お手ごろ価格のマンション供給がいくらか活発に!?

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

最近の報道(日本経済新聞や週間ダイヤモンド等)によれば、都心部に開発の中心を置いていた大手デベロッパーが郊外マンションにも力を入れるとあります。代表的な企業として三菱地所レジデンシャル、野村不動産、有楽土地などが紹介されていました。

野村は郊外型の新ブランドを立ち上げ、首都圏郊外で向こう3年間に1000戸規模で供給すると言います。また、三菱は同じく2000戸と都心と同規模の供給を計画中とか。また、千葉県で継続分譲中の大規模開発をスピードアップさせるというのが有楽土地です。

このブログの10月5日に「郊外マンションの供給がなくなる?」と書きましたが、その予想は早くも外れるのでしょうか?

●一次取得者向けの低額物件は大幅に減少してしまった
不動産経済研究所のデータによれば、2000年から2010年までの11年間に首都圏で供給された新築マンションの内、一次取得者向けの供給量とシェアは以下のようになっています。
同研究所の定義する「一次取得者向けマンション」とは、販売価格3500万円未満、かつ広さが60㎡以上。この両方の条件を満たした物件のことで、その供給戸数は、次の通りとなっています。

・2000年 総供給95,635戸の34.2%=32,754戸
・2001年 同89,256戸の38.0%=33,888戸
・2002~2006年 同36.2%、30.2%、31.0%、35.3%、32.5%(ここまで30%台持続。この間の総供給戸数は7~8万戸台)
・2007年 同61,021戸の25.4%=15,525戸
・2008年 同43,733戸の21.4%=9,344戸
・2009年 同36,376戸の19.5%=7,092戸(20%を割り込む)
・2010年 同44,535戸の18.4%=8,194戸
※2011年の予想は45,000戸の20.0%程度=9,000戸か?

●問題はシェアより絶対数にある
上記の数字を見て気付くことは、
①この11年間に一次取得者向けマンションのシェアは低下傾向が明確であること、
②総供給戸数が急速に減った2007年以降は、絶対数も大幅に減少し、最近3年間は1万戸を割り込んでしまった
――の2点です。

購入者にとって大事なことはシェアではなく絶対戸数です。自分の予算で購入できる価格帯のマンションがどのくらい市場にあるかなのです。
残念ながら、大手業者がお手ごろ価格の郊外マンション開発に力を入れると言っても、2006年以前のような水準に戻ることないと考えなければなりません。

その理由は簡単です。マンション業者の数そのものが大幅に減少したからです。特に一次取得者向け商品の供給を担ってきた中堅業者が2008年、2009年に大量破綻したことがその原因です。

実感はないなどと言われながらも着実に景気回復軌道にあった2005年頃、金利低下の恩恵もあってマンション市場は活況を呈していました。しかし、活発な市場はその裏で用地争奪戦を激化させていました。当然、経済原則通りに地価は上昇し、少し遅れてマンション価格に反映されていきます。

その結果、予算と価格の乖離が生じて販売は失速、そこに予期せぬ出来事が重なったのです。2008年に表面化した米国のサブプライムローン問題でした。

リーマンショックに始まり、世界金融危機と言われました。そして、「100年に一度の世界経済恐慌」、「世界同時不況」といった文字が新聞やテレビ画面に踊りました。

銀行は一斉に融資の引き上げ、新規貸し出しの抑制に動きました。不良債権の急増を恐れたからです。そのあおりを食らったのが中堅不動産会社でした。もちろん、大半はマンションディベロッパーです。株式上場企業でも中堅企業には例外がありませんでした。
資金繰りに窮した新興企業が次々に法的な再生手続きに移ったのです。また、かろうじて倒産を免れた企業も、銀行の貸出姿勢に転換が見られないことに加え、市況の悪化から積極的な事業展開が図れず現在に至っているというわけです。

首都圏だけでマンションデベロッパーの数はピーク時に500社以上もありましたが、現在は販売中という“くくり”でカウントすると150社もないと言われます。

これでは、一次取得者向けマンションの大幅な回復は期待できません。いくら大手が進出すると言っても、需要が堅く好不況にも強い都心の中・高額マンションを捨ててまでシフトするはずはないのです。都心部で用地が取得困難なとき、仕方なく郊外の土地を排除しないだけなのです。
      ▼      ▼      ▼      ▼
景気が本格的に回復してくれば様子は変わるでしょうが、EU問題と超円高、タイの洪水、電力不足など、不透明なことばかりであり、また関連して金融がマンション事業の積極的な新規参入や復活・再開を後押しするといった顕著な動きには当分つながらないと思うのです。

こうした背景を考えると、金利の低水準はまだ続くでしょうし景気刺激に住宅購入促進の政策が再び拡大する可能性もありますから、需要は底堅いものがあると見てよいのですが、それに見合う供給は行なわれないと予想します。
結局、一次取得者向けマンションは絶対的に品不足が続くと予想せざるを得ないのです。

・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ

●ご検討中マンションの評価(無料)を試してみませんか?
個別マンションの評価が人気です!!
評価項目:①立地条件(最寄駅までの距離・都心へのアクセス・生活利便性) ②全体計画(配棟計画・駐車場・空間利用計画・共用施設・外観デザイン・セキュリティ・省エネ) ③建物の基本構造(耐震性・耐久性・遮音性能・将来の更新性) ④管理内容(管理体制・管理費・修繕積立金・管理会社) ⑤専有部分の計画(間取り・設備・仕様) ⑥売主 ⑦施工会社・・・・これらの項目を5段階評価した後に、将来の資産価値(リセールバリュー)に関する所見を加えて総合評価。「不動産簡易評価書」の形でお届けします。
尚、ご検討間取りの評価をご希望の場合は、その旨をお知らせ下さい。

対象エリアは全国。あくまで売主が公開している範囲の情報をもとに机上査定するもので、環境調査は含みません。また、不動産鑑定ではありません。あくまで、購入者が見逃しやすいチェックポイント(将来の売却価値・維持管理など)をおさえることで、後悔につながらないお買い物のお手伝いをするのが目的です。

原則として、お申込みから48時間以内にお答えします。「三井健太のマンション相談室」にアクセスしてお申込み下さい。

★自費出版と執筆代行(ゴーストライティング)のご用命はこちらへ

★業界関係者向けの参考書と情報のページこちらから