東日本大震災で西日本のマンション価格が影響?

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介/構成:①マンション選びの重大ポイント②不動産業者と営業マン③一戸建てかマンションか④郊外か都心か⑤持ち家か借家か⑥購入資金⑦その他の疑問・悩みなど・・・について毎月5と10の日に投稿しています。

「今、このような質問をするのも気が引けますが、東日本では地震や停電、放射能の危険が言われています。この状況は、西日本の地価にはどのような影響を及ぼすでしょうか?
 私は地震が少ない西日本の政令指定都市に住んでいますが、中古のマンションを購入しようと考えています。今後、景気が更に悪くなり、失業者が増えた場合、中古価格も下がることを想定しています。
しかし、都市自体が安全なのでそれほど下がらない、むしろ上がるという考え方も出てきました。――――いかがなものでしょうか?」
これは、ある質問サイトに投稿された記事です。これと類似の質問が、私のところにもいくつか寄せられました。これにどう答えたかという話をしたいと思います。
相対的価値という意味では、一時的に西日本が東日本より上になるでしょうが、絶対的な不動産価値が上昇するわけではないと思います。
理由の一つは、震災の影響が西日本ではプラスに働く部分(東日本の代替生産など)とマイナスの部分(自粛消費など)の両方があるため、大きな経済浮揚効果がもたらされるとは思えないことが挙げられます。
理由の二番目は、長期的な観点ですが、東北地方の、ある町で起きたように、役場ごと集団疎開する例が増えて東日本の人口が西日本に大量流入するようなことが起これば、西日本の絶対的な土地需要が増えることでしょうが、そうはならないということです。
基本的に、人が集まるところでは、経済活動が活発になり、土地需要が高まって地価の上昇も起きます。しかし、今回の大震災で、民族大移動は起きるでしょうか?
ちなみに、東日本において、恐いから国に帰ると動いたのは外国人だけではないでしょうか?東日本から親戚などを頼って西日本に移住した人も僅かです。合計しても、比率にしたら、コンマ以下の微々たる数です。
西日本の地価・不動産価格が上昇する可能性は、人口移動の面からは極めて小さいと言えます。
ところで、1995年、地震がないと言われた阪神間が1000年に一度の大地震に襲われ、高速道路までが倒壊する被害に遭いました。今回の地震では、過去の教訓で設けた防潮堤が役に立たず、津波で壊滅した町がありましたし、安全と言われた原発が破壊されました。海岸から遠い集落でも、川沿いでは津波の被害がありました。
その一方、同じ東北の原発でも宮城の女川(おながわ)は無事でした。阪神大震災でも、一戸建てが壊滅した中、新しいマンションは無事でした。また、日本では、台風による災害も毎年のように発生します。関西は「活断層の巣」とも言われ、真上に都市基盤があります。

「想定外の出来事」という言い訳が飛び交っている現況を見て感じることは、人間が自然災害の対策に動くのは、いつも災害がやって来てからだなあという点です。また、「天災は忘れた頃にやってくる」という言い古された教訓も改めて思い出されます。
このような意味から、投稿者が「都市全体が安全」というのは、西日本のどこの都市のことか分かりませんが、私は、日本全国どこも同じではないかと思っています。
話を元に戻します。
日本経済は、今後しばらく停滞を余儀なくされるでしょう。自粛ムードで個人も企業も不要不急の消費を減らし、電力不足で東日本の企業活動が縮小しています。直接的な影響で生産が減少している企業もたくさんあります。夏場には更なる電力不足の影響が懸念されています。放射能汚染の懸念から、農林水産業も打撃を受けており、輸出にも影響が広がっています。
しかし、危機に直面したときの日本人の叡智や団結力、適応力は凄いものがあると信じてよいと思います。また、自粛や委縮は必ず反動します。娯楽も人間には不可欠ですから、レジャー産業や観光産業も、東北地方を除き早晩回復へ向かうでしょう。経済が活発にならなければ被災地の応援もできないのです。
そうしたことを踏まえて、GDPが一旦マイナスに落ちたことは間違いない現在、そこから地震前に戻るのはいつか、多数のエコノミストが探っています。その折り、根拠もなく私ごときが発言するのは正直はばかれますが、あえて述べれば、2年余の時間が必要ではないでしょうか。
リーマンショック以後の低迷から、元の状態に戻るまでに至らない内に今回の災害が起こったわけですが、それでも目前でした。つまり、回復まで約2年半を要したであろうということですが、そこから推して、事情は異なるものの、今震災の広範な影響による経済危機からの完全脱出まで2年余が必要かもしれないと思うのです。復興需要というのも考えられますから、実際はもう少し早まるかもしれないとも思いますが、どうでしょうか?
過去の経済危機、例えばオイルショック、円高不況といった衝撃的な出来事も短時間で乗り越えたのが日本です。被災地においては、あたかも戦後復興のような長い時間がかかるかもしれません。しかし、東京圏においては電力不足の問題の影響が読めない部分があるとはいえ、1年くらいで地震前の水準に戻るのではないかと思います。
さて、その間はマンション需要も一旦減退し、価格が下がる方向に向かうかもしれません。特に、東京圏はその可能性が高いかもしれません。西日本も決して例外ではないでしょう。西日本だけ経済活動が活発という状態が続いたとしても、それは目に見えるような高いレベルにはならないと思うからです。
3月25日のブログで述べたように、予想される建築費の高騰が現実になれば影響を受けるでしょうが、たちまちマンションの分譲価格に反映されるほどではないと思います。需要が減退する情勢下では、建築コストを単純に価格に転嫁できないとの判断に立つ事業者が多いと考えるためです。
西日本では、売れ残りマンションもまだ数多く存在します。東日本より景気が良くなり需要が伸びるとしても、活況を呈するまでには至らないでしょうから、価格の上昇が起きたとしても僅かでしょう。新築市場がそうであれば、中古も同じです。向こう2~3年、マンション価格が大きく上がる可能性は東西とも低いと考えざるを得ません。

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