地震後の東京ベイエリア人気に思う

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

3.11地震以来、一時敬遠されていたベイエリアのマンションですが、今再び人気が回復しています。地震その他の防災対応に力を入れた大型物件が東京湾岸でいくつか発売され、それらが引き金になったと考えられますが、ともあれ、「都心に近い割には価格が安い」という特徴を持つベイエリア本来の魅力を探ってみることにします。

このエリアは運河で区分されており、ウォーターフロントとも呼ばれています。運河に面してマンションが建てられ、また運河沿いに散歩道、遊歩道があったりします。この街で暮らす人々をキャナル族(運河族)とも呼ぶようです。トレンディ―ドラマの舞台にも、しばしば登場するエリアです。
また、東京駅や日本橋、銀座、丸の内あたりまで3キロ前後にある江東区の有明や東雲、辰巳、中央区の月島や勝どきなどの街は、交通機関が運転を停止しても徒歩で帰宅できる距離にあります。

ベイエリアは、広範囲に見れば千葉県から神奈川県まで東京湾沿いを指しますが、ここでは豊洲、東雲、有明、台場、勝どき、月島あたりの東京駅から4~6キロ圏、すなわち徒歩で1~2時間圏をイメージして述べています。

●豊洲のこと
中心は、豊洲です。まだ開発余地は残っていますが、既に成熟した印象を与える街です。生活感が満ちているとでも言えばいいのでしょうか。
「ららぽーと豊洲」を中心に、大型店舗が増えましたが、セブンイレブンの1号店は豊洲にあるといいます。地下鉄有楽町線「豊洲駅」を中心に飲食店も多く見られます。交通のアクセスもよく、高速の湾岸道路も利用しやすいようです。

特筆できるのは、車道並みに歩道が広いことです。家族が安心して住める街と感じます。有明方面に通じる新都市交通「ゆりかもめ」の下を走る道も同様に歩道が広く、ジョギングやサイクリングには打ってつけと言えそうです。
個人的には好きになれないこともあります。
第一に、シティホテルが見当たらないのです。ホテルは、他の地域から人を招き入れる装置です。また、地元の者にとっても自宅の応接室代わりになり、ときには食堂代わりにもなるという機能を持ちます。
手元に住友不動産が販売中の「シティタワーズ豊洲ザ・シンボル」と「シティタワーズ豊洲ザ・ツイン」二つの超高層マンションを一緒に撮影したチラシがあるのですが、断片的に見た瞬間、西新宿の副都心ビル街と見違いました。超高層ビルが密集していたからです。ビルとビルの隙間には新たなビル建築の様子も写っています。

西新宿のビル街は摩天楼ですが、ちょっと行くと約8万㎡の新宿中央公園があります。区立の公園として最大の面積を誇る新宿中央公園は、そびえ立つ高層ビル群に寄り添い、大都会のオアシスとして多くの利用者に親しまれている、緑豊かな公園です。
休日には、広場でフリーマーケットなどのイベントが開催され、また夏には、ジャブジャブ池に多くの親子が訪れます。四季折々に、園内に生息する草花や小さな生き物たちを求め、来園者が集います。

目を転じて、霞が関の官庁街は同じビルでも比較的中層のものが多く、超高層と言うと「霞が関ビル」や「警視庁」などが浮かぶ程度です。すぐ側には日比谷公園と皇居と皇居前公園があり、広大な緑地を提供してくれています。
こうした地域と比較するのは乱暴な気がしますが、豊洲はビルばかりの印象が強いのです。豊洲にもららぽーとの隣に「豊洲公園」がありますが、面積は2万4千㎡しかありません。また、歩道が広くつくられていて、ゆったりとした佇まいが全く感じられないわけではありませんし、ここをキャナル族がベビーカーを押しながら歩く姿は想像に難くありません。しかし、どうもオフィスビル街に住むという印象が先に来てしまうのです。偏見でしょうか?

マンションの開発においては敷地内の植栽もありますが、20年くらい経て生長したときの姿を想像してみても、そもそも敷地面積に対する緑地比率は大きくないので、あまり多くは期待できないのではないかと、悲観的になってしまいます。
都会とは、そういうものなのでしょうか?
ともあれ、豊洲では今後もマンション建設が続きます。三井不動産レジデンシャルも近く185戸と小さめですが、近く販売を開始するようです。すぐ隣の東雲では、585戸の「パークタワー東雲」を9月に発売すると聞いています。
また、豊洲駅そばでは、行政サービスの充実を図るための新施設や商業施設とオフィスビルを江東区と三井不動産とで開発するようです。

●有明・台場のこと
江東区にあるビッグな施設と言えば、最近(2012年4月)にオープンした人気スポット「ダイバーシティ」を始めとして、「東京ビッグサイト(国際展示場)」「パレットタウン」「東京テレポートセンター」「有明コロシアムと有明テニスの森公園」「大江戸温泉物語」が挙げられますが、これらは台場、有明地区に固まっています。フジテレビが台場にあり、これも一種の集客装置となっています。日航ホテル台場をはじめとして、シティホテルも確か5つが台場・有明地区に揃っています。

ここは、東京都による「臨海副都心構想」のもと、職と住を適切に配置するとともに、商業機能のほか、医療・福祉、教育・文 化、スポーツ・レクリエーション、アミューズメントなどの多様な機能を総合的に配置し、子どもから高齢者まで、誰もが活き活きと豊かな都市生活をおくれる街としていくとして、1995年頃から計画的に開発が行なわれて来た地区です。平成28年度までには完成する予定となっていますから、あと5年ほどで空地が埋まっていくのでしょうか。

現状では広大な都保有地がまだ残っていますが、有明の北側には築地市場の移転も予定されています。
また、有明には住友不動産が広大な土地を入札で取得しており、超高層マンション2棟と大型ショッピングセンターや業務用ビルの建設を予定しているようです。

●緑の比率
人が住む上で「緑」の存在は潤いをもたらすという意味で重要です。異論のある人はいないでしょうし、国や自治体にも「公園」は重要な行政課題になっています。
東京23区の中で公園の割合が少ない自治体は、豊島区、中野区、杉並区、目黒区と意外にも西側に多いのですが、原因は大型の公園がないことにあります。
最大の「葛西海浜公園」を持つ江戸川区、「皇居」がある千代田区、代々木公園のある渋谷区、「夢の島公園」「若洲海浜公園」などの江東区は、大きな公園を持っているために上位にランクされます。

公園面積は少ないものの、個人住宅の庭の緑が多い中野区、杉並区、目黒区、世田谷区などは、やはり緑の多い街になります。
「緑被率」という概念があるそうです。「緑被率」は樹木、芝、草花など植物によって覆われた部分の土地の割合を言います。「緑被率」は調査の年度・方法・精度などが確立していないため、公表データも少ないのですが、参考になるのが、杉並区が以前ホームページに掲載していたものによれば、「緑被率」が20%以上の区は、上から順に練馬区、世田谷区、杉並区、渋谷区、港区、千代田区、大田区 と西側に多く、10%以下の区は下から順に荒川区、台東区、中央区、墨田区と東側に多いのです。

しかし、緑の多い区に住むことになっても、実際に暮らす場所の周辺に公園や緑が少なければあまり意味はないかもしれません。
また、幼児がいる間は、小さくても近くに児童公園がある方が便利かもしれませんね。しかし、大人にとって児童公園はそれほど居心地が良いとは言えません。外歩きには街路樹がある道が歓迎されるでしょうし、仕事の合間に息抜きの場所になるような「都会のオアシス」的な公園が必要になるでしょう。
このように、暮らす人のライフステージや好みによって求める緑の質も変わります。

いずれにせよ、先に述べたように豊洲は緑が足りない気がします。有明や台場地区も、非難を恐れず言えば「荒漠たる場所」という感が拭えません。
何年か先には、マンションの敷地内に植えられた樹木などが成長するでしょうし、街路樹も増えるのでしょう。その結果、街の雰囲気が変わるのでしょうか?

●防災対策が十分に検討された物件が多い
この地域でマンションを買いたい人の最大の心配事は巨大地震に襲われたときのことですから、それに対するデベロッパーの反応は素早いものがありました。
具体的には先ず液状化対策で、いわゆる地盤改良を行なっている物件が眼に付きます。地盤改良の方法は複数あり、深層混合処理工法・密度増大工法・固結工法・置換工法・水位低下工法などとされます。
ちなみに、深層混合処理工法とは、地盤内に石灰やセメント、砕石などを圧力混入して強度を増加させる工法です。
液状化対策を施している物件は、「パークシティ東雲」や「パークタワー豊洲」などで採用されているようです。

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液状化対策以外には、停電したときの対策として「非常用電源設備の充実」や「防災用品の備蓄」といったことです。
非常用電源設備の充実とは、法律で超高層ビルに義務付けられている自家発電装置の能力を例えば半日でなく最大3日間の連続運転が可能にしたり、太陽光発電で得た電力を蓄電池に溜めておいたりするものです。
防災備品の備蓄も、従来は1階の備蓄倉庫だけだったものが、複数階にスペースを設けて、いざというときにも素早く利用できる形にしています。

●今は未成熟でも将来性を買うのが東京ベイエリア
ベイエリアのマンション価格が安い理由はいくつか考えられますが、大雑把に言えば「未発達地域ゆえの地価の安さ」にありそうです。
都心に近い割には安いが、今はまだ成熟していない。しかし、そう遠くない将来には一層便利になり、さらに荒漠たる土地が潤いある緑の豊かな街に変貌する。そんな期待を持つことができそうだ。資産価値も上がりそうだ。そんな思いが人気になっている要因なのではないでしょうか?

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