灰色のマンション

 マンションの駐車場は、東京都心などを除くと、大体において戸数分を確保されることが多い。だが、そのためには、設計上かなり無理をする。超高級マンションなら、地下を掘って造っても問題はないが、一般的なマンションではそうはいかない。分譲価格がはねあがるためだ。
 300戸を超えるような大型マンションなら、自走式の2階建て屋外駐車場を建設してもコストアップの比重も小さくてすむが、100戸以下の中小型マンションが厄介である。
 屋外に、また、ピロティと呼ばれる建物の1階の壁のない所に、2段駐車機を設置したりして数を稼ぐ。屋外の平面だけでは不足するからだ。
 勿論、先に敷地の南側に建物を寄せて北側を大きく空け、そこに可能な限りの駐車スペースを確保するようにする。それが普通である。ところが、その場合の姿は、何とも興ざめするものである。
 車路も確保しなければならないので、屋外平面駐車場は、大きな面積を必要とする。そこは、コンクリートを流し込んで作るから、ほとんど灰色の空間である。白い線と車止めが無味乾燥な姿で描かれる。植栽する余裕がまるでない。そのようなマンションは味気ない。資産価値も高いとは言えない。
 対して、時間の経過とともに木々が育ち、美しい景観となるマンションもある。古くなればなるほど価値が上がると言っても過言ではない。そんな緑に覆われたマンションも少なくないのは、ご存じのとおりである。
 新築マンションの購入を検討するとき、ここを見逃してしまう人が多い。図面だけで購入を決めるのだから仕方ないかもしれないが、間取りや設備、駐車台数などに気を取られて気付かない。玄関周りや1階住戸の窓先から敷地境界を描いた予想図の僅かな植栽を見て錯覚してしまい、大きな空間が灰色であることに気付かないのである。
 正確に言うと、置かれた自動車がカラフルなので灰色ではないが、自動車が大半外出しているときの姿を指して言っているつもりである。一部に機械式駐車場も大きく構えていたりすれば、もっと殺伐な印象が強まる。マシーンが与える硬質なイメージは人の生活する空間にそぐわない。そう思うのは筆者だけだろうか。

 住まいは、時の経過とともに価値が上がるものでなければならない。人が住み、丹精込めて育てた草花や木々と住み手が作ったコミュニティとが住まいの古さを補ってお釣りがくる。そんなふうになっているマンションや一戸建て団地が現実に多くある。それに対して、緑を育てようもない灰色のマンションは、愛着も湧きにくく、従ってコミュニティも育ちにくいと言ったら、言い過ぎだろうか。
 ともあれ、購入する際は、こんな所にも気をつけたいものである。

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