第716回 シングル女子のマンション購入を改めて考えてみた

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。

コロナ禍によって、マンションどころではないと思ってしまった人も多い中、職業・勤務先によっては、今もマンション購入を検討している人は少なくないようで、ひところより減ったとはいえ、今日も具体的な検討物件についてのご相談が届きました。

さて、最近数年を振り返ると、ご相談者の中にシングル女子も少なくありませんが、女性特有の防衛本能なのか、慎重な人が多く悩みも尽きないようです。

住宅専門雑誌の「SUUMO」によれば、「シングルだけどマンションを買ってもいいのかな?」、「一人でローンを組んで大丈夫?」、「将来結婚するかもしれないし、なかなか購入に踏み切れない」、「マンションを買いたいけど誰に相談したらいいのか分からない」といった悩みがあるのだそうです。

今日は、こうした悩みを踏まえつつ、シングル女史のマンション購入について書こうと思います。

●まさかが起きる。それが世の中だ

少し過去を振り返ってみます。

2008年に起きたリーマンショックのとき、当初は日本への影響は小さいと言われていました。しかし、影響は世界中に広がり、世界金融危機、世界同時不況と言われる危機的な状況に発展、日本も例外ではなかったのです。

このとき、マンション業界の中堅デベロッパーが多数破たんしました。かれこれ10年前のことです。

言うまでもなく、直近の新型コロナ禍は、未曽有の世界大不況を招きかねない恐るべき事態です。

今日の世界は国境があってないようなもの、たとえ、私たちの知らない場所で起きた小さな事件や禍も、世界に飛び火し大火となる時代なのです。

「1990年代はまさかの時代だ」と語ったのは故・堺屋太一さんでした。ベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツがひとつになったこと、冷戦が終わったことなどを指して表現したのでした。

2000年代も、全く予想だにしなかった事件や変動が起こって何度も世間にショックを与えました。例を挙げればキリはないですが、重要な事象では銀行に預けた預金も安全ではなく、保障されるのは1000万円までとなったことがよみがえりますます。

護送船団と言われ銀行はつぶれないと言われていたのに、その安全神話は崩れ、日本中の銀行がたくさん破たんして行った過程で決められた制度です。大手都市銀行さえも多数消滅し、生き残りのために合併も多数行われました。東京三菱UFJ銀行という長い名(現在は三菱UFJ銀行)のメガバンクは合併の結果です。

1980年代に起きたバブル経済の勃興と1990年代初めの崩壊も、そのころは予想外のできごとだったのです。株価は1989年12月末に39,000円弱と高値をつけ、これがピークでした。

暴落して底を打ったときの平均株価は7000円台だったと記憶しています。その後、上下動を繰り返しながらも持ち直し、25年後の今日は20,000円前後です。このような大変動を誰が予想できたでしょうか? 

足元のコロナ禍は、働きかたの改革を強要しています。自宅での勤務、出勤時間の変動などで、都心通勤者が減ればマイホームへの考え方も今後は変わって来るかもしれません。

●不動産価格の変動と土地神話の崩壊

話を戻しましょう。

少し前の「不動産バブル」にも目を向けてみます。

かつて、土地を持っていれば必ず儲かると信じられていました。

企業においては、購入額が簿価として計上され、その後の値上がりによって「含み益」をもたらされる。膨らんだ不動産価格を担保にすれば簡単に銀行融資を受けられる。つまり、土地は錬金術に欠かせない、いわば「打ち出の小槌」になり得ました。

景気が悪化して売り上げが減ったようなときでも、足りなくなる現金を借入金で賄うことが可能になったのは、土地・不動産のおかげでした。

企業は、「いざというときは土地が会社を救ってくれるから、余力のあるときはとにかく土地を買っておこう」と動きました。そして、買った土地には、本社社屋を建設したり、貸しビルや社宅を建てたりしたのです。

土地は買ったら持ち続け、簿価と時価との差が生み出す「含み益」を資金調達に活用することが可能なので、企業が土地を買い占めました。バブル期には、企業の土地買い占めに拍車がかかりました。「買うから上がる、上がるから買う」という循環を生んで不動産バブルが勃発したのです。

その後、政府は暴騰・狂騰と表現された異常な地価の高騰を抑えるため、土地取引に届け出制もしくは許可制を導入しました。その効果はてきめんで、やがて地価は暴落し、バブルは崩壊しました。それは土地神話の崩壊でもあったのです。

●マイホームの値上がり・値下がり

30年以上も前(1988年以前)にマンションを買った人の多くは、大きな値上がりを体験しました。タイミングや購入した物件・場所によって差はあるものの、短期間に我が家が2倍、3倍になったことで驚いたものです。しかし、現に住んでいる家の値段が何倍になろうと、何の得もありませんでした。むしろ、固定資産税がアップしたことで苦々しく思った人もあったはずです。

一方、売却した人は、高値に驚くとともに手にした金額に喜び一杯だったことでしょう。ただし、その資金でもっと良い住まいを手に入れようとすると、郊外のまだ値上がりの波が及んでいない街へ行くほかありませんでした。

売却した場所の近くは同じように値上がりしていたため、売却して得た金銭に(新たなローンなどで)プラスしなければランクアップした家は買えなかったからです。

しかし、バブル期に高額な住まいを購入した人は、その後の極端な値下がりを体験することとなりました。

そして、何かの事情で売りたいとなったとき、現実の厳しさにぶつかりました。売却して得る金銭では住宅ローンの残債を清算できないことを知らされたからです。いわゆる追い銭が必須でした。結局、売るに売れず、持ち続けるしかなかったのです。

●値下がりしても売らなければ損失は確定しない

このようなことを知ってか、知らずか、2010年以降、再々度の高騰期迎えた過程ではマンションを購入することをためらう人が増加しました。

ポストバブル期、安値に売却を断念した人も多かったのですが、これは、含み損を抱えてしまったものの、損失が確定しないで済んだということを意味します。つまり、値下がりしても、売却しなければ損は表面化しないことを私たちは知ったのです。

筆者が「マンションの評価レポート」の中で述べて来たのは、「高値掴みに注意」でした。しかし、直近では大なり小なり、どれを買っても高値掴みになる懸念が拡大し、注意喚起ではすまない状態が続いています。

ともあれ、結果的に「高値掴み」をしてしまった人は、どう考えたらいいのでしょうか? そうです。もうお分かりのように、個人の場合、売却しなければ損も得もないのです。

値下がりしても気にすることない。そう割り切れれば気楽なものです。金利変動リスクだけに対処し、あるいは分不相応な借り入れをしなければ問題はありません。住み替えの必要が生じたときも、自宅を賃貸して保有をし続け、売却のタイミングを待てばいいのです。

●「持ち家は負債を背負うこと」という意見もある

ローンを組んでマイホームを購入するということは、大きな負債を負うことになります。今は低金利で「家賃並み、もしくはそれ以下で買える」と簡単に営業マンは言いますが、ローンの返済だけでなくマンションなら毎月の管理費、修繕積立金も必要ですし、すべてのマイホームで固定資産税が必要になります。また、光熱費も増えるかもしれません。

このように、かなりの追加費用が必要になることを計算に入れておかなければなりません。賃貸住宅とマイホームの費用を対比したものが、下記の表です。

※住居タイプ別 生涯必要費用の項目※

戸建て住宅 分譲マンション 賃貸住宅
固定資産税 都市計画税 不動産取得税(取得時の1回のみ) 固定資産税 都市計画税 不動産取得税(取得時の1回のみ) 入居費用(敷金・礼金・仲介手数料など) 更新料(2年毎)
火災保険料 火災保険料 火災保険料
修繕費 修繕費(積立金・一時金)  
購入代金 購入代金 家賃
ローン金利 ローン金利  

こうして見てみると、マイホームには賃貸住宅にない費用負担が出てきますし、普通の人には住宅ローンという負債がつきものです。しかし、家族の生活と未来を守る「保険」としての位置付けにもなりますから、持ち家=負債、負債は重いと考えるのは短絡的です。

家を買うというのは、万が一という予測不可能な将来に対して備えること、という考え方もできるのです。

一般的に、高い賃料を払う生活を続けながら定年時に全額現金購入できるだけの貯蓄をするのは至難の業ですが、マンション購入の選択は上手な買い替えを繰り返すことで頭金が増えて行き、終の住処は全額現金で購入することも可能です。

つまり、住みながら、かつローン返済をしながら儲けることも可能なのです。

勿論、買い替えを考慮しなければ、長期ローンもいつか終わり、無借金のマイホームが残りますが、平均余命が伸びている現在、人間の余命より購入した住宅の余命が短い(中古で購入の場合)という問題に直面する危険を考えると、定年後は新築か築浅の住まいに買い替えることを想定しておいた方が良いかもしれません。

そのためには、現金でマイホームを持てる長期的な資産形成戦略が必須となります。

(長期的な資産形成戦略は別の機会に書きます)

●住宅ローンは強制貯金?

住宅ローンは負債を抱えるようなものだという考え方に対比されるのが、強制貯蓄という考え方です。その説明も加えておきましょう。

頭金を貯めるスピードが遅い人にも、買いたいと思う時期がやって来ます。ライフステージの転換期に住み替えを検討し、賃貸より購入した方が得らしいと気付き、少し無理してでも家族のために買おうと決断する父・夫がそこにいます。

日頃、筆者は思い切って購入する道を選択するようお勧めしています。住宅ローンの返済は貯蓄そのもの、まさに強制貯金のようなものだからです。

・・・・・理由を説明します。

その昔、住宅ローンは元利を合計すると借りた金額の3倍も払うことになると言われていた時期がありました。金利が高かったからです。

バブル末期1990年の住宅ローン金利(銀行)は8.5%でした。この頃に1000万円を35年返済で借りると、毎月の返済額は74,686円、35年の返済総額は約3136万円となります。3倍以上です。

これに対し、直近(2020年5月現在)の金利は35年固定でも1.2%程度なので、毎月返済額は29,170円、35年合計で1225万円に過ぎません。

さて、注目点は元金の減り方にあります。借りてから半分を過ぎた辺り、18年後の元金残高の差を比べてみます。

8.5%のローンの場合、18年後の残債は約800万円ですが、1.2%の方は約538万円です。

前者は18年間払い続けたにも関わらず、20%しか減っていないのに対し、後者は46%も減るという大差がつくのです。

要するに、高金利時代は「返しても返しても大半が金利に消え、元金が中々減らなかったのですが、現状の低金利の下では、返済金の大半は元金に回るので、ぐんぐん減って行くのです。

ちなみに、返済金の元金と金利の内訳をみると、8.5%の場合、初回返済月は74,686円のうち元金が僅か3,853円、金利が70,833円にもなっています。18年後でも元金が17,574円、金利はまだ57,112円もあるのです。

これに対し、1.2%のローンでは、初回が元利合計29,170円のうち、元金19,170円、金利は僅か10,000円です。18年後は元金23,766円、金利5,404円と、金利は一段と少なくなるのです。

全額借金で購入した場合、100のマンションも正味資産としてはゼロですが、借金が半分に減れば正味資産も50まで増加するわけです。これは返済金のうちの元金部分が不動産という資産に置き換わったことを意味します。

借金は嫌でも返さなくてはならないので、貯蓄を強制されているようなものです。そうして、いつの間にか大きな額の貯蓄残高を持つことになるのです。ただし、簡単には解約できない(換金ができない)貯蓄というわけです。無論、元本保証の貯蓄でもありません。この部分は後述します。

このような絶大な効果があるので、貯蓄下手かどうかを問わず、マンションを買うのは資産形成の観点から意義あることになるのです。

●増える貯蓄か元本割れしてしまう貯蓄か、そこが問題

毎月の返済金の大半が不動産に形を換え、いつの間にか積み立て貯金のように増えて行くことがお分かりいただけたとして、疑問を感じた読者もあると思います。そう、この貯蓄は元本保証型ではないのです。

お分かりのように、マンションという不動産は選択を誤れば大きく増えるものもある代わりに、思ったほど増えないものもあるのです。

上記例の18年返済して来た結果、貯蓄はゼロどころか、マイナスになってしまうこともないわけでなく、逆に100にも150にもなり得るのです。

資産価値が100だったマンションが18年後に50になってしまうか、100以上になっているかによって、売却で銀行清算をした後に手にする額、すなわち正味資産の額がまるで違ったものになります。

マイナスもあり得るのは、ローン残債以上の額で売れないものがあるからです。借金がなくなってしまえば、マイナスはないわけですが、残債がある段階で買い替えの必要が出てきたとき、売るに売れない状況になるかもしれないというわけです。

このようなことにならないようにするには、購入する物件の将来価値を読む目が必須と言えます。

●買い時はいつも今である

私たちの周囲を見てみると、快適なマンションライフを手にしている人たちに共通するのは、いち早く購入しているという点です。既にローンを完済し、日々ゆとりある暮らしを送っていたり、買い替えも実行して、優雅な老後を過ごしていたりします。

よく、金利が安いから買いだとか、価格は今後下がって来るから様子見が賢明だとかと、「したり顔」の専門家?を見かけますが、それは人生の中では一瞬のことに過ぎません。

金利の動きは誰にも読めません。毎月の返済額を減らそうと、これから時間をかけて頭金を増やしても、いざ借りるときに金利が上がっていたら、返済額が減るどころか増えてしまう可能性もあります。

今は低金利が続いているから、今後は金利が下がる余地よりも、上がる可能性のほうが大きいかもしれません。でも、ずっと横ばいということだってあります。結局、金利の動きは誰にも読めないから、欲しいと思える物件と出会って、余裕をもって返していける資金計画が立てられるなら、そのときが買い時とも言えます。

価格の変動でも同じことです。金利よりは読みやすいですが、それでも、予想は絶対ではありません。

金利にせよ、価格にせよ、その動向に一喜一憂しながらマイホームの買い時を探すという考え方は、本末転倒と言って過言ではありません。

ところで、モデルルームを見学に行く人の理由にはどのようなものがあるのでしょうか。

結婚や転勤などの事情がある人も中にはありますが、ほとんどの人が今スグに買わなければならないという事情を抱えているわけではないはずです。

「家賃が勿体ないから」とか、「現在の住まいが手狭なので」、「いつかはマイホームを持ちたいと思っているから」などと、やや漠然とした動機や背景があって見学に行くはずです。

きっかけは、「近くにマンションができたから」、「友人から勧められて」、「転居したお隣さんに刺激を受けて」、「家賃が上がるので」といったものが多いようです。

住宅購入経験者の事例を調べてみても、切迫した状況にはなく、急がない人たちばかりです。しかし、急がないのに何故マンションを買うのでしょうか。

これは、夫婦の出会いに似ています。たまたま縁があって購入したというケースが多いのです。「この人と一緒にいたい、家庭を持ちたい」ということと似ています。例外もあるでしょうが、結婚を経済的損得で測るわけではないのと同じと言えます。

結婚するとき考えるのは、せいぜい「この収入で生活していけるかな」ではないでしょうか?それも将来のことではなく、目先の問題として考えるのではないかと思うのです。将来起きるだろう子供の教育費など支出の増加と、それを賄う所得の増加まで検討して結婚を考える人は殆んどいないはずです。漠然と自分の未来を予測しながらも、「家族のために頑張る」といった思いが優先しているはずです。特に男はそうです。

これを住宅購入に当てはめたら、「新しい家に住みたい」などの動機が先ずあって、次に「この収入で当分の間、住宅ローンを払っていけるか?」にはならないでしょうか?20年先、30年先のことを、どれだけ研究しても、また人に相談しても答えはどうせ見つからないのですから。

●単身女性こそマンションを買うべき

そう考えると、買い時はいつかと考えるのではなく、「欲しい・買いたい」という動機があって、次に「今の収入なら無理なく払える」を決め手としても、決して乱暴な話ではないと思うのです。

女性の過半は、マイホーム取得は夫婦共同の事業だから結婚してから二人で考えればいいと思っている節があります。何にも考えていない女性も多いというデータもどこかで見た記憶があります。

その一方、20代にマンションを買ってしまったシングル女史もあります。筆者へのご相談者の多くは30代後半から40代ですが、皆さん「独身を貫くことになりそうだから」と語ります。うがった見方をすると、マンション購入は生活防衛なのです。万一、生涯を独身で通すことになっても「家なき子」になる不安は解消できると考えているのでしょう。

「結婚したら、買った家は無駄になる」などという考えもよぎるようですが、筆者は「購入マンションの選択を誤らなければお荷物になることはない。夫婦でローンを組んでマンションを買う計画が持ち上がっても、既に買っていたシングル用マンションが障害になることはない」と助言しています。

筆者の娘も、買ったマンションを今は賃貸しており、住宅ローンの返済に苦労している様子はありません。重荷に感じるということも無論ないようです。

結論を急ぎましょう。簡単に言ってしまうと、シングル女性でも同じですが「買いたいと思ったときが買い時」なのです。貴女が今、マンションのモデルルームを見学に歩いているか、見学に行きたいと思っているなら、将に今が買い時なのです。

マンションの買い時は、時代や経済状況や価格・金利の変動とは無縁であって、「買いたいという気分の今こそが貴方にとっての買い時」なのです。こう考える方が、きっと悩まずにすむのではないでしょうか。

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