デフレ経済と分譲マンション

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

2012年12月、再び政権は自民党に戻ることとなりました。安部晋三首相は、「デフレ脱却」の公約を達成する手段として「インフレターゲット2%」を強くアナウンスしています。

バブル後、日本経済は物価も下がったが賃金も下がり、経済は縮む一方です。

円高によって国内製造業が打撃を受け海外に移転したことから、労働市場も大きく変動しました。高い賃金の職場から安い賃金の職場へという移動を余儀なくされて来たのです。
また、企業では利益確保のための人件費削減が大きなテーマとなりました。即戦力にならない新卒をじっくり育てる余裕がなくなり、即戦力までも正社員から非正社員へシフトしました。これらの策によって、一人当たりの所得が大幅に減りました。

景気が停滞しながらも、この間に企業努力で過去最高の利益を挙げた大手もありました。しかしながら、その利益が社員に還元されることはありませんでした。
所得が減ったことで、生活のために物価が下がることを望む国民が増え、それに企業が答える形で物価は更に下がりました。不動産業界でも、家賃は低下傾向が続いて来ました。生活防衛のために毎月の固定費を見直す動きが続いているのです。借り手がつきにくくなった賃貸住宅は、次第に条件を弱めています。
こうして、物価統計は長い間マイナスが続いています。

そこへ2011年に天災が襲いました。
日本の未来は明るいと考える人はなく、国への期待も薄らいで、国民一人一人の自助努力が益々求められるようになったのです。当然ながら、防衛策としてカネを使わない傾向が強くなります。

そんなこんなで、日本経済はデフレスパイラルに陥ったままとされます。その脱却が自民党公約であり、日本国の喫緊の課題となっているわけです。

●デフレが続くときのマイホーム

公約が達成できるにしても、目に見えて効果が出て来るまでは相当のタイムラグがあることでしょう。また、もし政策効果が現われなかったら、マンションを購入することのデメリットはどれほどのものになるのでしょうか? ふと、そんなことが頭をよぎりました。

インフレ時代の昔、「インフレはお金の価値が下がることを意味するのだから、実物資産へ換えておくのが賢明だ」と、多くの識者が語り、また多くの国民が信用して物を、特に不動産を買ったのです。
デフレはインフレの逆ですから、お金の相対的価値が高くなることを意味します。つまり、お金は手元に置いておく方が良いというわけです。

然るに、この20年間を振り返ると分譲マンション市場は拡大しました。2008年に発生したリーマンショックや2011年の大震災という特殊要因を別とすれば、特に首都圏ではマンションが毎年大量に新規供給されたのです。
(1990年代後半から急増し始め、2000年は過去最高の95,000戸で、2006年まで80,000戸台が続いた)
マンションは「資産」という側面もありますが、本質は「住まい・生活の基盤」だからです。言い換えると、「賃貸住宅」からの脱出という願望が根本的に強いためと考えられます。
背景には、住宅ローンの金利が大幅に低下し、負担は家賃を払うのと大差ない状況が生まれたからでもあるのです。

つまり、デフレ経済は金利の低下をもたらすという側面が一方であったから、金を貯め込むのではなく、むしろ使った人がいたと言い換えられます。
「家賃も抑えたいが、このままここに居れば毎月の支払は変わらない。マンションに移れば、負担は幾分増えるから本末転倒かもしれないが、代わりに設備が良くて広い、快適な住まいが今なら手に入る。こんなチャンスはない」――このように考えた人もいたのです。

また、同時にマンション購入者に関する限り、「待てばいくらでも値が下がる」や、「資産価値が下がる一方だから買うのは損だ」という考え方を取らない人が多かったのです。つまり、バブル後の一時期を除き、マンションとデフレを結び付ける人は少ないと言えるのです。

実はマンションを購入する人の数は少なく、新築だけなら首都圏の約1000万世帯に対し、毎年1%もない(多いときで0.8%。少ないときでも0.5%)のです。マンションの価格が低下することを意識しなかった人、もしくは下がっても構わないと考えた人や、比較的所得の安定している人が1%程度だったことの現われでもあります。

●デフレ下の住宅ローン

マンション購入を真剣に考えている人にとっては「釈迦に説法」みたいなものですが、デフレが続くという前提での住宅ローンの利用について、あらためて考えてみたいと思います。

所得が減れば、毎月の負担は相対的に重くなって行きます。若い人は、普通35年の最長ローンを組むものです。住宅購入適齢期を逃した人は比較的短いローンを組みますが、それでも20年くらいの長期にわたるものです。

融資に当たって、銀行は所得の何%以内に返済額が納まっているかを見ます。当然ながら、返済負担率が高ければ、滞納する危険が高いので融資してくれません。
そこで、過去3年分程度の収入をチェックするのですが、過去3年の収入が返済期間中ずっと続くとは限らないにも関わらず融資を決定してくれます。
そこには銀行の考え方があって、「将来も滞りなく返済してくれるだろう」という期待が込められているわけです。リストラ、倒産、転職、ボーナスカット、所得減といった予想できない事態も織り込み済みということになります。

借りた本人の側に戻ります。「不安はあるが、先の先まで誰も見通せないのだし、所得減の可能性がゼロではないにしても、余裕を残して借りれば問題はなかろう。万一のことが起きたら、そのときは貸すか売るか、いずれにせよ何か策はあるはずだ」――このように考えるのだろうと想像します。
また、別の見方をすると、不透明なこの時代に大きな借金を抱え込む決断をする人は、自信がある人なのです。会社や日本という国のシステムから来る自信なのか、己の能力に対する自信なのかは漠然としているにせよ、先々なんとかやっていけるという自信があるのだろうと胸の内を推察することができるのです。

●インフレは名目資産を殖やす

インフレが続いた場合はデフレの反対なので、長期の住宅ローンを組むメリットに多くの説明は要しないでしょう。そこで、次はローンを組むこと以外で、インフレ下にマンションを持つことのメリットを取り上げます。

長い時間の経過する中で、マンション価格の変遷を見ると、東京都内には、購入時の価格から3倍にも4倍にもなった中古マンションがあります。バブル前に建てられた築30年~40年のマンションの話です。
この間、老朽化で建物価値が下がったにも関わらず、新築価格が高騰したため、それに連られる形で値上がりしたためと考えられます。最初の所有者が今も売却せずにいるとしたら、大きな資産効果を得たということになります。

今から40年前の昭和47年(1972年)に首都圏で新規供給されたマンションは、1戸平均774万円でした。随分安かったものです。
その後、地価の高騰があってマンション価格は急騰しました。バブル経済が勃興する前の昭和57年(1982年)頃の首都圏の新築マンション価格は、3倍以上に上昇、平均2600万円となっていました。
2012年1~6月の1戸あたりの価格は4512万円になったので、40年前に比べると5.8倍、32年前との比較では1.8倍になった計算です。

広さの違いもあり、マクロに見た統計数値なので、狭いエリアでの価格変動とは少し違うのですが、それにしてもマンション価格はインフレそのままと感じます。

ともあれ、例えば30年前に2500万円ほどで買ったマンションが今いくらになっているかという観点で見て行きます。
築20年以上の中古マンションは、新築相場に対して、およそ50%の価格で取引されています。
従って、新築相場が値上がりし、4500万円になったと仮定するなら、売却価格は2250万円になります。ということは、不動産インフレが起こっても2500万円➔2250万円なので、資産効果はあまり高くないように見えます。

ところが、マンションを別の自分の資産と考え、そこから賃借しているとし、住宅ローンの返済金を支払い家賃と仮定したらどうでしょう。
(頭金を500万円、返済期間30年としましょう)
家賃を受け取った別の自分は、その収入をそのままローン返済に充当して行きます。当初の純資産は小さいですが、返済が進むことで膨らんで行きます。30年後に完済したとき、純資産は2250万円となります。つまり、500万円の頭金が4.5倍に殖えたことになります。

30年前の500万円の貨幣価値と、現在の2250万円の貨幣価値が同じとするなら、単に名目上の資産増加に過ぎませんが、それでも大いに意義があるはずです。その意義とは? ここから先は次の機会にお話ししますが、皆さんはどうお考えになりますか?

尚、資産価値は全てのマンションが同じように上下するわけではなく、個別要因によって差ができますから、意識して将来価値に期待できる物件を選択した方が良いのは言うまでもありません。

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。

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