マンション業者に対する誤解

マンションの設備・仕様を、より差別化して(差別化策はそれだけではないが)競争に勝ち抜く戦略は、いつの時代も同じだが、業者の主眼とするところは変化しているように思う。

かつては、豪華さを競うことが多かったのが、最近は設備の使い勝手や機能性を優先するものが増えているような気がするのである。
豪華さという点では、そこまでしなくてもというほど、高額でオリジナルティの高いものを採用していた時代があった。例えば、天然石を張った室内廊下や洗面室、飾り天井のリビングルーム、陶製の化粧台、板張りの壁、デザインの良い外国製の水栓金物やレザー張りのドアハンドルなどである。

億ションでしか見られない高価できらびやかな仕様を競った時代からみると、最近のマンションは、やや実質を重んじるものが多い。もちろん、高級感を商品に持たせることも必要だから、豪華さが消えてしまったわけではないが、どちらかと言えば住まい手の実質本位と言ってもよさそうだ。

例えば、セキュリティ設備。昔は1か所だった共用玄関のオートロックを、2か所にしたり、さらにエレベーターも入居者以外は呼べない仕組みにしたりである。各住戸のロックもピッキング対策で万全なものに。駐車場などには監視カメラが何台も据え付けられている。

キッチンには、生ごみ処理に便利なディスポーザーを装備したマンションが普通である。流し台の収納スタイルも昔は観音開きの扉で奥の出し入れが不便だったが、今は引き出し式なので出し入れが楽と評判になり、これが普及した。オール電化マンションも増えているせいで、IHクッキングヒーターは掃除がとても楽という声を多く聞く。時間が経っても冷めにくい魔法瓶浴槽を採用するのも一般化した。洗面化粧台は、ティッシュペーパーを置く位置まで含めて小物収納がきめ細かく考えられている。

勿論、地震対策や耐久性などの基本構造部分についてはいうまでもないだろう。

こうした例はもっと出したいところだが、マンション業者が、見た目の豪華さだけを競い合って、価格を吊り上げているわけではないことが分かってもらえればいいのである。私は業者側の人間ではないが、偏見はよくないと思う。

ともすれば、マンション業者は、売れなくて値下げ販売に踏み切ったりすると、その額の大きさにに驚くだけでなく、売り手の都合だけで価格を決めるからだとか、暴利を狙ったつけが回っただけだとかの批判を浴びたりする。

だが、そんなことは決してない。真面目に原価を抑える努力をし、安全で快適なマンションライフを送ってもらおうと日夜奮闘しているのが実態である。少なくとも、最近の業者は。

マンション業者の利益率など、たかがしれている。また、土地代+建築費+販売経費+利益の積み上げで価格を決めるという単純なものでもない。売れる価格が先にあって、そこに合わせる原価の抑制努力を懸命に行うというのが実態。合わせることが不可能なら、土地は仕入れない。それでも、建築費が予め分かっているわけではないので、目算が狂い、発注段階でゼネコンとの激しい攻防も起きてくる。それでも合わないときは、利益を削ることも少なくない。

利益が出ないほどの厳しいときは、やむを得ずに価格に転嫁する。地価の高騰期には、そういうことが頻繁に起きてしまう。それでも、予想外に売れてしまうこともある。反対に、価格転嫁が全く無理と判断され時期もある。今がその時である。理由や背景を説明する必要はないだろう。

そうした中で、買い手は判断していく必要がある。今は買う時期でないなどの風潮が現れたり、その逆であったり、買い時か否かの論調は繰り返される。最近は、慌てるな、まだ買うな的なものが多いし、続いてもいる。高齢化問題・少子化問題、先行きの不透明感などを鑑みるに、損得論を絡めるとネガティブな意見が大勢を占める。

私は、どの意見にも与しない。買いたいと思ったら買えばいい。無理せずに買える価格なら買えばいい。至ってシンプル。それでいいのである。

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