売れ残りが多い会社は要注意

マンション分譲というビジネスは、資金さえあれば、パートナー企業とのコラボレーションによって誰にでもできるように見える。このため、しばしば異業種からの参入が繰り返されて来た。

 古くは、品川燃料、フランスベッド、帝人、カネボウなど、最近では、メルシャンワイン、アートコーポレーションといった企業名が浮かんで来る。その他にも、三菱電機(ライフサービス)、三洋電機(三洋ホーム)、旭化成(ホームズ)といった企業も、子会社の事業とはいえ、異業種組になる。

 歴史あるデベロッパーも、多くは鉄道系や商社系、鉄道系、金融系、ゼネコン系、メーカー系といったグループ名で呼ばれるように、元々はみな異業種です。最初から不動産業のマンションデベロッパーというのは、中小まで含めれば多数あるものの、大手にはあまり多くない。三井、三菱、住友の財閥系とマンション専業の大京、藤和といったところである。
 巨額の資金が必要なマンション事業には、本業で歴史を重ね、資産蓄積が豊富な企業の参入がしやすいという一面があると考えられる。

 事業ノウハウは、設計事務所やゼネコン、販社などのパートナー企業の力を借りれば足りると考えられている。平たく言えば、金さえあれば誰にでもできるビジネスと見られがちで、その傾向は今も変わらないと言ってよい。
 大型マンションの場合、売主に名を連ねている名前だけの事業主もあるが、これなどは、単に便乗収益を目的にしているだけのことがあるし、リスク分散が狙いかもしれない。パートナー企業からノウハウを学ぶことが目的ということもある。
 
 ともあれ、新規参入企業は、ノウハウを学びきらないうちに、不況と遭遇して撤退してしまったという過去の例は無数にある。しかし、親会社に豊富な資産があり、資金繰りを支えてくれることから、しばらくの間は、事業を継続していく。
 専業マンションメーカーですら金融危機と、それをきっかけとした急速な景気後退という大きな激流に呑みこまれてしまった2008-2009年。その多くは、資金繰りの行き詰まりであった。つまり、販売不振が大きな影響を与えたのは確かだが、専業で歴史の浅いデベロッパーは、販売不振が資金繰りに直結してくるため、結果的には銀行に翻弄されてしまう傾向が強いのである。
 同時期に苦戦した異業種デベロッパーが生き残ったこととは、対照的な現象である。昔と違って、銀行の考え方も随分変わってしまったものである。
 
 今後どのような事態が起こるか分からないが、中小のデベロッパーにとっては厳しい時代になった。しかし、販売が順調に行けば問題はない。そのための危機管理ができる中小ならば、今後も生き残るであろう。 買い手にとって、気に入ったマンションが、たまたま中小デベロッパーの物件だったときにどう判断するかが重要であるが、親会社が歴史ある大資本なら一応心配はないが、そうでないときは、そのマンションを含めた販売状況をチェックすることを勧めたい。建物が完成して半年以上経過し、まだ販売している、そのような売れ残り物件が多いときは要注意である。 ご購読有り難うございました。  三井健太
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