あなたのマンションの眺望が急に悪くなったら?

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

国民生活センターによると、「不動産会社から近くに高層ビルは建たないと聞いて物件を購入したのに話が違う」といった相談が後を絶たないそうです。30階、40階といった超高層マンションが増え、それぞれ眺望を売り物にしていますが、その価値も高く評価されているようです。眺望が気に入って購入したのに、何年も経たないうちに肝心の眺望が台無しになるような建物ができてしまったら?
今日はそんなテーマで述べてみようと思います。

●住宅からの眺望に関するトラブルの例
*マンション購入前に不動産会社から「前方には高層建築物は建たない」と聞いていたのに建ってしまった
*広告にあった窓からのイメージ写真が気に入ったのでマンションを購入したが、実際とは大きく異なる
*建設中のマンションの前に広がるグラウンドの眺めが気に入って購入を契約したが、完成前にそこに建物が建つことが分かった
*新築マンションの隣に広がる墓地について、不動産会社は「住居からは見えない」と説明していたのに実際には見える
―――このようなトラブルが代表的なものです。

近年、眺めを売りにする物件が増えており、その点を重視して購入を決める人も多いため、その価値が損なわれるとなると摩擦が生じやすいのは当然です。
法律で規定されているわけではないのですが、「眺望権」という概念があります。
住居など特定の場所の所有者や占有者がそこからの景色を享受できる権利であり、誰から見てもその景色に価値がある場合などに、所有者は眺望を害されない権利を持つとの考え方のことと言われます。
旅館やホテルの場合は、眺めの良さが営業上の利益に結びつきますから、眺めを売りにしていた群馬県のある温泉旅館が隣の旅館の増築工事によってその眺めが台無しになると訴え、工事中止が認められた例もあります。

●眺望権を理由にマンション住民が新規ビル建設の差し止めをできるか?

しかし、これまで眺望権だけをもとに他の建物の建築差し止めを認めた判例はほとんどないそうです。上記の温泉旅館の例で別の旅館の増築工事中止を命じたのは、旅館からの眺望が営業上の利益に直結しており、それを遮るのは営業妨害になると裁判所が判断したためです
仮に営業上の不利益がない場合、眺望権を侵害しているという訴えだけでは違う判決になっていたでしょう。
「生活の質を重視する社会風潮が強まる中で今後眺望権が重視される可能性はあるが、現時点ではそうはなっていない」と、ある弁護士は指摘しています。

眺めが悪くなると、不動産としての経済的価値が下がり不利益を被ることもありえます。しかし、その不利益も「遮る側の建築物の所有権を制限させるほど強力な根拠になるかどうかは疑問。これが現実なのでしょう。
神奈川県横須賀市の丘陵中腹の平屋社宅の住人が、目の前に建ったニ階建てのため、海側の景色を楽しむ権利を侵害されたとして訴えた裁判でも、二階部分の撤去を求めたが認められなかったのです。ただ、権利侵害の事実は認定され、百万円の損害賠償は認められたそうです。
一般の住宅の場合、日照権侵害などとセットにして視界を遮る建物の建築差し止めを訴えているケースもあるそうですが、判例では建てる側の権利が守られることが多いようです。

●「マンションを買う時、不動産屋が眺めの良さを強調?」

眺望の良さがマンションの“売り”だったのに、それが侵害された時は損害賠償請求の対象にできます。とりわけ、眺望を遮る建物の建築計画を不動産会社が知っていながら販売した場合は、損害賠償が認められる可能性はかなり高いものになりそうです。
ただ、過去の例などから見て、精神的苦痛や不動産価値の低下による経済的損失が認められたとしても、賠償額は数万から数十万円程度にとどまりそうです。

●「景観権」でも訴訟例
眺めに関しては「景観権」という考え方もあるそうです。眺望権が特定地点からの眺めを言うのに対し、景観権は地域の街並みや自然の風景全体について地域住民が持つ権利とされます。
最近では、東京国立市の「大学通り」沿いに建設した高層マンション(「クリオレミントンヴィレッジ国立」事業主:明和地所)を巡り、近隣住民らが不動産会社を訴えた例が有名です。東京地方裁判所は、マンションが周囲の住宅や並木との調和を欠くなどとして住民の景観利益を認め、会社側に建物の一部撤去と損害賠償の支払いを命じました。ただ高裁では住民側が敗訴し、2006年3月に最高裁で確定しました。

●眺望既得権は弱い―それが現実
眺望権にしろ、景観権にしろ、訴訟しても勝つ見込みはあまり大きくないこと、買っても損害賠償金が100万円程度。しかも、裁判は判決まで長い年月を要する可能性が高いのです。
東京のように超高層マンションが次々に建てられる都市では、数十メートル先に同じような超高層ビルが建てば景色が変わるものです。「海の眺めが気に入って買ったのに、すっかりビルに囲まれてしまった」と嘆くことは、どこでもあり得る予想しがたい事態と言ってよいでしょう。

眺望に関する限り、将来は落胆することもあると思って購入した方がよいのではないでしょうか?

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