第677回 経年劣化しないマンション

このブログでは居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から「マンションの資産価値論」を展開しております。

10日おきの更新になりました。引き続きご愛読賜りますようお願い申しあげます。(次回は4月20日です)

こちらのブログと5日おき、交互にアップしています 。(https://www.e-mansion.co.jp/blog/archives/author/mituikenta/

「マンション評価」と「将来価格の予測」は筆者の2大サービスですが、これらのレポートを作成する中で気づかされることが多々あります。気付いたことは、物件が特定されないようにしながら、これまでもブログで発信してきましたが、今日は今まであまり書いてこなかった視点をご紹介しようと思います。

テーマは「経年劣化しないマンションの条件」についてです。

●マンションは経年劣化に伴い価格も下がるものである

中古マンションは古くなれば当然のことながら、新築マンションより値下がりします。世界に二つとない不動産ゆえに、比較がしづらいところはあるのですが、同じ地域に同じようなマンションが並んでいれば、新築と中古の価格差は歴然とします。

しかし、実際の市場では同時に並んで比較にさらされる確率は低いものです。

 駅から徒歩5分と同じ利便性にあっても、方向が変わればアプローチ上の景色も変わるものですし、騒音の有無、アドレスの違いもあって、正確な価値判断は微妙に違って来ます。

 微妙な差ですまないケースもあります。新築と築30年・40年のマンションでは、見かけだけでも明らかな差異が現れていますが、見かけでは分からないこともあります。30年以上も前のマンションは耐久性も劣りますし、耐震性能も新築よりはるかに劣る方が多いからです。

 問題は、ここまでの差がないケースです。築年数で10年程度の差しかない、管理状態もとてもよく、新築と殆ど変わらないほどきれいな中古マンションも現実に存在します。しかも、同エリアの新築と大差ない価格で取引が成立する物件はいくらでもあります。

 そんな中古の売り物を見て、「中古は損だ。仲介手数料はかかるし、リフォーム代もかかる。住宅ローン控除だって半分しかないのだから」と語る人に何度もお目にかかります。

確かに、最近は上昇相場に便乗して高く売ってやろうと考える人が「チャレンジ価格」を設定して売り出す例が増えているのは事実です。

 しかし、そのような怪しい事例を別としたら、中古マンションが新築より損だとは言えません。表面的にそう見えるだけです。精査すれば、新築より高い中古はあり得ません。逆転現象が起こるとしたら、「マンション転がし」が横行するときです。

逆転現象があったのは、25年以上前のバブル経済末期のことでした。買ったマンションを1か月後に高値で売り抜けると、それを買った投資家(投機家が正しい)が買った金額に上乗せして1か月後に転売に成功する、これを繰り返しているうちに短期間にマンション価格が2倍になってしまったのです。このような現象は「上がるから買う、買うから上がる」という悪循環を生み、不動産バブルと呼ばれました。バブルとは実際の価格以上の見せかけの値段が付くことを意味しています。

最近も、一時は外国人投資家が日本のマンションは国際的に見たら安いと判断して爆買いした時期があったようです。ミニバブルとか局地バブルなどとマスコミが表現していました。しかし、過熱感はなくバブル現象が広がる様子は見られません。

正常な時期なら、新築より高い中古に買い手が殺到するはずもなく、中古マンションが新築より高くなるわけもありません。しかるに、中古は高いと錯覚する人を生み出すのは、なぜでしょうか?理由は、ひとつです。高い中古は新築より条件が良い、価値がある。ただ、それだけです。

説明を分かりやすくするために、例として駅距離の差を用いますが、新築が徒歩10分であるのに対し、中古が徒歩3分であったりすれば、中古の価値の方が高いと評価され、新築を逆転する高値で取引が成立してしまうのです。

●劣化しても実売価格が下がらないこともある

中古マンションの価格は、新築価格の動きと関係があります。中古価格は新築価格を追うのです。

新築相場が上昇すると、中古も上昇します。結果的に、買ったときの2割アップ、3割アップで売れる中古マンションが続々誕生します。今は丁度そんなときです。

購入した時期によって多少の差はありますが、今回の値上がり局面の初期、もっと言えば、値上がり前夜に買った人は、誰もが喜ぶことができるのです。

しかしながら、それでも物件固有の格差が大きいことは事実です。大儲けした人、少しだけだった人、損はしなかったが儲けたわけでもない人といった格差があります。

15年も前に買った人などは、経年劣化が相当進んだはずですが、それにも関わらず買い値より高く売れたと喜んでいます。住宅ローンの返済も進み、残高が少なくなっているので、売れた金額はさほどでなくても、ローン清算後のキャッシュは多額であったりします。

経年劣化したはずのマンションも、その実売価格は購入時の価格を上回るというとき、それは市況のおかげ、すなわち新築価格が高騰したおかげと言えるのです。

●市況によって上がり下がりするとしても物件格差は大きい

物件格差があると述べましたが、売却した人たちは、自宅の売却額のレベルが他と比べてどの程度であったか、それを知ることはないのかもしれません。筆者のような仕事をしていると実によく分かります。

非常に高額で立派なマンションを買った人も、売れた金額は元値に毛の生えた程度である場合がありますし、中古マンションを高値で買ったものの、売却したら一段、二段高く売れるということもあります。

お買い得と思った1階住戸を売りだしたら、全く売れずに購入価格から2割も下がったケース、眺望が良いと思ったが近くを通る高速道路の騒音が回りこんで来てうるさいために、価格は期待したほどにはならなかったケースなど、反対のケースも枚挙にいとまがありません。

物件格差には地域によって大きくなる所、そうでもない所があります。金に糸目は付けないという階層が集まる邸宅地では物件格差が価格に如実に表れる傾向もあります。つまり、良いものにはいくらでも金を積むが、そうでないものはタダでも要らないといった、妥協しない買い手が多い地域では、良いものと普通のものとの価格差が大きく出て来るのです。

年数と駅距離が同じなら、ほぼ一律に価格が固定してしまうような地域と対照的です。

●中古マンションの値動き(将来価格)に影響を及ぼすもの

どのようなマンションが中古になっても値下がりしにくいのでしょうか?

以下は、値上がりしやすいマンションの条件等について解説したものです。

(1)物件の魅力の差

値上がりするマンションの条件の第一は、周辺新築物件にない特長や利点があって、中古であることのマイナスを補って余りある物件だからです。

例えば、小型物件の多いエリアにおいて、所有マンションが大規模で様々な付加価値を有する物件であれば、その差別感や存在感が新築・中古を問わず特別なものと認定され、高い価格を付けます。

駅直結マンションは言うに及ばず、駅に近い立地は便利なものの雑多な環境である場合が多いですが、例外的に緑多い住宅街の入口にあるとか、或いは隣が大型スーパーである、大規模公園に接している、遮るものがない一面オーシャンビュー、といった格別な立地条件の物件も同様です。

物件固有の条件が中古マンションの将来価値(リセールバリュー:RV)を決めるものであることを指していますが、分解すると以下の通りです。

将来価値を決定する要素は、①立地条件(利便性と環境、地域イメージなど)、②スケール(存在感)、③外観・玄関・空間デザイン、④建物プラン(共用施設、間取り、内装や設備など)、➄ブランド、⑥管理体制です。

この中で一番比重が高いのは①の立地条件です。立地さえ良ければ建物は何でもいいという単純なものではないのですが、大きな要素であることは確かです。逆に、どんなに素晴らしい建物でも立地条件の悪さを補うことはできません。

(2)需給バランス

また、当該エリアで新築の供給が殆んどないとか、あっても比較対象にならない物件ばかりという場合は、期待以上の価格になることがあります。

例えば、80㎡以上の広さを求めても、新築に60㎡台までの売り物しかないという場合や、駅近の物件を探したが、徒歩15分以上の売り物しかないというとき、80㎡以上の物件所有者、あるいは徒歩5分の物件所有者には有利に働きます。

これらを一言で表すと、「希少価値」ということになります。

中古マンションの価格は需給関係で決まります。新築の供給が少なければ、中古が取引の中心になり、上質な中古物件は新築並みの価格になるものです。人気の高い街や駅周辺では、新築の供給が何年も途絶えていたりするので、過去の新築相場を超えてしまう高値の中古マンション取引が生まれます。

(3)購入価格

最も大事な要素は「購入価格」です。価値に見合わない高値で購入(高値掴み)すれば、どれほど立地が良くても、また建物が立派でも将来価格は期待外れになります。

今(2019年)は2013年から続く高値の時期に当たっているので、例外なく高いマンションを買ってしまうことになりそうです。

反対に底値のような時期に購入した物件なら、次の上がり相場のときに売れば、平凡な物件でも値上がり益を得ることができるのです。

(誤解のないように付言しますが、投資目的でない限り、買い時を測りながら買うというようなことはできないものです。買いたいときが買い時に当たったら、それは幸運というべきです)

結局、平均点以上の優良な物件(特に好立地の物件)を選ぶことと、そして他力本願的ですが相場が上がってくれること、この二つの要因によって購入マンションの将来は高い資産価値が期待できるということになります。

●変わらぬ価値のいろいろ

長い前置きになりましたが、ここからが今日の本題です。経年劣化、言い換えれば経年減価しないマンションの条件について、上記の条件をもっと深ぼりして、あるいは絞りこんでお話しします。

建物は物理的な側面では必ず経年劣化しますが、何年経っても変わらない非物理的要素があります。永久眺望と表現されるものが最も分かりやすいでしょうか?例えば、隅田川に面している、芝公園に面している、浜離宮の隣地に建つといったものです。レインボウブリッジ、東京タワーが望めるなども高い価値として保存される確率は高いかもしれません。

公園が閉鎖されたり、隅田川が埋め立てられたりしない限り、その眺望価値はほぼ変わりません。駅直結の立地なども30年経っても駅直結は変わらないはずです。

大規模タワーマンションの価値は高く評価されていますが、例えば50階建てといった高さの持つ価値は変わらないかもしれません。タワーマンションが珍しくない時代ですが、それでもエリアナンバーワンの高さにあるなら、それを超えるマンションが開発されて競争力を失う確率は低いはずです。

●半分を占める部分が変わらなければ建物価値が半値になっても・・

マンション価格を駅からの距離+環境(景観)+全体の高さ+規模+グレード感+ブランド+維持管理状態などと分解してシェアを明確にできたら分かりやすいのですが、そのような計測方法(鑑定手法)が一般化していないので、残念ながら価値判断は難しいのが現実です。

仮に駅直結の価値が市場で高く評価され、周辺マンションの3割高であったとしたら、その部分は価値が不変なので、周辺の一般マンションが経年劣化で100から20%減になったとき、駅直結マンションは130で買っても、20%減にはならないのです。

仮に土地(場所)の価値が物件価格の半分50とするなら、一般マンションは建物が30に減価し、トータルで80ということになります。一方、直結マンションは土地が80、建物が50なので、建物が同じく30に減価しても土地が80のままとするなら、トータル評価は110です。つまり、減価率は15%(110÷130≒84.6)なのです。

現実はこんなに単純ではありません。先に述べたように不動産・マンションは二つとして同じものはないのです。駅直結マンションは希少価値が高いことから、高くても買いたい人が集まるので、高値取引が定着しやすいことがあります。つまり、不変どころか上方に振れやすいのです。

また、駅直結マンションの多くが駅前再開発などで周辺開発を誘発したりもします。その結果、ますます高値を呼びます。周辺の一般マンションは置き去りになってしまうものもあります。つまり、格差はますます広がるというわけです。

住戸単位で考えても同じことが言えます。眺望がとても良い。しかも当分その価値が変わりそうにないというとき、同じマンション内の比較で10%以上高いとしても、その差に当たる部分(眺望価値)は劣化しないので、リセール価値は10%以上の差をもたらすのです。

北向き住戸でも、そのビューが格別なものであるとき、しかも古くなっても色あせないビューが期待できるなら、他の向きの住戸より減価率は低いのです。眺望価値が何%かは物件によって、また、その住戸の位置によって変わるので、ここで具体的な数値は出せませんが、特別な価値を持つ住戸は多少高い価格で買っても、値下がり(減価)率が低いと期待して良いことになります。

特別なマンション、特別な住戸の価格がいくらか、その購入価格はそもそも適正なのか、その判断が前提になりますが簡単ではないはずです。そんなときこそ筆者をご利用いただければよいのですが、新築マンションでは、上層階住戸を異常なほど高値で売り出すこともあるので気を付けなければなりません。

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。(http://www.syuppanservice.com

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