有名企業の子会社だが実績の少ない売主。問題は?

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

ときどき頂くご相談の中に「有名企業だが、実績は少ない。問題はないか」というのがあります。今日は、これがテーマです。

マンション開発は多額の資金が必要になるため、本業において長い歴史があり、資産の豊富な企業が参入しやすいという側面があります。他方、事業展開に必要なノウハウや人材は、関連産業のゼネコンや設計事務所、マンション販売専門会社等が提供してくれる、すなわちコラボレーションが容易な事業という一面を持ちます。

そうした事情や背景から、専業や財閥系不動産会社以外に、異業種から参入して来たマンションメーカーが誕生して来ました。

伊藤忠都市開発、新日鉄都市開発、オリックス不動産、東武不動産、清水総合開発、旭化成不動産レジデンス、NTT都市開発などといった企業が有名です。他にも、異業種からの参入企業が少なくありません。
これらの企業の中には、既に専業業者並みの実績を積み、十分なノウハウを蓄積している企業もあります。

問題は有名企業というだけの、マンション事業に精通しているとは思えないような企業にあります。具体的な社名をここで提示することは憚られますが、実績が乏しい売主から購入した場合、どのようなデメリットがあるかという点は、確かに気になる問題です。

●財務基盤は固く安心であるが・・・
上記のような企業は、経営基盤が強固であり、工事中にマンションの売買契約を交わしたとして無事に引き渡しまでは進むことでしょう。また、10年先まで約束している「アフターサービス」も間違いなく実施してくれるはずです。
こうした面には不安がない売主ですが、それだけでいいのかという疑問が湧きます。

マンション分譲に参入する狙いは何かを考えてみましょう。グループ企業としての連結の売り上げを延したい、利益を増やしたいということが一義的ではないでしょうか?

ビジネスという見地では、マンション事業はリスクも高い反面、さほどのノウハウが備わっていなくても「良い土地」さえ取得できれば、販売に苦労の少ない商品を用意できるという特殊性があります。
経験者を少数雇用し、関係企業(設計事務所やゼネコン、販売会社など)の協力を得れば事足ります。つまり、「間違いない品物を渡して代金を受領し、利益を確保する」だけなら、簡単に参入できるビジネスと言えます。

しかし、マンション分譲には、「売ったら終わり」では済まないものが多数あるのです。

●マンションは個人資産であるとともに社会的ストックでもある
言うまでもないのですが、マンションは一度建ててしまえば何十年もそこに存在し続けます。所有権は複数の個人に分かれていても、全体としては社会的なストックと言うことができます。所有者がときどき変わりながらも、ずっと社会に存在し続けるのです。ここが耐久消費財との大きな違いなのです。
それは、どのような意味を持つのでしょうか?

先ず、街の景観を変え得る存在ということができます。次に、その中で生活する人々の人生を豊かにするか貧しいものにするかの存在にもなり得るものです。
後者を平たく言い換えましょう。そのマンションが長年に亘って快適な住空間であり続ければ、住みたい人は絶え間ないものとなるでしょうが、反対に不良住宅であれば最後は都市の粗大ごみに堕するのです。

所有者は次々に変わり、または賃貸に付されるとしても入れ替わりが激しく、最後は誰も住み手がいない、そんな状態のマンションにもなりかねないのです。

荒れ放題の管理、手の施しようもないほど痛んだ建物、そんな姿を想像することは無理かもしれませんが、複数の所有者からなる集合住宅の末路とも言える姿に変わり果てた老朽マンションは、今もじわりと増えています。

事業者の手から離れたマンションは、本来なら複数の所有者、すなわち管理組合が未来の命運を握っています。開発した業者が左右することはできません。しかし、最初にできてしまった建物のハード部分は殆んど変えようがないのです。その意味では、開発業者が命運を握っているとも言えるのです。

そのようなことにならないような社会的な仕組みはあるでしょうか? ないこともないのですが、それを使うかどうかは事業者の姿勢いかんです。例えば、某商社のマンションには「住宅性能評価」を受けていないものが少なくありません。

住宅性能評価は義務ではなく任意の制度ですから、評価を第三者機関に依頼しなくても良いのですが、この制度の意義は「マンションの性能(品質)を客観的な尺度で表わし、将来の流通を円滑にする」ことにあります。
購入者の未来を考慮した制度で、2000年に施行された法律「住宅の品質確保に関する法律」によって発足しました。

某商社の現場で、「どうして評価を受けないのか」と尋ねたことがあります。答えは「本物件は評価書がなくても売れますから」でした。

多くのマンション業者が、住宅性能評価書を取得することで買い手の安心感につなげているのは事実です。それが販売促進効果となっている面も否定できません。しかし、本来の狙いは違います。
某商社は「そんなものがなくても売れる」と、本来の意義を取り違えていることになります。売って利益を得たら、それでおしまいという「利益至上主義」「売り上げ至上主義」の精神が垣間見えた瞬間でした。

●企業の社会的責任をどこまで認識しているかでの違いがある
マンションを開発するということが社会的にどんな意味のあることかを検証し、かつ先の先まで見据えて事業を行なうのがマンションメーカーとしての社会的責任です。
歴史あるディベロッパーには「社会性の高い事業」という認識が強く存在し、開発姿勢や設計ポリシーの確立と、それに伴う社内体制やノウハウの蓄積が既に完成しています。

親会社がどんなに立派な企業でも、マンションメーカーとしての経験と歴史の浅い企業には、残念ながら「何十年先まで見据えた売り手責任」のような感覚も姿勢も乏しいものです。

分譲してしまえば終わりという事業ではないのだという考え方が大手マンションメーカーには確立しています。そこから長期のアフターケア体制が整っているというだけでなく、設計に当たっては長期メンテナンスのしやすい構造設計にも配慮しています。
いざというときは、売り手責任を問われるものであることを認識しているとも言い換えられます。これに対し、若い企業には大手系列といえども、それがないということです。

企業は利潤を追求するものであり、売り上げ規模が大きいことに魅力を感じてマンション事業に参入するというホンネを批判するつもりはありません。しかし、上述の社会的責任を意識していたら、こんな設計をすることはないはずだと感じる例があるのは事実です。

●ブランド力の勘違い更には、マンションメーカーとしてのブランド力が小さいことも問題として挙げられますが、こちらの方が買い手にとっては大きいかもしれません。10年先にブランド力が上がっている可能性がないとは言えませんが、いずれにせよ、リセールバリューを左右する要素だからです。

こうした企業は、倒産する心配がないという意味では安心できます。企業全体の信用を落とすような約束(アフターサービス10年保証などの)違反もないでしょう。
それでも、品質管理体制が十分に整っているかに関しては疑問が残ります。アフターサービスの窓口を管理会社にしている例も少なくありません。この2点も気になる問題として存在します。

ただ、経験豊富な大手ディベロッパーが提携企業として加わっているケース、すなわち共同売主として参画していれば、かなり安心の度合いは高いと言って良いでしょう。

気を付けたいのは、単独売主の場合や提携先が中堅ディベロッパーの場合です。設計事務所の能力や経験、施工会社がどこかも重要になりますが、仮に十分な経験や実績があっても、実は安心できません。
設計事務所と施工会社は、売主から見たら力関係はどうしても下になりますから、望ましくない指示や注文が売主からあっても、それに従うしかないからです。その意味で、本当に安心で良い建物になるかは疑問が残るのです。
やはり、売主の社会的責任を強く意識したディベロッパーとの提携(共同売主)が安心です。

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マンションメーカーとしてのブランド力は低くても、経営基盤が安定している大企業、または大企業グループというだけで安心してしまう心理が買い手には働きます。
しかし、以上に述べた通り、ネームバリューを過信・錯覚しないことが大事です。

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