「売り急がない新築マンション」そのわけは?
- 2015.08.20
- マンションの売主
ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
分割販売という売り方をご存知のことと思いますが、その販売戦略に異変が起こっています。今日は、そのことについて書きます。
●従来型の分割販売の狙い
新築マンションの販売方式には、「一括分譲」と「期分け分譲」があります。
一括分譲とは販売予定住戸の全部を一気に店先に並べる方式で、期分け分譲は販売総戸数を何回かに分割して「蔵出し」しながら販売する方式のことです。
期分け分譲、すなわち分割販売方式が採用されるのは大規模物件だけでなく、中規模物件でも採用されることが珍しくありません。
数百戸もある大型で人気の高い物件は、初回で大量に発売し、かつ発売分を完売すると、次も1期ほどではないものの再び大量に発売し、次いで3期、4期と回を重ねて行きますが、全戸完売に至るまでの分割回数は多くても5回くらいが通例です。
対照的に、不人気な物件は分割回数がやたらと多く、1回当たりの発売戸数が10戸未満であったりします。たくさん売り出しても売れないので小分けするのです。
分割販売の本当の狙いはどこにあるのでしょうか? それは、売主にとってのメリット「完売」の2文字を使いたいのです。人気のある物件であることを端的に表す言葉、それが「完売」だからです。
裏返せば、「先着順受付中」では、売れ残り物件を順次販売中と言っているようなものだからです。
人間の心理は、売れたと聞くと、例えそれが不人気の品でも人気を博した品と思いたがるものです。「逃がした魚は大きい」という諺があるように、ないと分かるとよけいに欲しくなるという心理が働くのです。
売り手は、全部の戸数が売り終わるまで人気が続くようにしなければなりません。そのためには、「販売が好調に推移」していることを買い手に伝え、「良い部屋は早くしないとなくなる」と買い手に錯覚させるのがストレートで最も効果の高い方法です。
それを強く印象付けるには、抽象的な表現ではなく数字を用いるのが一番です。「販売が好調に推移」と言うより、「完売」すなわち「全部=100%」と言う方が良いのです。
この「100%」を繰り返すのが分割販売の狙いです。売り出しの都度「100%売れた」と言いたいのです。
買い手は、流行品・人気商品に引かれます。売れていないと聞くと、良くない品と思う傾向があります。売れていると、これだけの人が買っている商品なら良い品なのだろうと思うのです。
この人間心理は未来永劫、きっと変わらないはずです。人の好みは多様であるとしても、周囲のみんなと同じなら安心という心理も働きます。ゆえに、売り手は、そこにこだわるのです。
●最近の分割販売
分割販売は、販売促進のための戦略です。ところが、最近は狙いの軸が変化して来たのです。次の発言からそれを窺い知ることができます。
「次期の販売では値上げの予定ですから、購入するなら今です」と買い手を慌てさせる発言です。
これまでの分割販売では、次期販売住戸の価格は「未定」としてはいても、値上げするとは言わなかったものです。
微妙な価格調整はするにしても、基本は前後上下のバランスを考慮し、価格差について合理的な説明ができる範囲のことでした。
それを同じタイプ・面積の、価値に大差ない住戸でも堂々と値上げすると言うのです。5%か10%も短期間に値上げするのが常態化して来たようです。
これは言うまでもなく人気物件でのことですが、立地が良い都心などの複数の現場から聞こえて来るのです。
販売促進策のために考え出された分割販売戦略が、今や値上げの機会をうかがうための好都合な策に変貌したというわけです。
●急いで売るなの声が・・・
今年(2015年)に入ってからよく聞こえて来るものに、「建物が竣工してから半年くらいで完売できればいいので急いでいないのです」という声があります。しかし、これは欺瞞です。
「価格高騰のトレンドが市場で周知されるようになったのだから、黙っていても客は買い急ぐ。だから慌てて売り出さなくても心配ない。売り出しと売り出しのインターバルを長く取れ。そうすれば、値上げしても客は必ずついてくる」 こんな会話が社内で交わされているというのです。つまり、これがホンネです。
要するに、買い手の足元を見て高値で売り付ける行為です。それが複数の大手デベロッパーの昨今の姿勢なのです。大手がやれば、中小デベロッパーも追随します。
企業は利潤を追求する組織ですから、高く売ってどこが悪いのかと反論を受けるのは間違いないところですが、どうも素直に受け入れることができません。
企業は良い商品をできるだけ安く提供する使命があるとする考え方と、経営の持続のためには良い商品を造って高く売り、利益を増やして社内に留保するべきという二つの考え方があります。
仮に後者の考え方が肯定できるとしても、露骨な値上げ宣言を耳にした買い手の心情を察すると、割り切れないものが残るのです。
さて、どうしましょう。いくら人気の物件であるとしても高値掴みになってはなりません。では、値上げ前の段階で決断してしまいますか? 売り手の策略に踊らされるのもしゃくに触るではありませんか? そこまでして買い向かうべき価値ある物件なのでしょうか? 価値ある物件なのでしょうが、値上げ前の価格ですら価値に見合う価格ではなく、高過ぎる価格とは言えませんか?
心の中で反問しながら、冷静かつ慎重に判断されることをお勧めします。
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