「マンションの新築内覧会で建築士を同行する」は意味がない?

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
<専門家にマンション内覧会をチェックしてもらう意味>
マンションの内覧会のチェックを専門家に依頼する人があります。勿論、有料ですが、その金額は10万円~30万円。決して安くはないようです。このことについて考えてみましょう。

マンションの内覧会でのチェックは、目に付きやすい傷や汚れなどは直ぐに見つかりますが、マンションの設備や配管などの分野ではチェックが難しいものもあるため、建築士など専門家に依頼するのは、それなりに意味があります。

実際に起こりがちな施工ミスやチェック漏れの例を挙げてみましょう。

①バルコニーの傾斜不足(バルコニーは外側に向かって雨水が流れるように傾斜を設けてあります。万一、傾斜がないか逆傾斜になっていれば、大雨の日に室内に水が浸入して来る可能性があり、危険です)

②フローリングの浮き(見落としてしまう場合があります)

③扉が床をこする(何回か開け閉めするか、フル開閉しないと見落とすことがある)

④排気ダクトの接続不良(天井を覗かないと分かりません)

⑤ダウンライトと近すぎるドア(ドアを開けたら真上にダウンライトがある。そもそもの設計がこの位置で施工ミスではないと主張されてしまうが、不自然な場合が多い)

⑥給気口の固定不良(引っ張ったらキャップが外れることがある。明らかな施工不良)

⑦排水管に水漏れ(パイプの繋ぎ目が不良の場合に起こる。水を出してみないと分からない)

⑧戸あたりの設置ミス(扉を開けたときに壁に当たってしまわないように、戸あたりという固定器具を設置する。この位置を間違って施工し、機能を発揮していないことがある)

以上のような部分は、確かに問題であり、しかも素人目には分からないこともあります。
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<売主側における内覧会の位置付け>
専門性の強いこの業界では、消費者の無知に乗じた売り手側のあるまじき対応をよく耳にします。

新築マンションの場合、建設を担当するゼネコン(建設業者)はデベロッパー(売主)と建設工事請負契約を結んでいるので、建築代金をデベロッパーからもらいます。ゼネコンにとって重要なことは、工期(完成期日)を守り、補修工事などの余分な費用を出さないことです。

また、デベロッパー(売主)にとって重要なことは、完成してから引き渡しまでの短い期間(通常1か月)で無事に引渡しを行うことです。デベロッパーのほとんどが、会計上・税務上の売り上げ基準を「引き渡し」としています。多くのマンションが、学校の新学期に合わせて3月中に引渡しを行なうように計画しますが、3月はデベロッパーの大事な決算期でもあります。

従って、どうしても3月31日までに買い主に引き渡しを済ませる必要があります。出来なければ売上計画と利益計画が狂い、上場企業の場合には株価にも影響しかねません。

不具合が多く、手直し工事が大量に発生して引き渡しが3月31日をまたぐことになっては困るのです。

ゼネコンは、デベロッパーからその点で厳重に釘をさされています。そこで、購入者の内覧会では、通常ゼネコンの担当者が補修個所チェックの立会いを行いますが、上記の理由から、なるべく補修箇所を出さないようにしたいので、購入者が指摘しても「こんなもんですよ」「許容の範囲です」と言って取り合わなかったり、「内覧は30分程度で終らせてください」などと言ったりすることがあるのです。

デベロッパー側も、大掛かりな手直し工事で引渡しが遅れたり、契約解除などになったりしないように、切り抜けを図ります。例えば、「後で必ず直しますから」や「とりあえず生活には支障がない部分なので、ご入居後に日程調整をして一斉工事日を決めます。それまでは、このままで」などと言って、何が何でも引渡しをしてしまおうという姿勢を見せることがあります。

何も知らない買い主は、「そういうものか」と承知してしまうのですが、入居してからの工事など、どう考えても正常な取引ではありません。

特に注意したいのは、完成から引き渡しまでの期間が2週間程度しかない物件の場合です。もともと工期にゆとりがないまま着工しているためで、工事期間中に長雨が続いて遅れが発生したりした場合、最後は突貫工事に追い込まれ、粗い仕上げになる可能性を否定できないからです。

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以上のようなことが特殊なことではないとしたら、不慣れな買い手はそばに知識の豊富な人がいてくれると何かと安心ですね。そのために費用をかけるという人がいてもおかしくはありません。

<売主の良識を信頼すればいい>
しかし、高い費用を払ってまで、専門家に同行を依頼するまでのことはないと私は考えるのです。

なぜなら、良心的なマンション事業者というのは、自社の専門員による「施主検査」(施主=マンション事業者=発注者)を先に済ませ、厳重な点検を実施しているからです。つまり、重大な部分の施工ミスを既に発見し、手直し工事も完了済みで、万にひとつも欠陥商品は買い手に見せないというスタンスなのです。

「ユーザー検査=内覧会」は、あくまで買い主さんの目で確認してもらい、納得の品を受け取って欲しいという思想によるものです。

ただ、ちょっとした傷や汚れなどの細かな不良部分は専門員たちでも気付かないで通過してしまうことがあります。その点から、内覧会は意味があります。

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尚、専門家に依頼したとしても、欠陥マンションの発見までは及ばないことも覚えておきましょう。内覧会の同行程度では、マンションの建物としての欠陥や瑕疵を判断することは不可能なのです。

欠陥を判断するには1住戸としてではなく、マンション全体を見て行かないと判断できないということです。では、ひとつの建物として検査すればいいということになりますが、それは非常に困難です。そもそも、工事が完了してしまったあとでは、マンションの一棟検査は個人が負担できないほどの金額がかかります。瑕疵は、短時日の検査では分からないことも多く、何年か経って発見されることが普通だからです。

以上の点からも、専門家に依頼すれば安心できるかというと、それは気休めに過ぎないことも多いと思うのです。

それでも、依頼者の安心感につながるならばと、かく言う私も依頼を引き受けることがありますが、デベロッパーから警戒され、ときに嫌われるこの仕事は、相場の5分の1か10分の1の料金にしていることもあって、未だに好きになれずにいます。

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