第634回 目の付け所は設備や間取りではない

このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

マンションの検討に当たって、大きな買い物をするのだから隅々までしっかりチェックしようとするのが普通の購買者心理です。失敗したくない・後悔したくないと、あらゆる角度から検討を加えて行きます。

 

ところが、その作業を真剣にやればやるほど細部を見過ぎて肝心なことを忘れてしまったり、重要条件・優先条件においては満足すべき物件でありながら見送ってしまったりするという過ちを犯してしまう人も少なくありません。

 

今日は、何を優先すべきで、どこに目をつぶるべきかという視点のお話しをしたいと思います。

 

 

●マンションの値打ちは立地で決まる

マンション選びで最も大事なことは、立地条件を妥協しないことです。東京都心の方が、郊外の都市より価格は高いものです。価格が高いのは、それだけ需要が多いためです。

原価を構成する土地と建物に分解して説明すると、土地で欲しい人が多いのは都心です。マンション用地だけではなく、ホテルやオフィスを建てたい人が多数あるのです。このため、土地の価格は常に強含みです。高くなっても欲しい人があるからこそ、地価は高く維持されます。

建築費は、どこで建てても同じようなものですが、厳密には異なります。狭い土地で建てる場合と、広大な敷地で建てる場合では施工効率が違うので、狭小地が多い都心マンションの方が高くつくことが多いのです。

 

ともあれ、地価も建築費も高い都心で販売するマンションの価格は驚くほど高いのですが、それでも一定の需要はあるものです。そんな高いマンション、いったい誰が買うのか、そのような疑問が湧いてきますが、買う人がいるのは確かです。便利だからです。都心マンションに手の届く富裕層に対して、安いのがありますよと懸命にアピールしても、郊外に目を向けることはないのです。

 

一方、都心に素晴らしい高級なンションがありますよと新聞広告などで大々的な広告を打ち出しても、東京にいない人、言い換えれば郊外都市に仕事の拠点があるために、その近辺の住まいが都合よいと考えている人にとって、価値ある住まいは郊外なのです。

 

関西に拠点がある人は、大阪市なら北区や中央区の利便性の高いエリア、または少し都心を離れても富裕層が多く住むと言われる芦屋市や西宮市、豊中市、吹田市などの一部地域に需要が集まる傾向があります。

 

札幌市、仙台市、名古屋市、京都市、神戸市、広島市、福岡市といった地方の大都市でも、一般人に人気の地域、富裕層に人気の地域があるのです。

 

どの地域にも、一等地と言われるエリア、人気の住宅地、高級住宅街と呼ばれるエリアがあります。そうした視点で街(駅)を選ぶこと、これがマンション選びの第一歩です。

 

立地条件の項目で大事な二番目は、駅に近いことです。近いかどうかの分岐点は5分です。5分を超える場合で妥協できる他の要素があったとしても7分です。

 

立地条件の問題は奥が深いので、今日はここまでにします。

 

 

●マンションの価値は専有部分より共用部分で決まる

立地条件がマンションの価値を90%以上も左右すると言って過言ではないのですが、建物に関して言えば、マンションの価値は共用部分のしつらえ(造り込み)が左右するということになるのです。

 

何万坪もの面開発案件を除けば、街並み・環境まで変える、すなわち立地条件を変えてしまうようなことは不可能です。勿論、最寄り駅からの距離は変えようがありません。

 

立地で劣るマンションの価値を高められるかどうかは、建物にどのような付加価値を考えるかにあります。デベロッパーの創意工夫次第ということになるのです。

建物をいかに魅力あるものにするかということですが、検討対象は大別すれば「住戸内(専有部分)」と「共用部」ということになります。住戸内の工夫においては、間取りと設備、仕上げが項目になります。共用部は共用施設・設備とデザイン、仕上げが検討項目となります。

 

専有部分は、限度はあるものの購入者(所有者)があとから変えること(リフォーム、リノベーション)ができます。

高級なキッチンや洗面台、化粧台付きの広いトイレ、高級な建具とノブ(ハンドル)、大理石張りの床、板張りの壁、飾りのついた天井などと、お金をかければ好みでグレードアップを図ることが可能なのです。

これに対し、共用部分は変えようがありません。勿論、各住戸の玄関ドアを交換したり、ロビーの床をタイル貼りから天然御影石貼りに変えたりすることは不可能ではありません。しかし、それには管理組合の決議が必要なので、コトは簡単ではありません。

 

我が家の価値を外から高めたいと考えても、容易なことではないのです。大規模改修の時期などに提案したとしても、予算的な問題があるので、元のグレードを維持するのがせいぜいという場合も多いのです。

 

車離れが進み機械式駐車場の空きが増えたので、更新時期が来たとき、思い切って解体して平面だけにしたなどという例があるそうですが、これなどは解体費用だけで済み、新たな工事費が不要という大きなメリットがあるから組合の賛同が得られたのでしょう。

これなどは例外的なものです。

 

結局、既成事実となってしまった共用部の仕様は変えられず、資産価値を上げるという目標は叶わないのが現実です。よって、購入時から共用部分の仕様にはこだわっておきたいところです。

 

 

●外壁がタイル貼りというだけではダメ

大昔のマンションの外壁は吹き付け塗装でしたが、40年くらい前からタイル貼りが当たり前になりました。

従って、タイル貼りというだけでは差別化にならないのです。もっとも、最近は時代に逆行するかのようなタイル張りでないものが超高層マンションで見られますが。

 

マンションの販売資料には必ず「外部仕上げ表」が付いていますから、注目しましょう。

「タイル貼り。一部吹き付け」とあったら要注意です。一部とは、80%でも一部なので、どこまでかを確認するべきなのです。

 

外廊下式の建物では、廊下がコンクリートの立ち上げか、それともアルミの手すり式かで見映えが変わって来ます。廊下の住戸側の壁がタイル貼りになっているかどうかも大事なチェックポイントになります。これらは、パンフレットには表示されていません。

 

同様に、バルコニーの立ち上げがガラス張りでなくコンクリートの場合、バルコニーはタイル貼りだが、住戸壁(サッシの周囲)が吹き付けという例も多いのです。

 

高級マンションでは、バルコニーの軒下まで素材にこだわっています。外の道路からマンションを見上げると、バルコニーの天井部分、すなわち軒下が丸見えだからです。

普通のマンションでは、ここが「リシン」というザラザラした吹き付け材でコンクリートの表面処理をしていますが、高級マンションではここに別の素材を使い、見た目も上質なものにしようとします。

 

●エントランスホールの天井高や仕上げ材を見る

エントランスはマンションの顔ですから、デベロッパーは例外なく規模とデザインに注力します。しかし、敷地条件や道路位置などから建築制限があり、そのうえにコストの壁が立ちはだかります。

 

価値あるエントランス周りの例を挙げてみましょう。

下の写真のようなキャノピー(天蓋=てんがい)が張り出した玄関は豪華な印象を与えてくれます。もっとも、その素材も質感に影響を与えるので、キャノピーがあるだけでいいという単純なものではありませんが。

(画像:住友不動産)

 

エントランスホールは広いほど豪華に見えるものですが、広さは平面だけでなく天井高にも影響されます。2層以上の吹き抜けが理想なのでしょう。また、ホール内のデザイン・仕上げ材、調度品や照明なども大きなファクターとなることは間違いありません。

(画像:三井不動産レジデンシャル)

エスカレーターのあるエントランスホール(画像:住友不動産販売)

 

これらはシティホテルのエントランスを思い浮かべながら比較するといいですね。未完成物件の場合は、売り手が用意したパースだけでは分かりにくいですが、説明を受けながら想像力を働かしてみるほかありません。・

 

各住戸の玄関扉のグレードも注目したい要素です。どのようなものが高級感、上質感、あるいは洗練されたデザインかは筆舌に尽くしがたいので割愛しますが、完成しているマンションの中から高級と言われるものを数多く見学することをお勧めします。

また、モデルルームは見学者を迎えるとき、扉を開けて固定していることが多いので、閉めた状態で見せてもらいましょう。ありふれたデザインか、上質な洗練されたデザインかをチェックしたい点です。

 

●内廊下タイプは廊下の幅と壁・天井の素材に注目

タワーマンションに見られる内廊下方式。大抵の物件で「ホテルのような」と形容していますが、ホテルもグレードはピンキリです。

 

そこで注目点は、廊下の幅と廊下の仕上げです。超高級マンション以外は、床がタイルカーペットです。上品な印象が出るような柄を選んで張り込んであるようですが、どこも大差ないと言えそうです。

しかし、壁と天井の仕上げで差がつくのです。ありふれたビニールクロス張りか、他の素材との組み合わせか、天井はどうなっているかなどに是非興味を持ってもらいたいものです。

 

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完全無欠のマンションはないので、優先順位を決めて選択するほかありませんが、優先順位は買い手によって異なることも事実です。しかし、「資産価値」の観点を外さないようにし、立地条件は当然ながら、建物プランの面では専有部分より共用部分に目を凝らして欲しいと思います。

 

売却のとき、見学者が外観やエントランス周り、エレベーター、廊下などの共用部分を見て何かを感じます。簡単に言ってしまえば、「高級そうに感じる」か「安っぽいイメージに映るか」です。鈍感な見学者もあるでしょうが、目に映るものは強烈な記憶に残るものです。

 

こうした印象や感想は、中古市場における見学者、すなわち購入検討者の購買心理に影響を与えるのです。

 

●間取りも設備も大事だが、こだわり過ぎないこと

間取り以外の全てが満足できるというとき、皆さんならどうしますか?リフォームしますか?それとも妥協しますか?

 

答えは、ケースバイケースでしょう。ただ、気に入った洋服のサイズを部分的に直して着るのと同じで、マイナーチェンジは必要なものと割り切ることも必要です。

 

反対に、自分好みの間取りであったときに大事なことは、間取りが好きというだけで決めてしまわないことです。

 

気に入って買った洋服も、街を歩いているうちに気に入らないところを発見したら、箪笥のこやしにすればすむかもしれませんが、マンションは気に入らないからと買い直すことも返品もできません。

 

仕方がないので住み続けます。中には、ずっと後悔の念が残る人もあるかもしれませんが、住んでいるうちに良い所を数多く発見して新生活に満足することができるかもしれません。

 

しかし、買ってから〇〇年経てリセールを検討したら、その査定額に愕然とするかもしれないのです。設備は古くなってしまい、見学者は「新品と交換したい」と感想をこぼすかもしれません。気に入って買った間取りも、見学者は「ベッドが入るかしら?」と疑問を呈したり、「思い切って壁を壊したらリビングが広くなってよさそう」などとつぶやいたりするのです。

 

それでも何人目かの見学者が、「立地を気に入り、マンション全体の豪華さに圧倒され、感動して」 買ってくれればいいですが、設備も間取りも「どうってことなく」、「マンション全体の質感や風格の足りなさに感動することもない」マンションだったら、買い手は中々決まらず、最後は値引き交渉に負けてしまうかもしれません。

 

大事なこと(優先条件)は、立地条件と建物では室内よりマンション全体にあるということを肝に銘じておくといいでしょう。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

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