コンパクトマンションの大手施工は例外

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

住戸専有面積が30㎡台~50㎡台で構成される「コンパクトマンション」の施工会社をチェックして見ると、大手ゼネコンは殆んど見られません。これは発注者が大手デベロッパーであっても同じです。

大手ゼネコンが施工するマンションは、その技術力だけでなく買い手から見て安心できる要素があります。然るに、コンパクトマンションにその例が少ないのは何故でしょうか?そのことについてお話ししましょう。

●コンパクトマンションの施工会社
大手ゼネコンとは、鹿島建設(年間売上1兆6500億円)や大成建設(1兆4900億円)、清水建設(1兆6000億円)、大林組(1兆5000億円)、竹中工務店(1兆3000億円)のスーパーゼネコンの他に、三井住友建設(3500億円)や、前田建設工業(3500億円)、西松建設(4400億円)、戸田建設(4700億円)、マンション専門の長谷工コーポレーション(4700億円)といったあたりまで入れてよいかと思うのですが、こうしたゼネコンはコンパクトマンションの施工を受けることは稀です。

最近のコンパクトマンションを少し拾ってみましょう。
(左から物件名、情報取得日、売主名、総戸数、施工会社名、年間売上の順です)
1. ブランズ麻布十番9/22(東急不動産)29戸:清水建設(1兆3000億円)
2. ブランズ東麻布9/22(東急不動産)59戸:清水建設
3. オーベルアーバンツ西荻窪(9/22有楽土地)49戸:青木あすなろ建設(1200億円)
4. パークリュクス市ヶ谷薬王寺9/20(三井レジ)36戸:三井住友建設(3500億円)
5. パークリュクス西新宿9/20(三井不動産レジデンシャル)71戸:三井住友建設
6. イニシアイオ西麻布9/20(コスモスイニシア)83戸:大和小田急建設(695億円)
7. ライオンズアイル渋谷松濤9/20(大京)64戸:ノバック(220億円)
8. アトラス日本橋鞍掛9/20(旭化成ホームズ)66戸:間組(1900億円)
9. クレヴィア南麻布9/2(伊藤忠都市開発)65戸:村本建設(580億円)
10. コンシェリア芝公園9/2(クレアスライフ)129戸:ライト工業(620億円)
11. CONOE東日本橋8/18(アパホーム)36戸:新日本建設(515億円)
12. ザ・パークハウス アーバンス高輪7/12(三菱地所)22戸:大豊建設(1200億円)
13. アデニウム東神田7/15(ジョイントCO.)71戸:りんかい日産建設(800億円)
14. レルシール大島7/15(日本物産)33戸:北野建設(552億円)
15. オープンレジデンス6/11(オープンH.ディベ)73戸:東急建設(2,400億円)
16. イニシアイオ芝公園4/30(コスモスイニシア)49戸:木内建設(630億円)
17. パークリュクス高輪3/31(三井不動産レジ)39戸:北野建設(552億円)
18. ライオンズアイル赤坂2/3(大京)48戸:大末建設(470億円)
19. セルフィスタ渋谷(大京)1/2866戸:北野建設(552億円)
20. パークハウス八丁堀1/31(三菱地所)45戸:木内建設(630億円)

1番目と2番目にいきなりスーパーゼネコンの清水建設が登場していますが、例外的なケースです。近隣の2つの物件をほぼ同時期に受注しているので、合計すればメリットがあると判断して受注したのかもしれません。それ以外の理由も考えられますが、いずれにせよ真相は不明です。
同様のケースが4と5の「パークリュクス」2物件にも当てはまります。両方を三井住友建設(売上3500億円)が受注していますね。

他は3番の青木あすなろ建設(1200億円)、8番の間組(1990億円)、12番の大豊建設(1200億円)、15番の東急建設(2400億円)が比較的大きい方ですが、それ以外は皆1000億円未満の売り上げ規模に過ぎません。

●中小ゼネコンが多い理由
大手ゼネコンは大型案件しか扱わない傾向があります。上記の物件をもう一度ご覧ください。
最も戸数が多い物件で129戸です。これでも、住戸面積を普通のファミリーマンションに換算したら、ざっと60戸程度の中規模マンションです。他は、30戸や40戸の小型で、ファミリーマンション換算で15戸、20戸といった小型ばかりです。
工事費にすると5億円未満、中には3億円未満もあります。

こうした小型案件には大手ゼネコンは魅力を感じないらしく、見積もりに参加するとしてもお義理程度と言われます。

大きな売り上げをキープしなければならない大手は、1件3億円の工事より10億円の工事を狙い、効率を追求するとこうなるのは必然です。

●中小の施工でも大丈夫?
一般消費者が常に心配するのは「工事の手抜き・建物の欠陥」です。
手抜きは大手になくて中小以下にはあるといった類のものではありませんし、マンション工事の技術力においても大手と中小でどれほど差があるのかといったら、小規模マンションの施工なら殆んど差はないといっても過言ではないでしょう。

問題があるとしたら経営状態がよくないとき、資金的な余裕のないゼネコンは見積もり競争で無理をして安値受注を図り、それが下請けに結果的に粗雑な工事をさせてしまうことです。
手抜きはないとしても「施工精度」の低い工事をしてしまうことが起こるのです。

施工精度は、素人が見ても分かる粗雑な仕上げとして表面化することもありますし、見えないところで図面通りにできていない箇所があり、後に原因を特定できない不具合につながることもあるのです。

不具合とは、隣室の音がよく聞こえるとか結露ができる、床が鳴る、バルコニーの傾斜が一定でないため雨が降ると水たまりができるなど例を挙げるとキリがないのですが、中には信じられないこともたくさんあります。

●心配を解消する方法はない?
こうした施工上の問題にを買い手がいくら心配しても、それを止める手立てはありません。現場監理を行なう設計事務所やデベロッパー、そして「建設住宅性能評価」を受けている物件であれば第三者機関の検査などによって施工ミスや手抜き工事をなくすシステムが用意されてはいますが、それとて完璧ではありません。

結局、工事業者の誠実さを信用するほかにないのです。

購入に当たって買い手は販売担当者に施工業者のことを尋ねることでしょう。「〇〇会社は大丈夫ですか」や「信用できますか」と。私のところにもよく同様の質問が届きます。

私はこう答えることにしています。「担当者がどう説明しようが心配を完全になくすことはできません。最後は相手を信用するしかないのです。もし安全のよりどころを得たいのであればスーパーゼネコン施工か売主が大手の物件をお買いください」と。

これは自分自身を安心させる手段、根拠とする要素などを探す行為です。ゼネコンがスーパーでない場合、最後は「売主が〇〇だから大丈夫」などと言い聞かせて前進するほかにないと思います。

・・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com