新築マンション 値上げ販売の流行(?)に危険な影

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

最近よく耳にする話をしようと思います。これは、本ブログを読んでいるかもしれないマンション業界に届けと願うものです。

業界大手のA社は、人気物件においてたびたび価格を変更、つまり販売途中で値上げしているというのです。

同じ間取りの10階が5000万円で下の階が5100万円、上の階は5500万円などとバランスも理由も分からない価格設定に結果的になってしまうような価格変更が現実に行われているようです。

分割販売の形態を採っているので、販売現場では「次期の販売では値上げの予定ですから、購入するなら今です」と客を慌てさせる営業を展開しているとも聞きます。

中堅のB社では、最上階の角住戸が工事完成直前になってキャンセルになったそうで、当初の価格に1000万円を上乗せして再販売する旨を客に案内して来ました。

分譲当初の価格を知らない客は、高いなととは思いつつも、まさか1000万円も値上げしたとは知らずに検討していたのですが、しばらくして値上げ金額を知り大いに憤慨したそうです。

B社の言い分はこうだったそうです。「周辺の相場に合わせただけ」と。

大手C社でも同様のことが行なわれていました。これもキャンセル住戸の再販においてで、販売初期から約1年を経過していたので、値上げしても後発物件を下回る価格だったそうです。

物の販売において買い手が殺到する場面というのは、大体が「セール」つまりディスカウントするというときです。

マンション販売では、値上げしても買い手が殺到するなどという世間の常識と反対の状況が起こるなんて、そんなことが本当にあるのでしょうか?

近い現象がありました。消費税の増額前に発生した「駆け込み需要」ですね。

近いと言ったのは、やはり根本的なところで異なるからです。消費税の増額の場合は、開始日を予告し、相当の猶予期間を置き、それまでは盛んに喧伝しますね。マンション販売で、「いついつから値上げします」などとPRしているでしょうか?

していないはずです。価格は伏せながら、買い手が前向きな気分に達したときにさりげなく値上げ後の価格を訳も言わずに提示するという方法です。

どこかに後ろめたさを感じながら販売しているように思えてしかたありません。

それでも当該物件を気に入って買うのは買い手の自由ですが、筆者が言いたいのは、売り手の言い値で買わずに少しでも値引きを勝ち取って欲しいということです。

値上げしたということは、十分な利益が見込まれているのですから遠慮は無用です。高いなと思ったら、「買いますから、値段もう少し何とかなりませんか」こんなふうに口火を切ってみましょう。

閑話休題、値上げは売り手の首を絞めることなのですが、業界は何を考えているのでしょうか? 

2年前、業者はもっぱらコスト上昇分を価格に転嫁するのをためらっていました。急な高値は顧客離れを起こすと恐れたからです。少し値上げして反応を見たい。どこまで値上げが通用するか様子を見ようとしていました。

ところが、この間に住宅ローン金利が一段と低下し、購買力が上がったのです。値上げの影響はさほどないと知ったようです。それからは堰を切ったかのように、それまでの相場の2割高、3割高の価格の売り出しが続きました。否、今日も続いているのです。

買い手は賢明です。値上がりを知らないわけはないのです。それでも手が出る買い手は、買いたいから買うわけです。それをいいことに業界は高値で売り出し、挙句の果てには販売過程で値上げする業者も出る始末です。

「赤信号みんなで渡れば怖くない」ということでしょうか? 他社がこうだからうちもと値上げ追随。そのうち買い手に背を向けられるに違いありません。

値上げした業者も、別の地域では販売に苦労し、値引き販売を強いられているのも事実です。その損を、値上げできる現場で取り戻せということかもしれませんが、買い手に通じる論理では無論ありません。

売り手には売り手の論理と事情があるのは理解できますが、値上がりトレンドの中で「便乗値上げ」や「恫喝的セールス」を続ければ、客離れを引き起すことになりかねません。そんな事態を希望するはずはないですが、危険水域に近づいている気がします。

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