太陽光発電装置のないマンションは価値が下がる?

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

国土交通省では、2020年以降の新築建物すべてに一定の省エネ基準を満たすよう義務付けることを検討しているようです。
省エネにつながる設備や設計の具体例は、高効率給湯設備の「エコキュート」や「エコジョーズ」、断熱効果の高い「ペアガラス窓」、高保温性能の「魔法瓶タイプの浴槽」といったものがありますが、これらはマンションの多くが採用済みです。

一方、一戸建ては遅れています。コストが10%くらいアップするためと言われます。

ともあれ、省エネ効果の高い住宅には「エコポイント」を付与しているほか、住宅ローンの「金利引き下げ」などを通じて普及が図られて来ました。ただ、義務ではありませんでした。
これを「義務」に変えることでCO2など温暖化ガスの排出抑制につなげて行こうというのが国土交通省の狙いのようです。
義務化までは8~9年という経過期間を置く考えのようですが、それまでにあらゆる促進策が打ち出されて来ることが予想され、省エネ基準の低い新築マンションは早晩なくなることでしょう。

ここで注目するべきは、太陽光発電を導入した場合、その発電量をエネルギーの消費量とみなすというアイディアが盛り込まれている点です。太陽光で発電すれば省エネと同じ効果があるからですね。
おそらく太陽光発電装置は新築マンションで普及が進むに違いありません。

●節電意識の高まりを背景に増える省エネ・創エネマンション
3.11大地震以来、節電に取り組む意識が法人・個人ともに高まりました。原発が全国各地で活動停止する中、この盛夏も計画停電が行なわれることなく通過しました。

この間、マンション業界でも目立つ動きがありました。それは「太陽光発電マンション」のことです。これはエネルギーを生みだすのですから、「創エネ」ということになります。

創エネには、太陽光による給湯装置も含むことになるでしょうが、マンション業界が従来から積極的に取り組んできた「省エネ」と相まって、「創エネ」は今後の大きな潮流となるでしょう。
中でも、共用部分の電力を賄うに留まる装置ではなく、各住戸にも配電する大容量の太陽光発電マンションが普及していくものと考えられます。
既に登場したいくつかの事例を見ると、余った電力を売ることができるという魅力が詰まっていることからユーザーの関心も高いようです。

さらに、蓄電池と併用すれば、停電のときにも復旧までの障害を最小限に抑えることができるでしょうし、日中の天気の良い時に発電した分を溜めておいて、曇りの日や夜間に使うといったことが可能になるでしょう。
既に「蓄電池付きマンション」は三井不動産レジデンシャルが登場させていますが(本ブログで6/25紹介)、現状の蓄電性能はあまり高いとは言えないようで、今後はメーカーの研究に期待することになるでしょう。

いずれにせよ、コストのかかることばかりですが、分譲マンションの歴史を眺めてみると、コストは高くなっても新しい設備や高度の耐震性、耐久性といった建物がニーズに応える形で普及して来たわけですから、「創エネ」も同様に受け入れられるに違いありません。

●「創エネ」装置のないマンションは価値が下がるという心配をする人へ
古いマンションは新しいマンションに比べて装備の面で劣るのは必然で、新築マンションも何年か経つと相対的な価値を下げることになります。
その意味で、例えば大半の新築マンションが太陽光発電付きとなったとき、装置のないマンションは価値が低く見られるのは間違いありません。
このような心配を始めた人もいるようですから、一言つけ加えておきます。

価値観というものは時代とともに変わりますから、先のことは予測しがたいですが、太陽光発電付きと付かないマンションとの差は、近年当たり前になったオートロック式玄関のマンションと、昔のオープンな玄関のマンションとの差くらいのものではないかという気がします。

あるいは、太陽光発電装置の有るマンションは全体の省エネ性能も高いはずですから、少なくとも管理費が安いマンションと高いマンションの差くらいにはなるかもしれません。
その程度であれば、あまり気にしなくてもよいのではないかと思います。

時代とともに陳腐化するのはモノの宿命ですが、マンションの価値を大きく左右する要素は設備だけではありません。時が移っても普遍の価値というものがありますし、維持管理とコミュニティの醸成などによって価値あるマンションに育つこともあるという点に目を向けましょう。

言い換えれば、先進の設備があるかないかだけで選択するのは必ずしも得策ではないということです。

ともあれ、省エネ、創エネが思想としてだけでなく現実の効果となって発展することは良いことです。

・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com