新築と中古では、営業マンに差がある

 新築マンションの営業マンと中古マンションの営業マンとの間には大きな差がある。優劣の問題ではないが、質的な差が明確に見られるのである。
 モデルルームに詰めて仕事をする新築マンションの営業マンに対し、中古マンションの営業マンは、流通店舗に詰めて仕事をする。新築マンション担当の場合は、取り扱う商品が一つしかない。完売するまでの一定期間は、同じ物件を担当する。これに対して中古マンション担当は、多数の物件を扱う。不動産流通機構に登録された大量の売り物件の中から、買い手の希望条件を満たす物件を探して紹介するというスタイルである。
 
 これは、何を意味するかというと、新築マンション担当の場合は、物件情報に関して深く研究する立場にあり、中古の場合は表面的なことしか知らない場合が多いということである。新築の場合は、特定の品物を売るために徹底して商品知識を把握しようという方向に活動するのである。建築物としての構造や仕様、アフターケア、管理といったことに関して周知して販売に当たる。一つしかない担当商品を売り込むには必須の学習というわけである。相手する顧客が皆同じ物件目当てなので、必然的に詳しくなるという事情もある。もっとも、勉強不足の営業マンも少なくないが。。
 従って、買い手は営業マンにどんどん質問すればいい。見えない部分まで深く知っているから大抵は即座に答えてくれる。しかも、もし何かあれば売り主責任になるので、慎重な対応をしてくれる。こうした面では、買い手にとっては、新築マンションは安心できると買い物と言えるかもしれない。
 
 一方、中古マンション担当は、顧客がAを気に入らなければBを、Bも気に入らないときはCというふうに、次々に物件を紹介すればいいので、深く研究する必要を感じてないようだ。来店客の希望を聞けば、地域的にはある程度絞られているものの、広い地域で探すということになれば、一体どれだけのマンションを知らなければならないのか。気の遠くなるような数である。一定地域に絞ったとしても、物件個々の内容に精通するまでには途轍もない時間がかかる。折角詳細を調査して販売に臨んでも、同じ売りマンションが新築のように多数あるわけでないので、別の業者が成約してしまえば、勉強したことが無駄になってしまう。同じマンションの売り物が直ぐに出てくれば無駄にはならないのだが、テリトリー内のマンション全部に精通するまでには相当な時間が要るし、そんなことをしておれないのも実態なのであろう。
 担当する営業マンに経験が足りないときの買い手は、気の毒である。現地案内のとき、「自分も実は初めてです」という営業マンもいる。それほど無知のままで販売(仲介)を担当していることが少なくないからである。
 買い手は売り物件の説明書に記載された重要事項と、自分の目で見た範囲の情報で判断するしかない。引き渡し後に何かあっても「現状有姿」すなわち見たままの状態での取引が中古の場合は常識であるし、契約書にも明記してあるから、文句の持って行きようがない。しかも売主は大抵個人だから、瑕疵が発見されても逃げようとするばかり。仲介した業者も担当営業マンも契約書を楯に取りあわない。
 中古マンションを検討するときは、買い手の自己責任による取引と考えるべきであろう。物件情報に精通していても、大事なことを隠して教えてくれない営業マンでは同じことだが、中古マンションの担当営業マンは物件に関する限り無知と思って多くを期待しない方が賢明なのである。安い中古マンションを買うなら、買い手もよく勉強をしてから動いた方がよさそうである。
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