安売り戸建てを買ってしまうと
- 2011.07.30
- 建て売り住宅
ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
●マンションより安い?パワービルダーの建売住宅パワービルダーという言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。
大量に部材を発注して安く仕入れる。大量発注するということは大量に開発して供給することが前提ですから、年間3000棟以上の建売住宅を次々に建てては売り、売っては建てる。これを繰り返している業者のことで、首都圏に数社あります。
安く仕入れるのは、建築資材だけではなく、土地も相場より安く取得するようです。その秘訣は、即決主義にあり、安い土地があればすぐに現金決済すると言われています。このため、多くの不動産仲介業者は、一般個人より勝負の早いパワービルダーに売り地情報を持ちこんで手数料を稼ごうとするようです。当然、地主に強く価格交渉することになります。
いずれのパワービルダーも、高採算のビジネスを展開して利益を挙げ、株式公開も果たしている企業ばかり。株式市場では優良企業です。資金力もあります。
高い生産性が高利益を生むわけですが、その秘訣は資材の大量仕入れ以外に「回転率の高さ」を挙げられます。簡単に言えば、土地を仕入れたらあっという間に建築確認をとって着工し、あっという間に建物を完成させてしまうのです。他社では60日かかるのが、パワービルダーは家1軒45日で完成させると言います。
開発面積も概ね5棟(2~15棟くらいの幅)の狭い土地ばかりで、既存のインフラ(電気・ガス・水道)をそのまま利用できるので、大掛かりな造成工事が要らない。いわゆるミニ開発なので、許認可にかかる期間も短くてすむというメリットがあります。
大型開発の場合は、街作りの発想が必要で、街全体の景観にも留意して計画しますが、ミニ開発にはその発想がありません。
主に埼玉、千葉、神奈川、茨木の郊外で最寄り駅からバス便、または徒歩20分前後の位置で建設される傾向が多く見られます。価格帯としては、敷地面積100㎡、建物面積90㎡で、3,000万円前後になる物件が多いようです。
現場ごとには、戸数が少ないので、大掛かりな販売キャンペーン活動は要らない。営業マンも抱えなくていい。近辺の不動産業者に任せればいい。つまり、広告費もかからないのです。
こうした特徴のある「パワービルダー」の商品は、利益率が高い割には分譲価格が安い設定になっていて、買い手を喜ばせます。
立地条件が明らかに違うとはいえ、「これならマンションより安いくらい」と驚く人も多いことでしょう。しかし、これは事実なのです。
建物の品質はどの程度かと言うと、パワービルダーの建売住宅と、大和ハウスやセキスイハウスなどの大手メーカーの注文住宅との差は、カローラとベンツの差だという人がいます。つまり、安いけれども品質はさほど悪くないというのです。
部材の仕入れコストが安い、開発・建築期間が短いので余分な金利もかからないし、販売経費も最低に抑えている。だから安いのであって、手抜き工事をしているわけではない。マンション価格で一戸建てが買える。これが、パワービルダーの提供する建売住宅の特徴―――こう聞くと、理にかなっているように見えます。
しかし、それに騙されてはならないのです。
●安さの裏で
資材の大量発注は、規格品の建物になることを示唆しています。具体的には書きませんが、建物はシンプルな形状のものばかりですし、他社では標準装備される設備がついていないものもあります。そして、施工の難しい凝った造りは一切なし、デザイン性も低いということになります。
簡単に言えば「安かろう・悪かろう」の建物が特徴です。工期厳守で施工するため、仕上がりの悪い建物がしばしばできてしまうのも事実のようです。大手ハウスメーカーの建物とは、一見しただけで違いが分かるというもの。
とはいえ、建物を見慣れていない人が建売住宅を見て良い・悪いを見分けるのは難しいので、パワービルダーの完成住宅を見て満足してしまう人もあるでしょう。何しろ、カローラクラスの性能は備わっているのですから。
また、ご承知のように建売住宅は分譲価格のかなりの部分を土地代が占めていますが、敷地面積を抑えるだけではなく、立地条件も問題ありという点が、パワービルダー物件に共通しています。
最寄り駅から遠いのは当然で、買い物に行くのもいちいちクルマに乗って出かける必要があり、バスの便も良くないため、子供が高校生になると、駅まで送り迎えしなければならない立地条件だったりする物件も多いのです。
●住まいは買い替えを旨とすべし
それでも、一戸建てのマイホームに憧れる人が安さに魅かれて買って行きます。その買い物に、個人的にはとても強い疑問を覚えます。
その理由は、「買い替えができないかもしれない」という懸念があるからです。
マイホームを買うとき、将来の売却までは考えが及ばないのが普通です。しかし、それが何年か経って後悔につながる場合が多いのは事実です。つまり、売りたくても売れないことが多いからです。
東京のような大都会ならではのことかもしれませんが、ひとつの所に50年も住み続けるということは、勤め人にはありえないと思います。必要に応じて、住み替えることが必須だと思うのです。
仕事や子供の学校の関係などで不都合になったとしても、家がそこに固定されてしまうと、様々な障害が出てきます。
例えば、行きたい学校に行けないとか、行けたとしても長時間電車に揺られて通学するはめになったり、帰りが遅くなるたびに、駅まで家族の誰かが迎えに行く必要が起きたりします。
通勤の問題では、都区内の営業所を転々とする度に頭を悩ませることになる人もあります。もちろん、地方都市に転勤となったとき処分に困る人も大勢います。
近所との折り合いが悪くなって、引っ越しを余儀なくされることもあるかもしれません。
中古住宅は、購入時の価格を下回るのが当たり前ですが、マンションの場合は購入価格を上回るようなケースもたくさんあります。値下がりのスピードは、一戸建てに比べるとはるかに遅いのです。「マンションは頑丈で長持ちする」住宅ですから、土地があってもないような住宅なのに、その利用価値が高く評価されるのです。もちろん、すべてのマンションがそうだというわけではありません。
これに対し、立地条件も悪く、建物も並の(規格型の平凡な)建売住宅の場合、建物価値は急速に減価し、およそ15~20年でゼロになると言われます。つまり、土地代だけの価値しか残りません。パワービルダーの建売住宅は、その典型と言えるのです。
同じくらいの価格の比較をした場合、建売住宅では、マンションのように買い値を上回る売却ができることは先ずありません。
価格が大きく下落する(土地代だけになる)ということは、売却の際に住宅ローンが多額に残っていて、売却先から受け取る代金にプラスしないと住宅ローンの残債務が消えないことになる可能性が高いのです。
もちろん、それでも構わないという人は別です。しかし、どなたでも売却するときは少しでも高く売りたい――そう考えるのが人情というものです。
「住宅は、そのときの家庭の実情によってフレキシブルであるべき」というのが、私の持論で、言い方を変えると、「住まいは買い替えを前提として選択すべき」なのです。勿論、マンションでも同じです。
終の棲家はまだ先のこと。そうと思って購入するスタンスが大事です。
・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)
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