第751回 「買ってはいけないマンションとは?」
- 2021.06.10
- マンションの選び方
このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。
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マンション選びは、各個人・家庭の事情によるものとはいえ、事情が許す限り、より良いマンション、損しないマンションを選びたいはずです。言い換えれば「資産価値の高いマンション」を選びたいと考えるのが普通です。
この視点を念頭におきながら選びたいと思いつつも、「どうしてこれを選んだのか」が分からない結論を出してしまう人は少なくありません。とりわけ、「惚れたら痘痕もえくぼ」に陥ってしまう人は少なくないようです。
・・・・・・今日は、視点を変えて「買ってはいけないマンションのイロハ」について述べることとします。
●選んではならない立地条件 ①
マンションの資産価値を決める要素として、真っ先に挙げられるのが立地条件です。 その立地について、シビアに見ている人はどのくらいあるのでしょうか?
統計にはないのですが、東京には生家が地方都市であった人も多いせいか、駅から徒歩10分以内と考えている人が多いようです。
しかし、ここはもっとシビアに捉えておきたいのです。リセールバリューの決め手は「駅から徒歩5分を超えると評価は下がる傾向」が強いからです。
従って、「徒歩10分を超える物件は原則として選ばない」というくらいのスタンスが良いと言えます。 無論、エリアによって妥協してもよいと言えるケースもないことはありませんが、これは例外的と思わなければなりません。
例外とは、駒沢公園や代々木公園、吉祥寺公園といった大きいだけでなく緑が多く、景観的に魅力的な公園に隣接しているような場合です。それでも、バス便が良く、かつ駅前に出なくても日常の買い物に困らない利便施設も近隣に揃っていることが前提です。
環境が良いのは当たり前の郊外では、魅力的な公園が隣接しているというだけでは不十分ということになるでしょう。通勤の便を優先する家庭が圧倒的に多いからです。
最寄り駅から徒歩5分前後が当たり前の東京都心、A駅には徒歩7分だが、B駅とC駅には5分、4分だなどと、複数の路線、複数の駅が利用できますが、少し郊外に足を延ばすと、最寄り駅は1路線の1駅だけという例は少なくありません。
利便性が高いとされる東京でも、都心から離れるほど、そうなります。このような郊外の駅なら、徒歩5分以内を条件とした方がよいのです。
●選んではならない立地条件 ②
「駅力」という言葉をお聞きになったことがあると思います。これは、駅と周辺の利便施設、環境の良し悪しなどを人気投票で順位を決めたものと理解していただくとよいでしょう。
メジャーセブン(マンションデベロッパー7社)の調査や特定企業が調査したデータもありますが、最も有名なのはSUUMO(スーモ)が毎年調査している「住みたい街ランキング」です。この100位に入る駅が無難ということになるでしょう。
こちら➡ https://suumo.jp/edit/sumi_machi/
都区内で人気が高い世田谷区でも、驚くほど寂しい駅があります。環境は良いものの、駅前にはコンビニが1軒あるだけという信じがたい駅です。
このような駅・街は無論、買い手にも作り手にも不人気です。しかしながら、用地難に苦しむデベロッパーは売地が出ると飛びつきます。不人気のエリアは売り値が安いので前向きに買収へ向かうデベロッパーもあるのです。
とはいえ、多数のデベロッパーが競争して取得に動くというほどの状況にはなりません。従って、無競争で安値の用地を買収できることになります。しかし、手を出さないデベロッパーが多いのは、「用地費が安いだけでは販売リスクがないとは言えない」ことを知っているからです。
マンションの分譲価格は、用地費以外に建築費という、もうひとつの大きなコストによって左右されます。建築費は、都心でも郊外でも大差ありません。従って、用地費が少し安いくらいでは分譲価格が大幅に安くなるわけではないのです。
駅力に乏しい街では、「霞を食って生きろ」と言われているようなものです。とはいえ、先人が住んでいるではありませんか?その人たちは、どんな暮らしをしているでしょうか? そう聞かれたら、まあ、隣の駅へ移動して着物をしたり、外食は繁華街でしたりするのでしょう。 筆者は、そう答えます。
いずれにせよ、このような生活利便施設の少ない駅のマンションは不人気なので、分譲時も人気を博することはなく、完売に長い時間を要します。少しの安値に惹かれて買った人も、買い替える時には現実を思い知らされます。
「安い。これなら損はあるまい」と信じたものの、売ることになったときに「予想をはるかに下回る安値に落胆した」という声が多いのです。「駅力」という概念は見落とせない要素です。
●建物で避けたいタイプは「小規模」
大型マンションには、周囲を圧倒する存在感があるものです。無論、それは相対的なものですから、何戸なら大きい、何戸以下は小さいなどと一口で区別することはできません。
都心の某駅周辺には似たようなマンションが駅前通りにズラリと並んでいます。街並みとしては美しいと言えないこともないのですが、どのマンションも似たり寄ったりです。
そんな中に、間口が狭く、両脇を大型マンションに挟まれたような、存在感の薄いマンションがあります。間口が狭くても奥行きが長く、小型マンションではないと売り手は主張したいかもしれませんが、小規模で存在感に乏しいマンションなのです。
某大手デベロッパーの知人が教えてくれました。「当社は、角地以外は買わない」と。なるほど、面積が広いと言えない用地でも、角地なら存在感のあるマンションを造れるなと、そのとき筆者は感じたものです。
小規模マンションには、設計上の様々な制約が伴います。例えば、エントランスの形状・スケールを威風堂々にすることは難しいものです。 設計家もデベロッパーも、胸を張って「どうです。立派でしょ」と胸を張りたいものの、狭い敷地では限界があるのです。
2階まで吹き抜けにして、天井の高い立派なエントランスにしたとアピールしてみても、用地が狭くては所詮どうにもならないのです。
小型マンションの場合、管理コストが割高になることも多いので、管理人を常駐、もしくは日勤として8時間以上、週5日以上勤務させることが困難です。理由は管理コストです。管理人の給与を30万円としたら、30戸のマンションでは1戸平均1万円を負担しなければなりません。100戸のマンションなら、それが3000円程度に下がります。
都心の高級住宅街に建つマンションでは、小型でも管理人を滞在させて居住者サービスに務めますが、この負担に抵抗があると目される場所の物件では「巡回管理」、すなわち「管理人不在のマンション」にしてしまうのです。
買い手・某氏は言いました。「管理人もいないようなマンションではねえ・・・」と。
●建物で注意したい点「外構編」
マンションは、ただのコンクリートの巣箱ではないのです。デベロッパーも設計者も分かっていて、空地部分をどうデコレートするかに知恵を縛ります。
駐車場も必要だが、敷地が狭いのでスペースが足りない。機械式の立体駐車場を入れるしかないが、あれはどう見ても武骨だ・・・このような意見は少なくありません。
機械式駐車場以外の共用部・空間はどうデザインしようかと考えたとき、定番の策はプライベート公園(マンション専用広場)ですが、それ以外では植樹です。植樹は、ある程度に育った大・中木を購入して植えるのですが、当然ながら建築費に加算されます。
大木は高値なので、建築予算の関係から植える本数を削ります。建築途上の購入検討時には気が付かず、パンフレットの絵柄(写真)だけでごまかされてしまいますが、ここは見逃せないポイントです。
既存マンションを、いくつか見学して写真に撮り、「こんな感じになりますか?」と営業マン尋ねたいものです。
●避けたい「1階住戸」
子供が室内を走り回るので、下階の住人に迷惑をかけてはいけないと、1階を選択したいと考える買い手は少なくありません。筆者宅でも、かつて上階の元気な子供のために妻がノイローゼになるほどでしたから、理解はできます。
子供は何度言い聞かせても走り回る行動をやめようとはしません。それでも、数か月すればピタリと止むのです。成長するからです。 筆者宅の経験でも、そうでした。 ノイローゼ気味だった妻も、買い物時間を長く取って外出の回数を増やすなど、知恵を絞って対処していたようですが、ほどなく難問は消え去りました。
1階住戸はなぜ避けた方がいいのでしょうか?理由は3つです。
ひとつは、1階は寒いからです。 湿気を心配する人もありますが、こちらは問題にならないものです。
寒さは、2階から上の階が上下サンドイッチされていることに比べると、1階は劣るのです。販売担当者は「対策を講じてあるので大丈夫」と言うでしょう。とはいうものの、購入時に確認することはできないので、1階は避けた方が無難です。
2番目は、セキュリティへの懸念があることです。マンションは窓を開け放しにして外出しても心配いらないという利点があるとはいうものの、1階は不安が消えないものです。であるなら、1階は選択しない方が良いのです。
3番目は、プライバシー性の問題です。これは物件によっては2階以上の階でも同じですが、隣地の住宅・マンション等から覗かれてしまう懸念があるからです。
●建物で避けたいタイプ「下がり天井が目立つ部屋」
マンションの構造は、柱と梁、壁、床で構成されています。
上階の床、その下に設けられる天井空間がありますが、ここは排気ダクト(空洞)を通すことが必須です。つまり、部分的に天井が低い部分を設けなければならないのです。
このため、コンクリート床の上下差が3メートルであったとしても、内のりは2600とか2550とかになり、ダクトが通る部分は2300とか2250とかと低くなってしまうのが普通です。
買い手の立場に立てば、天井高は高いほど気持ちのいい住空間が望ましいのですが、作り手に立場に立つと、そうはいかない事情や制約があるのです。
ここでは詳細を割愛しますが、結果的に下がり天井の目立つマンションが多数(ほとんど例外なく)できてしまうのです。しかしながら、極力、目立たないような工夫をするなど商品価値を落とさないように努めるものです。
ただ、その努力・工夫が物足りない「残念なマンション」が多数できていることも現実です。 図面を見るときは、柱と柱をつないでいる梁の位置を確かめ、その下(梁下=はりした)寸法を確かめましょう。 あまりにも低い設計は願い下げです。
●安値のマンションを探そうとすると「罠にはまる」
価値あるマンションは高いものです。 しかし、予算の関係上、理想を追えない人も少なくありません。
「宝探しのように、安値のマンション探しをしてしまう人」に時々お目にかかりますが、安いマンションを見つけて喜びに浸っている人には不愉快と思われることを覚悟して、筆者は苦言を呈することにしています。
価値あるマンションは高いものです。価値ある物件が安く売り出されることはないと考えるべきですし、反対に「購入時に安い物件は、将来の転売時にも安くなってしまう」心配をしなければならないということを認識しておく必要があるからです。
高い物件、すなわち(狭くなっても)立地条件の良い物件を探そうとするのが基本スタンスであるべきで、安いマンションを探そうとするのは、資産性を求める趣旨から見れば、その本筋から外れます。
無論、港区や千代田区、中央区などの東京都心の物件では、仕事の関係から不都合な買い手もあるのですから、それぞれの事情に鑑みながら助言するのは言うまでもありません。
そこで、周辺地域や地方都市でマンションを買う場合のコツを最後にひとこと。
それは、地域一番の立地の物件を選ぶことです。予算が厳しい場合は、立地条件を妥協せず、面積を妥協することです。
・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談のお申込みはこちらから(http://www.syuppanservice.com)
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