モデルルームに騙されるな!

新築マンションの販売現場には、殆んど例外なく豪華なモデルルームが備えられている。だが、しばしば演出の見事さに買い手は錯覚をしてしまうようだ。入居後、正確に言えば、建物が完成した時に行われる入居者検査(内覧会)で、購入した実際の部屋を初めて見たら、大抵の人が一瞬「あれっ?」と思うのである。
化粧した姿しか見てない女性が、突然スッピンで現れて見間違う、あの一瞬である。図面で見た部屋の実際はこんなものかと、いくばくかの落胆がそこに生まれる。しかし、図面通りに完成しているから、どこに文句を持っていくこともできない。錯覚していた自分が悪いのである。中には、天井の高さがモデルルームとは明らかに違う、などど、クレームをつける購入者もいるが、大抵はそれも錯覚に過ぎないのである。子供部屋の梁が大きく出っ張っているようなケースも、図面上はきちんと表示されているから、業者に落ち度はないのである。図面をよく見なかった自分が悪いという話である。モデルルームの残像は強烈に記憶に残るもので、ある程度は仕方がないが、そこに、売り手側の意図が明確にあるのは間違いない。
図面を見慣れた業者の人間ではないのである。見落とすこともあるはずである。だが、「ここは梁がありますから、梁下から床までの高さは1900ミリしかありません。梁が内側に30センチほど出ておりますから、こちらの部屋とは同じ6帖でも、だいぶ狭く感じられることでしょう。これらの点を予めご承知おきください」などど、説明する営業マンはいない。質問しすれば答えるが、聞かれない限り、都合の悪いことは黙っている。後でクレームをつけられても逃げる手はきちんと打ってあるから心配ない。これが、普通の営業マンの態度である。習性みたいなものと言ってもいいだろうと思う。
モデルルームは着飾った娘さんが写真館に行って撮って来たお見合い写真のようなもの。しかも、欠点は修整してあるから、実際に会ったときとギャップはかなり大きい。そういった性格のものと認識しておく必要がある。
マンションに限らず、商品というものは、その価値を高く見せるために展示方法に工夫を凝らす。言うまでもないことである。だから、マンションの展示に演出を施すこと自体には、何ら文句をいう筋合いはない。だが、程度問題ということは言えるかもしれない。
モデルルーム演出の実態を整理してみると、
1.存在しない間取りを展示している  (特定タイプの一部を設計変更。例えば4LDKを2LDKに改造。これにより、狭い部屋のない状態にして見せることが可能になる)
2.オプション品を多数装備し、価格表に記載のない高価格商品を展示している(有料オプションの食器洗浄機やIHクッキングヒーターに交換したり、ワンランク上級の金物や仕上げ材を使用したり)
3.価格には含まれていませんと断り書きをしてはいるが、家具・インテリアが絶妙に配置され、夢見心地にさせる演出を一段と強化している
4.大抵は、当該マンションの中で「専有面積の広い少数タイプ」を展示している
ざっと、この4点が特徴である。マンションが完成してしまえば、モデルルームは建物本体に移行するので、上記の問題は一部消える。しかし、完成してから販売しているマンションは、売れ残りなので、何らかの問題があるということでもある。また、間取りだけが気に入らないというケースでは、完成していないマンションの方が設計を変更してもらえるという点で都合がいいのである。(時期にもよるが)
さて、マンション業者の商品展示方法を批判しても仕方ないので、錯覚に陥らないための方法を自衛手段として講じるしかないが、どうすればいいのだろう。
答えはこうである。売れ残りの完成マンションを探して見に行く。もちろん買おうとしている間取りに近いタイプである。マンション情報サイトを丹念に当たれば見つかるだろう。相手の業者さんには悪いが見せてくれるはずだ。
そして、感覚をつかむといい。柱や梁の出っ張りがいかに部屋を狭く見せるかが分かることだろう。廊下の寸法、キッチンの広さ、リビングダイニングの広さなども実際に近いものを見て感覚を掴むのである。また、完成マンションの場合、モデルルームは多くても3室程度しか用意していないので、自分が見たいと思う部屋は家具も何もない「素」の状態で見ることが可能になる。それも役立つに違いない。
類似のマンションがないときは?
そのときは、空室になった中古マンションか、知人の部屋を見せてもらうしかない。

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