マンション管理にもっと関心を持とう!!

 このほど閣議決定された政府の経済対策の中に、老朽化したマンションの建て替えを促進するため、「容積率の緩和」が盛り込まれた。建築時に容積200%だったマンションが、仮に300%に容積が増えれば、増加した100%分に相当する床面積を販売して得られる収益が建築費の一部になるため、建て替えがしやすくなるというわけである。だが、それで全体の建築費を賄うことができるわけではない。新築時に比べ、地価が大きく上昇していれば、それも可能であるが、そのような例は稀有である。
建て替え時期が迫っているマンションでは、経済的に余裕のある人が残っている確率は低い。従って、建築資金の拠出が平等にできるかは極めて疑問。代替わりしていても、高齢者も中にはいる。老い先短いから、このままでいいと反対する人も多いはずである。法律では。5分の4の賛成で建て替えはできるが、現実は反対者がいれば建て替えは進まないのである。
 政府の決定は、幾分は後押しになるかもしれないが、効果のほどは疑問と言わざるを得ない。
 
 結局、いつかマンションはスラム化し、誰も住む人間がいなくなったときに、建て替えが実行されるのかもしれない。そんなことにならないように、国も業界ももっと知恵を絞る必要があるだろうし、所有者としては、建て替え時期を先延ばしするためのメンテナンスに、もっと熱意を持って取り組む必要がある。
 これは、これから新たにマンションを購入する人に、入居後の覚悟を迫るメッセージである。
 管理会社に任せっきりにするのではなく、自分でしっかり監視し、定期的な大規模修繕を含む適正な維持管理をしてもらってこそ、自分のマンションの資産価値は保たれるということを認識しておくことが大切なのである。
 仮に、これから10年くらいしか住まない結果になったとしても、維持管理の状態が満足できるようなものであれば、売却の際、次の買い手に喜ばれるだろうし、高い値がついたあなたも満足できるはずだ。
 反対に、スラム化一歩手前になったら、出て行きたくても、希望の値で売れない。仕方なく賃貸したが、家賃は下がる一方。やがては本物のスラム化。手放すときには、二束三文だったなどという終末の姿を想像することは現時点ではできないに違いない。しかし、最後のマンションには、ひょっとすると寿命が延びて30年も住むことになるかもしれない。快適に住むためには、メンテナンスが不可欠であり、お金もかかる。年老いて、いざというときに、積立金が不足していては困るはずである。そう思うと、マンションの管理に無関心ではおれないはずである。そうなる前に売って出て行けばいいさと、タカをくくってしまう人には、いつかツケが回って来るに違いない。近頃、そんなことを強く感じる。
 
・・・・・・ 「三井健太のマンション相談室