企画力もブランド力も必要です。一流の設計事務所や一流の建築デザイナー、一流のゼネコンを起用しつつ、デベロッパーの経験と創意工夫を凝らし、総力を挙げて取り組みます。販売に当たっては、トップクラスの広報力を持つ大手広告代理店を起用します。

 

●高くても買い手はある

このようにしてデビューする高額マンションは、世間の耳目を集めてプレセールスの段階では、冷やかしも、買えそうにない人も含めて大勢の来店者で賑わいます。実は、これも演出のひとつで、「枯れ木も山の賑わい」作戦なのです。

 

ともあれ、人気を博す物件はたとえ全戸1億円を超えてしまうような物件でも、販売戸数が100戸や200戸は売れてしまうものです。それだけ、購入できる階層が分厚く存在するということなのです。

 

1年間で億を超えるマンションが1500戸も売れるというデータがあります。すごいなとも思いますが、たった1500人しか買わないのかという意見もあるのです。

東京都の世帯数は区部だけで約450万もあるなので、1500(0.15万)は、たったの0.03%に過ぎないからです。

先にも触れましたが、サラリーマン世帯でも共働きなら1億円が買える時代なのですから、1500人と聞いて驚くことはないのです。

 

起業する人、副業を持つ人も増えて、わけなく億ションに手を出すことができる人が増えているのが実態です。年間に新築マンションを購入する人は35000人くらいなので、1500人は4%に相当するわけで、やはり特別な人たちなのかもしれませんが、とにかくここに挙げた3物件のような高額マンションでも売主は必ず売れると踏んでいるに違いありません。

 

●バブル価格ではないのか?

1980年代後半、株式や不動産・マンションは「上がるから買う、買うから上がる」という循環をもたらし、永遠に右肩上がりの繁栄が続くとの錯誤をもたらしました。

これがバブルでした。バブル(泡)はやがて崩壊しました。それ以来、20年以上もの長い間、日本は景気停滞とデフレに悩まされて来ました。

 

今日、またバブルがやって来たのでしょうか?これには、いろいろな議論があるようです。局所バブルだ、ミニバブルだ。そんな声も耳にします。

 

これを検証するのは面倒な作業をしなければならず、答えを導くのは難しいことです。

最近数年の高額マンションを100戸規模に限って紐解いてみましょう。価格は坪単価です。

パークコート青山ザ・タワー163戸(2016年10月発売)」の@950万円、

パークコート赤坂檜町ザ・タワー322戸(2015年11月発売)」の@980万円、

ザ・パークハウスグラン南青山101戸(2015年6月発売)」の@780万円、

パークマンション三田綱町ザフォレスト98(2014年7月発売」」の@710万円、などが挙げられます。いずれも港区の物件です。

 

千代田区では、「ザ・パークハウスグラン千鳥ヶ淵」が73戸と規模は少し小さいのですが、2013年9月に@780万円で販売されました。

 

これらの単価と今回の3件はそれぞれの立地とプランニングの差はありますが、大差ない価格で売り出されるようです。単純には抑制が効いている気がします。

 

ただ、詳細の調査が終わっていないので、軽々には語れませんが、それぞれ得難い立地条件にあり、かつ、工夫を凝らした建物になるものの、筆者は安くないと感じています。

 

●投資目的で購入するのは危険

マンションの価値は、また、稀少価値の高い土地かどうかの観点で検討することも大事です。そして最も大事な要素は「価格」です。価値に見合わない高値で購入(高値掴み)すれば、将来価格は期待外れになるからです。

 

バブル経済は、実需の裏付けのない取引が生み出すものでもあります。1980年代後半の不動産バブルは、使う・利用する予定のない「転売で利ザヤを稼ぐ」、すなわち仮需が大半でした。現地を見もしないで買い、それに何十%かの利益を乗せて1か月そこらで売ってしまう。次の買い手も地図で場所を確認するだけで手を挙げる。このような繰り返しが地価の暴騰を招いたのです。その取引を支えたのは金融機関でした。

 

中には、銀行の勧めもあって土地を買い、オフィスビルやマンションを建ててテナントをつけて家賃収入を目論んだ実需もあったのですが、投下資金に対する収益の割合が低く、転売を図ったときは「時遅し」で不良資産を抱え込んでしまった人も多かったのです。

 

短期転売(転がし)で儲けたのは、不動産賃貸でしたが、その当事者の多くが最後に「ババを引き」、破綻していきました。

 

歴史的なバブルは、今のところ勃興しているとは思いませんが、危険水域に差しかかったときがありました。2014~2015年頃でした。相続税対策にタワーマンションの上層階が狙われたこと、海外投資家(主に中国系)が東京の不動産は安いと見てマンションを「爆買い」する行動が見られたときです。

 

最近は金融庁の監視も厳しいらしく、投資資金がバブル期のように歯止めなく出てくることもないためか、不動産バブルが起こる気配はばさそうです。

 

では、先の3件のような高額なマンションを投資対象に考える人はいないのでしょうか?少なくともプロは狙わないはずです。プロは割安と思われるマンションに投資し、タイミングを見て売却益を狙います。最近では、横浜の馬車道駅直結の「北仲ザ・タワー」が、少し前には月島駅直結の「キャピタルゲートプレイス」などが狙い目でした。

 

このようなプロが注目する割安な物件は、新築では滅多にお目にかかれないもので、抽選の壁もあってまとめ買いもままならないようです。彼らは、話題だけが先行している割高なマンションには興味がないのだとも言います。

 

筆者に相談して来られる買い手は、自己居住が目的の人が多いのですが、中に「半投資」という人もありました。半投資の人は、急ぐ必要は全くないそうで、投資としても価値あるマンションだったら買おうかという考えによるものです。セカンドハウスだという人もありましたが、半分は投資目的です。

 

こうした人たちに筆者が助言したのは、次のようなものです。

 

●高くても誇りを持てるマンションに住みたい

マンションは一面、ステイタスシンボルでもあるので、その立地、その建物に希少価値があり、「億を超える高級マンションであること」に誇りを感じると捉えて購入する人が存在するのは確かなので、リセールは間違いなく可能です。

 

現に、過去のスーパー億ションは新築時にどれも短期完売していますし、今それらが中古市場に出てきて買い手がつくのも事実なのです。

 

問題は、リセールバリューです。2億円で買ったマンションが、リセールで3億円になるか、逆に1幾円になってしまうかにあります。もし、あなたが投資目的の比重が高くないなら、気に入ったとする本物件を購入することについて他人が口を挟むことは憚ります。

 

筆者が助言できることは、次の3点だけです。

 

圧倒的に差別化された(明確な差別感がある)物件ですか

希少価値という表現でもよいのかもしれません。「皇居が一望」、「東京タワーが正面に見える」、「眼下にレインボーブリッジ」といった景観、「傘が要らない駅直結の立地」といった交通利便性など、立地条件の希少性がどれだけ高い物件かというチェックが必要です。

感動を与えてくれる(与え得る)要素がある物件ですか

結局のところ、売却に際して内見者をいかに感動させるか(感動してくれるか)という視点で購入しようとしているマンションを見ることなのです。感動要因が数多く、つまり「すごい・素敵」を連発させられるかがカギになるというわけです。

たくさんの感動を与えることができるマンションなら、売り出し価格から殆ど値下げすることなく、しかも短時間で売却が実現できるでしょう。

金銭では換算できない精神的利益が大きい。だから私は買う。そう言い切れますか

自分にとって利便性が抜群に高い。そこに住むことで誇りを持てる。成長した(成功した)自分にふさわしい。日々の暮らしも快適である。無論、家族も喜ぶし、仕合わせを感じるだろう。このような思いは、金銭の多寡では測れないのです。

 

●東京の経済力は大きい

重複しますが、5億円のマンションでも一人や二人は買い手があるはずだと読むマンション業者は、経験から購買層の存在を感じるのです。また、1億円の買い物は、特殊な階層だけの行動ではなくなっていることを知っています。理由や背景は何であるにせよ、現実に仮需ではない購買層の膨張があるのです。

 

全体として、東京の経済力は大きくなったということなのでしょう。3物件も爆発的な売れ行きを見せるかは、まだ読めませんが、好調な経過をたどるに違いありません。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。(http://www.syuppanservice.com

 

 

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