〇〇年後に売る時、住宅ローンの残高が問題?

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

●売るに売れないマンション
住宅価格が購入時から大きく値下がりしてしまい、売るに売れない状況になったという話が、かつては随分転がっていました。
最も顕著だったのは、バブル期に購入してしまった人が、バブル経済が弾けてしまった時です。

バブル期に信じられないほど急激に値上がりした不動産・マンション。好景気で多額のボーナスやベースアップを手にし、所得も増えました。しかし、価格上昇に追いつくほどではなかったのです。結局、安い場所を求めて郊外へ郊外へと、また、不満ながらも狭いマンションで手を打つ買い手が続出することとなりました。

それでも買えた人は喜んだものでした。そのうちマイホーム取得を諦める人が続出し、やがてマンションの新規供給量も激減してバブルの終焉を迎えます。1990年のことでした。

当時は、バブルの宴に酔いしれて不動産・株式投資に手を染める人も少なくはありませんでした。バブルが弾けて以降は、これまた急激な値下がりに見舞われます。

いくら値下がりしても、自宅不動産を売却しなければ損失の被害には遭わないはずでしたが、購入したマンションは、所得の増加を当てにして返済能力を超える借り入れをしていたため、返済が滞ることとなりました。

他にも投資のために多額の借金があったからです。多くの人は、短期の売買差益を狙っており、且つ、それが可能でした。銀行も、返済能力よりも不動産な価値の売却で焦げ付きは起こらないと考えていて、どんどん貸し込んだのでした。

短期転売が急に困難になったとき、襲ってきたのは、所得の半分を返済に充てなければならない異常な生活でした。

損失確定の手仕舞いをさっさとすれば被害は少なかったのですが、バブルが弾けるとは誰も思わなかったのです。バブルという概念すら日本人にはなかったのでしょう。銀行も、少し我慢していれば再び不動産は右肩上がりになる、などと考えていました。

しかし、一度逆回転を始めた資産は、坂道を転がり落ちるように価値を下げていきました。
3年、5年と経ち、売却を決断する人は急増していきました。しかし、100%の借り入れで購入した不動産が50%に値下がりすれば、借金は半分しか返せません。従って、売りたくても売れない状況に追い込まれたのです。

やがて、銀行も無担保状態になるのを承知で売却を勧めるように態度を変えました。
所有者の意思であろうと、競売という法的な措置であろうと、とにかく銀行は半分なり、遅れたケースでは4分の1なりの資金回収に踏み切ったのです。

この間に貯金を食いつぶしながらも返済に充てて来た真面目なサラリーマンの中には、とうとう力尽きて自己破産という法的手段で最後の砦を守る決心をしました。このような話は、周囲にいくらでも転がっている事実でした。

●建物は必ず劣化し値下がりする
さて、現在、その頃と社会情勢、経済環境などは、随分様変わりしました。右肩上がりの神話は消滅し、マンション・住宅に限れば、建物の老朽化に伴って値下がりするのだという、ごく当たり前の思想が定着しているわけです。
建物の価値が下がっても、その分を土地の値上がりで補うことは期待できないと考える人も多い。それが今日の常識と言えるでしょう。

従って、「売りたくても売れない」という事態は、程度の差はあっても、今後も起こるのです。但し、保有している物件によって、あるいは住宅ローンの利用の仕方によってということになるでしょう。

ここでシミュレーションしてみましょう。
今、金利1.5%の固定金利・35年返済の住宅ローンを借りた場合で試算してみます。
(現在の金利は、もっと安いものも多く出ていますが、多くは変動金利ですし、フラット35のような固定型もあり、かつ10年間は1.0%の政策的減額もありますが、理解を早めるために単純化しています)

5年後の残高・・・88.7%、10年後の残高・・・76.6%、15年後の残高・・・63.5%
20年後の残高・・・49.3%  
となりました。

仮に頭金ゼロで購入し、20年後に分譲時の価格の半値で売却ができたとしたら、買い手から受領する代金で住宅ローンは清算することができます。もし、分譲時の価格の30%にしかならなかったら、差額の約20%相当額を手元の預貯金等から足して清算する必要が起こります。

頭金を20%入れて購入した場合は、その必要がないことになりますが、売却代金は1円も手元に残らないことになります。

仮に15年後に売却し、その金額が購入価格の半分であったとしたら、差額の13.5%は手元資金で補う必要があるわけです。この場合も、頭金として13.5%相当額を入れて購入したとすれば、追い銭する必要はない計算になります。

マンションは永住できません(6月30日のブログで解説)。いつか必ず売却するときが来ます。いえ、やむを得ず売却する必要に迫られることもあるのです。そのとき、売るに売れないという状態にならないよう、最初から想定しておきましょう。

対策は、簡単です。
ひとつは、このブロブで何度も述べていることですが、できるだけ値下がりしにくいマンションを選ぶこと。もうひとつは、住宅ローンはできるだけ繰り上げ返済するなどして早めに残高を減らすことです。

・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com